絵本の紹介「きんぎょがにげた」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

我が家では息子が生後半年くらいから絵本の読み聞かせを始めました。

赤ちゃんへの読み聞かせは、なるべく早い時期から始めた方が発達に良い影響を及ぼします。

 

しかし、0歳児への読み聞かせとなると、どんな絵本を選べばよいか難しいところ。

全く字のない絵だけの絵本もいいですが、リズムのある、歌うように読める文章のある絵本なら、言葉自体の難しさはさほど問題にはなりません。

もちろん、赤ちゃんが初めからすべての言葉を理解できるわけはありません。

しかし、赤ちゃんは、表面的には反応が薄いように見えたとしても、読み聞かせる人間の声のトーン、息づかいなどを、全身の感覚で聴き取ろうとしています。

まさに、全身の感度を全開にして世界と向き合っているのです。

その突出した受信力があるからこそ、大人とは比較にならないスピードで言語を学習することができるのです。

 

とは言うものの、初めからあまり字が多すぎる絵本をチョイスするのはNGです。

それでは赤ちゃんの集中力が続きませんし、退屈してしまいます。

まずは絵本の楽しさを覚えることが一番です。

「絵本を読む」と言うより、「絵本を使って遊ぶ」感覚で読める本がおすすめです。

 

そういった「遊べる絵本」の名作、「きんぎょがにげた」を紹介します。

きんぎょ(と言われなければまず金魚とは認識できない)が、金魚鉢から逃げ出します。

ページからすり抜けるようにして、次々に家の中の物に紛れ込んで姿を隠す「きんぎょ」を追いかけて、見つけ出す絵本です。

きんぎょが にげた

どこに にげた

また にげた

こんどは どこ

という、簡単かつリズミカルな文のみで構成されているので、赤ちゃんは絵に集中できます。

五味太郎さんの絵はとぼけた味があって、けばけばしくないけれど色彩豊かで、とても楽しいです。

 

この手の絵本で気を付ける点は、あまり正解にこだわり過ぎないこと。

「金魚はどこかな? ねえ、どこかな?」

と、無意識にプレッシャーをかけるのはやめましょう。

一つ一つの絵を指しながら、「これはきりんだね。これはロケットだね」と、赤ちゃんと一緒に楽しみながら読めれば、それでいいと思います。

 

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

絵本専門の古本屋 えほにずむ

〒578-0981

大阪府東大阪市島之内2-12-43

URL:http://ehonizm.com

E-Mail:book@ehonizm.com

 

絵本の紹介「あんぱんまん」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

我が家では、滅多にテレビをつけません。

別に見たいものがないということもありますが、子どもが2歳くらいになるまでは、液晶画面を見せるのはやめようと思っていたからです。

やはり、テレビの音や光は、赤ちゃんには刺激が強すぎると思うのです。

 

赤ちゃんが、圧倒的な情報量のテレビ画面に釘付けになるのは当たり前です。

それを、「喜んでいるから」「楽だから」と、テレビやスマホに子守りをさせるという風潮は少し心配です。

 

赤ちゃんの健全な五感の発達という面から考えれば、静かな部屋で抱っこしながら絵本を読み聞かせる以上の仕事を、電子機器が代わってくれるとは思えません。

 

今回紹介するのは、アニメ版とはかなり違う、原作絵本としての「あんぱんまん」です。

大人気ですよね、アンパンマン。

ですが、初期の絵本とアニメキャラクターとしてのアンパンマンには、ずいぶんと相違があります。

これは「アンパンマン」シリーズの第一作ですが、何が違うといって、この頭身。

背、高い。

このボディにアンパンの顔が乗っかっている姿は、シュールの一言。

これで首が無くなったら、ただのホラー絵にも見えてしまう。

でも、ちゃんと縮みます。

 

まだ「ばいきんまん」も、ほかのパン仲間も登場しません。

ただ、あんぱんまんがお腹を空かせた人々に「さあ、ぼくのかおを たべなさい」と迫るだけ(結構怖い)のおはなし。

ジャムおじさんにも名前がありません。

 

アニメ版は、原作の持つこのシュールさや、あんぱんまんの飄々としたキャラクターが失われていて、個人的には好きではありません。

あんぱんまんは単なる良い子の正義の味方ではありません。

そこには、本来、作者のやなせさんの「正義」に対する考えが込められていたはずなのです。

 

戦争で従軍体験したやなせさんは、「正義」の裏にある暴力性を痛感し、単純な「正義」という言葉を疑問視するようになっていました。

やなせさんは、普遍的な「正義」とは、「ひもじいものに食べ物を分け与える」行為だと考えました。

そして、自ら体を張ってその「正義」を代行するヒーローとして、「あんぱんまん」が誕生したのです。

 

仕方のないことかもしれませんが、アニメ版からはそういう背景は一切感じられませんし、商業的に、子どもが喜びそうなことを詰め込んだ作品になっています(それが悪いとは思いませんが)。

アニメの「アンパンマン」で育った子どもは、この絵本を見てどう感じるでしょうか。

「なにかちがう」と敬遠するでしょうか。

けれど、いつの時代も、子どもの目は確かです。

本当にすぐれた絵本は、必ず正当な評価を受け、選ばれ、読み継がれていくものだと思います。

 

 

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絵本の紹介「かいじゅうたちのいるところ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はモーリス・センダックさんの最高傑作との呼び名も高い、「かいじゅうたちのいるところ」を紹介します。

コールデコット賞という、絵本界では最高の賞を受賞している作品です。

 

ある日、いたずらが過ぎたマックスという男の子は、お母さんに夕ご飯抜きで寝室へ放り込まれてしまいます。

すると、寝室がたちまちのうちに大きな木の生え茂る森に変貌します(この間、だんだんページにおける絵の比率が大きくなっていくことに注目)。

マックスは船に乗り、「1しゅうかんすぎ、2しゅうかんすぎ、ひとつき ふたつき ひが たって、1ねんと 1にち こうかいすると」「かいじゅうたちの いるところ」に到着します。

このかいじゅうたちの描写がなんとも独創的で秀逸です。

子どもが怖がるのでは……と心配になるほどの迫力。

すごい こえで うおーっと ほえて

すごい はを がちがち ならして

すごい めだまを ぎょろぎょろ させて

すごい つめを むきだ」すのですから。

 

しかし、マックスは「かいじゅうならしの まほう」で、かいじゅうたちをあっさり服従させてしまいます。

そしてここから、見開き3連続による、文章のない絵のみのシーンが展開されます。

センダックさんはいつもクラシック音楽を鑑賞しながら創作に向かうそうです。

そのせいか、彼の作品のバックグラウンドには、いつも音楽的な躍動感が流れています。

 

このシーンも、読み聞かせる側にしてみれば、「どうすりゃいいの?」と困惑するところですが、子どもは絵本の中で流れているはずの音楽を、お祭り騒ぎを、しっかりと感じています。

子どもと一緒に歌うもよし、楽器を鳴らすもよし、踊るもよし。

 

子どもだけが持つ、原始的な感情のカタルシスは、言葉では表現できません。

踊り、歌い、リズムに乗り、体全体、五感のすべてを使って感情を発散させるのです。

 

やがて、感情を吐き出しつくしたマックスは、急にさびしくなって、「やさしい だれかさんの ところへ」帰りたくなります。

それで、引き留めようと懇願するかいじゅうたちを残して、マックスは船に乗ります。

これは重要なことですが、この世界ではマックスが完全に主導権を握っているのです。

だから、絵本を読む子どもたちも、かいじゅうたちを恐れる必要がないのです。

空想の世界から寝室に戻ったマックスの、この憑き物が落ちたような顔。

 

「かいじゅうたち」は、子ども自身の、制御できない恐ろしい衝動的な感情であり、それを手なずける手段は、空想力です。

もりのなか」の紹介文でも触れましたが、子どもは現実と空想の世界を自在に行き来しますが、それは子どもが成熟するために、必要不可欠の能力なのです。

 

≫絵本の紹介「もりのなか」

 

真の意味での「現実」は、「空想」に支えられて初めて生きた姿を見せます。

現実は空想を生み、空想は現実の理解を助けます。

大半の大人が言う「現実」は、そういう意味では片手落ちなのです。

 

子どもの空想とは、何でもありのカオスではありません。

そこには厳然たるルールが存在します。

それは、子ども同士の真剣な遊びを見ていればわかることです。

 

「かいじゅうたちのいるところ」は、そうした子どもにとっての空想、ファンタジーというものを、センダックさんが率直で先入観のない目でとらえ、描いた傑作です。

 

 

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