絵本の紹介「ねずみくんのチョッキ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回も大人気シリーズ絵本を取り上げます。

30作品以上も刊行されている「ねずみくんの絵本」シリーズより、第一作「ねずみくんのチョッキ」(作:なかえよしを、絵:上野紀子、ポプラ社)です。

背景も何もない空間に、小さなねずみくん。

注意を引き付ける、うまい構図です。

 

内容の方もシンプルそのもの。

ほとんどが繰り返しの文のみでストーリーが進行し、絵だけでも十分話がわかる作りになっているため、小さな子どもへの読み聞かせにもぴったりです。

 

おかあさんが あんで くれた」赤いチョッキを着て、ちょっと得意げなねずみくん。

そこへあひるがやってきて、「いい チョッキだね ちょっと きせてよ」と頼みます。

 

あひるはチョッキを着て、「すこし きついが にあうかな?

そこへさるくんがやってきて……。

以下、同じやり取りを繰り返します。

 

王道パターンですが、この絵本の面白さを際立たせているのは、なんといっても動物たちの顔芸でしょう。

不自然な作り笑顔とポージング。

前に鏡でも置いてあるんでしょうか。

 

だんだん動物たちは大きくなり、ぞうまでが「きせてよ」と言ってきます。

いくらなんでも入らないだろうと思うのですが、このチョッキ、えらくストレッチのきいた素材で出来ているようで、無理やり着てしまいます。

結果……

変わり果てたチョッキに仰天のねずみくん。

オチのページでは、ビロンビロンに伸びきってしまったチョッキを引きずりながら意気消沈のねずみくん。

 

笑えますが、可哀そうに思う子どもたちもいるかもしれません。

(内心は嫌だけど)ちょっと友達に貸したものが、いつの間にやら回覧板みたいに回って、返ってきた時には壊れてたり、一部が無くなっていたり……。

子どもの社会では、実際にこういう事件が起こったりしますよね。

 

でも、一番おしまいのページで、ぞうくんとねずみくんが、伸びたチョッキを意外な形で利用して遊んでいる小さなコマを見て、一安心。

切り替えの早さも子どもの特権ですね。

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

絵本専門の古本屋 えほにずむ

〒578-0981

大阪府東大阪市島之内2-12-43

URL:http://ehonizm.com

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「ぞうくんのさんぽ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は「ぞうくんのさんぽ」(作・絵:なかのひろたか、レタリング:なかのまさたか、福音館書店)を紹介します。

作者のお二人は兄弟です。

ひろたかさんが弟さん、まさたかさんがお兄さん。

「レタリング」って、一瞬何を担当しているのかわからないですが、文章の字体を作ってるんです。

海外の絵本なんかだと、文字も絵の一部と捉えて、作家さんが全部自分で書いてある作品が結構あります。

古典名作などを原本で読むと、それぞれの作風に合わせた字体を、苦心して作られているのがわかります。

 

日本の絵本はほとんどが活字印刷で、字体まで作る作家さんは少数派のようです。

でも、この「ぞうくんのさんぽ」では、その独特の字体と、丸みを帯びた絵柄が見事にマッチしています。

 

お話の方はいたってシンプル。

ぞうくんがさんぽにでかけると、途中でかばくん(という名の、謎の生き物)に出会います。

おや、ぞうくん。どこいくの

さんぽだよ。いっしょに いこう

せなかに のせてくれるなら いってもいいよ

いや、歩こうよ(読んでいる大人の心の声)。

 

でも、気のいいぞうくんは「いいとも、いいとも」と、あっさり承諾。

次に登場するのはわにくん。

おや、ぞうくん。かばくんのせて どこいくの

さんぽだよ。いっしょに いこう

それじゃあ ぼくも のせてよ

ぞうくんは ちからもちだね

おまえら……。

 

最後に小さなかめくんが登場。

例によって例のごとく、背中に乗ります(どうやって登ったんだろう)。

ぞうくんはそろそろ重さに耐えかねている様子。

そして行く手には池。

 

小さな子にも、この先の展開は予想できます。

絵本の王道ですよね。

 

でも、水の中でよかった。

ケガしなかったし、みんなごきげんで遊んでるし……と、子どもに安心感を与える終わり方です。

 

続編もありまして、「ぞうくんのあめふりさんぽ」「ぞうくんのおおかぜさんぽ」、そしてつい最近、10年ぶりに最新作「かめくんのさんぽ」が月刊絵本「こどものとも」から出版されました。

 

じゃあ、この「ぞうくんのさんぽ」が生まれたのっていつなの?

実は1968年。

なんと50年近く前なんです。

全然古臭く感じませんよね。

これぞアンチエイジング絵本。

 

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絵本の紹介「キャベツくん」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは、個人的にも好きな作家さん・長新太さんの「キャベツくん」(文・絵:長新太、文研出版)です。

ナンセンスの神様と称される長新太さん。

そのオンリーワンな作風と絵柄は一度見たら忘れられません。

 

いい加減と言えばいい加減。

意味不明と言えば意味不明。

だけど妙に印象的で、不思議と居心地が良かったりする。

そんな長新太さんの脳内世界に一歩足を踏み入れたが最後、予測不可能な謎展開に否応なしに巻き込まれて、「???」の嵐。

 

だいたい、キャベツが主役というだけで、もう普通じゃないです。

キャベツくんが あるいてくると ブタヤマさんに あいました

なにそれ、悪口? なネーミング。

おなかをすかせたブタヤマさんは、いきなり「キャベツ、おまえをたべる!」と、キャベツくんをつかまえます。

キャベツくんが「ぼくをたべると、キャベツになるよ!」と言うと、広い空に鼻がキャベツになったブタヤマさんが、立体映像のように浮かび上がります。

ブキャ!」とびっくりするブタヤマさん。

 

以後、ブタヤマさんが、

じゃあ、ヘビが きみをたべたら、どうなるんだ?

じゃあ、タヌキが……

ゴリラが……

と、質問し、キャベツくんが

こうなる!

と衝撃映像を見せる、の繰り返し。

 

その間にも、二人は道を歩き続けています。

ゾウのシーンでは、絵本の繰り返しにおいてタブーの、

だいたい わかっていたけれど

を口にしてしまうブタヤマさん。

でも、

こうしてみると、びっくりします

と、なぜか敬語のブタヤマさん。

なんか、かわいそうになってきます。

最後にはキャベツくんもブタヤマさんがかわいそうになって、レストランでなにかご馳走してあげることにします。

 

話はわけわからないけれど、地平線と空の見える構図には開放感があります。

ただ、自由に空想をふくらませ、それをそのまんま描いたような絵本です(というか、長さんの作品は全部そんな感じ)。

この「キャベツくん」はシリーズで、ほかに「キャベツくんのにちようび」など、全五冊あります。

これでもまだ、長さんの絵本の中ではまとまっている方だと思います。

 

またそのうち、もっとシュールな長さん絵本を紹介したいと思います。

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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絵本の紹介「じごくのそうべえ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はたじまゆきひこさんの大人気絵本、「じごくのそうべえ」を紹介します。

ご存知の方も多いでしょうが、これは上方落語の「地獄八景亡者の戯」(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)を題材にした絵本です。

型絵染という技法で描かれた絵は迫力があり、タイトルとも相まって、おどろおどろしい印象も受けますが、中身は抱腹絶倒のユーモアがたっぷりです。

地獄といっても、教訓的な話やグロテスクな表現は一切なく(下ネタは出てきますが……)、最後はちゃんとハッピーエンドが用意されています。

 

主人公のそうべえは軽業師。

集まった人々の前で綱渡りを披露しますが、誤って転落、死んでしまいます。

気が付けばそこはあの世。

歯医者のしかい、医者のちくあん、山伏のふっかいらを道連れに、三途の川を渡って閻魔大王の裁きを受けることに。

閻魔大王のかなりいい加減な裁きによって、そうべえたち四人は地獄行きにされてしまいます。

 

しかし、四人はそれぞれの特技を活かし、次々と地獄の責め苦を切り抜けてしまいます。

最後には閻魔大王も呆れ返って、「このものたちは もう、じごくから ほうりだしてしまえ」と匙を投げる始末。

 

この、地獄という「お仕置き」から仲間と協力して逃れるという展開は、いたずら盛りの子どもには特に痛快に感じることでしょう。

いたずらっ子は、大人に「参った」を言わせたいのです。

 

ちなみに、元ネタの「地獄八景亡者の戯」は、一時間を超す大ネタで、故・桂米朝師匠が得意としていた噺です。

元ネタでは登場人物が次々に入れ替わるため、はっきりした主役が存在しません。

 

また、最後に生き返るのも、絵本のオリジナルです。

 

さて、「読み聞かせにもぴったり」というこの「じごくのそうべえ」ですが、上方落語を元にしているだけあって、全編キレのある関西弁によるセリフだけでストーリーが進行します。

 

よって、関西弁に馴染みがない方には、難易度は高めと思われます。

 

セリフだけで話を進める以上、声色の使い分けは必須ですが、地の文がないために、どのセリフが誰のものか、すぐにはわかりにくい箇所もあります。

冒頭の「とざい とうざい。かるわざしの そうべえ。いっせいちだいの かるわざでござあい」の口上も、あれはそうべえ本人が言っているわけではなく、下で三味線を弾いている奥さんのセリフですので。

 

この絵本に限ったことではありませんが、読み聞かせの前にはどうぞ下読みを。

 

とはいえ、子どもにとっても、テンポの良い関西弁のリズムは、少々意味が分からなくとも心地よいものです。

我が家では息子が2歳のころに読み聞かせました。

どういうわけか、「いうてまっせ」が気に入った様子で、色んな場所で「いうてまっせ」を連発。

意外と使い方は正しかったりするので、子どもは侮れません。

 

 

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