絵本の紹介「どろんこハリー」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どものころにやった、どろんこ遊び。

ぐちゃぐちゃに汚れることが、どうしてあんなに楽しかったんでしょう。

 

土に触れることは精神の安定にもいいそうです。

息子にもさせてやりたい……と思っているのですが、なかなか実行に移せません。

 

どうしても後始末やらなにやらを考えてしまうんですね。

こっちの服だってめちゃめちゃになるだろうし、目や口に泥が入ったらすぐに洗ってやらないといけないし、今は外は寒いし……。

 

そんな風にぐずぐず考える私にとって、憧れのヒーローと言ってもいいのが、今回紹介する「どろんこハリー」です。

文:ジーン・ジオン

絵:マーガレット・ブロイ・グレアム

訳:渡辺茂男

出版社:福音館書店

発行日:1964年3月15日

 

ロングセラーの名作です。

三色刷で、色彩豊かというわけではないのですが、それを補って余りある絵柄の可愛さ。

 

ハリーは「くろいぶちのある しろいいぬ」。

なんでも好きだけど、お風呂に入ることだけは大嫌い。

ある日、お風呂にお湯を入れる音が聞こえてくると、ブラシをくわえて逃げ出して、裏庭に埋めてしまいます。

 

ここまでの文章は、扉から続く絵によっても説明されており、絵本としては理想的な絵と文の一体感が実現されています。

さて、家を抜け出したハリーは、思う存分外遊びをします。

工事現場で泥だらけになり、鉄道線路ですすだらけになり、友達と駆け回り、石炭トラックを滑り台にして、真っ黒に汚れます。

 

どうです、この痛快さ。

絵本を読む子どもたちも(そして大人も)、自然と笑顔になって、このやりたい放題っぷりを楽しんでしまうでしょう。

絵本の中に登場する人々も、みんなハリーに注目し、少しばかり呆れながらも、笑っています。

白黒反転して、「しろいぶちのある くろいいぬ」になってしまうほど汚れたハリーは、くたびれて、お腹も空いてくると、家族のことを思い出して、寄り道もせずに家に帰ります。

 

しかし、あまりにも汚れたハリーを、家族はハリーだと気づきません。

困ったハリーは、埋めてあったブラシを掘り起こし、自分からお風呂に飛び込みます。

子どもたちに体を洗ってもらって、うちのひとたちもこれがハリーであることに気が付きます。

 

きれいになったハリーは、ご飯を食べ、自分の家の気持ちよさに浸りながら、布団でぐっすり眠ります。

でも、ブラシは、ちゃっかりと布団の下に隠していましたが。

 

★      ★      ★

 

うちの息子は、冒頭の、ブラシを

うらにわに うめました

のシーンを読むだけで大喜びします。

 

お風呂が嫌で外へ逃げ出し、気が済むまで遊び、お腹が減ったら一目散に家に帰る。

なんという率直さでしょう。

ハリーの行動には、一片の曇りも、自分の心に対する嘘もありません。

 

ハリーの人気の秘密は、この「精神の健康さ」にあると思います。

 

そして、この心的健全さは、すべての子どもが生まれながらに持っているはずのものです。

 

くどくどと「理」を説く大人に対して、子どもはたったひとこと、

いやなものはいや!

でバッサリ切り捨ててしまいます。

 

でも、これは子どもにとって嘘偽りのない「真実」なのです。

 

自分の心を偽り、捻じ曲げることに慣れてしまった大人は、自分の心の声を無視して生きることを何とも思わなくなっています。

けれども、心に沿わない生き方を続けていくと、いずれどこかで破綻をきたします。

世の中に瀰漫する「心の病」とは、突き詰めれば「心と行動が分裂すること」によって罹患する症状です。

 

どうも、幼い子どもに対する大人の態度を見ていると、将来的な「心の病」予備軍を作り出しているように思えてしまうことがあります。

「逆らう」子どもに腹を立て、力で言うことを聞かせようとすること。

それを「暴力」と呼ぶのではないでしょうか。

 

大人が自分の心に沿う生き方をしようと思えば、様々な事情や障害に阻まれて、なかなか簡単ではありません。

それでも、少しでも自分への嘘を減らして生きている人には、自然と子どもへの理解や余裕が生まれます。

人間の本当の「強さ」とは、そうしたところに現れるのではないでしょうか。

 

子どもと一緒に、平気で泥の中に足を突っ込める大人って、かっこいいと思うんです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

ハリーの家族の鈍さ度:☆☆☆☆☆

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「ボルカ はねなしガチョウのぼうけん」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はイギリスを代表する絵本作家、ジョン・バーニンガムさんの27歳の時のデビュー作を紹介します。

ボルカ はねなしガチョウのぼうけん」です。

作・絵:ジョン・バーニンガム

訳:木島始

出版社:ほるぷ出版

発行日:1993年12月1日

 

バーニンガムさんは、個人的に大好きな作家さんです。

作品はもちろんのことですが、そのパーソナリティに興味が尽きないのです。

 

私の育児観、子ども観は、A.S.ニイルやR.シュタイナーに大きく影響を受けています。

彼らはともに、その思想に基いた学校を創設しており、それは現代まで残っています。

 

実は、バーニンガムさんは、その二校ともに入学し(彼は9つもの学校を転々としました)、子ども時代を過ごした経験を持っているのです。

 

これは学校の紹介記事ではないので詳細は省きますが、ニイルやシュタイナーの思想に共通点があるとすれば、子どもに対して性善説で接するということだと思います。

幼い子どもをムチで叩き、大人の鋳型に矯正しようという「教育」を行う学校が一般的だった時代において、子どもを信じ、理解し、認めようという彼らの学校は、非常に進歩的であったと言えるでしょう。

 

私は、最初からバーニンガムさんの絵本には惹きつけられていたのですが、こうした事情を知って、その理由の一端が明らかになったように感じています。

ガンピーさんのふなあそび」に代表される、彼の作品に流れている子どもに対する眼差しには、確かに信頼と理解と承認を見て取ることができるのです。

 

≫クシュラの奇跡

 

さて、「ボルカ」の内容に入りましょう。

ガチョウの夫婦の間に生まれたボルカ(♀)には、生まれつき羽がありませんでした。

母親は心配して、毛糸で羽を編んでやります。

 

ボルカは喜びますが、他の仲間たちには笑われます。

誰も相手になってくれず、ひとりぼっちで、泳ぎも飛び方の練習も一緒にできないでいるうちに、寒い冬が来て、ガチョウたちはみんなで暖かい土地へ飛び去って行きます。

ですが、飛び方を知らないボルカは置いてきぼりになります。

両親でさえ、ボルカがいないことに気付いてくれませんでした。

 

雨を避けるために入り込んだ船で、ボルカは犬のファウラーに出会い、船倉で寝かせてもらいます。

やがて朝が来て、船長たちが船に戻り、船はロンドンへ出航してしまいます。

ファウラーは船倉で寝ているボルカのことを思い出し、船長に相談します。

船長たちは気のいい人で、すぐにボルカと仲良くなります。

 

やがて船がロンドンに着くと、船長はボルカをキュー植物園へ放します。

そこにはたくさんのガチョウや鳥が暮らしており、誰もボルカの毛あみの羽を笑ったりしませんでした。

 

ボルカは今でも、キュー植物園でしあわせにくらしています。

 

★      ★      ★

 

バーニンガムさんの作品はどれも、限りない優しさに満ちています。

けれどそれは少しもベタついてない、とても素っ気ないものです。

 

それは子どもに対する「無条件の承認」からくる優しさなのです。

 

大人が「愛」だと思っているものには、たいてい交換条件や見返りを期待する心が入っています。

言うことを聞いてくれたら

テストでいい点を取ったら

頑張って勉強したら

 

こんなセリフをそこかしこで耳にします。

しかしこれは愛でしょうか。

 

愛には色んな形があるかもしれないけれど、子どもたちが求めているのは「承認」という形の愛だと思います。

 

居場所がないことに苦しむ子どもに、偽物の愛でつけ込もうとする大人たちが大勢います。

けれども、そうした子どもたちが必要としているのは、ただ、「そのままの自分」を認めてくれること―――それだけなのです。

 

ボルカは「みにくいアヒルの子」のように、美しい白鳥にはなりません。

でも、彼女の「そのまま」を、船長やキュー植物園の仲間たちは当たり前のように認め、受け入れてくれます。

 

ボルカがキュー植物園で泳ぎを練習し始めたように、頑張ったり、変わろうとするのは、無条件の承認があった「後」なのです。

大人は、この順序を取り違えてはなりません。

 

頑張る必要も、無理に変わろうとする必要もないんだよ。

世界は広いんだから、必ずどこかに君の居場所があるよ。

 

子どもたちが無意識の底で渇望しているその言葉を、バーニンガムさんは語っているように思います。

素っ気なく、優しく。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

犬の名前の意味が実は怖い度:☆☆☆☆

 

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絵本の紹介「おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日はバレンタインデーということで、やっぱりチョコレートの出てくる絵本を紹介しようと思います。

アニメも大人気のロングセラー・シリーズより、「おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく」です。

原作:M&H.A.レイ

訳:福本友美子

出版社:岩波書店

発行日:1999年10月25日

 

好奇心いっぱいで、知りたがりやのおさるの「ジョージ」の引き起こす事件の数々を、優しさとユーモアたっぷりに描いた傑作シリーズ。

このブログで取り上げるのは初めてですね。

 

有名な作品ですが、刊行されている絵本の全体を把握しようと思うと、少々ややこしいところがあります。

本文に入る前に、せっかくなのでちょっと整理します。

 

まず、そもそもこのシリーズは新旧に分かれています。

ハンス・アウグスト・レイとマーガレット・レイ夫妻による、邦題「ひとまねこざる」シリーズと、ハンスさんの死後、ヴァイパー・インタラクティヴが制作した(挿し絵はヴァイパーやマーサ・ウェストンが担当)した「おさるのジョージ」シリーズです。

 

元祖「ひとまねこざる」シリーズは全6冊。

ところが、日本で刊行されているものは、原著の発行順と違っているんですね。

 

だから、本当に一番最初から「ジョージ」を読もうと思ったら、「ひとまねこざる」ではなく、「ひとまねこざるときいろいぼうし」から読まないと話が繋がらないんです。

 

まあ、そこまで順序にこだわる必要もありませんが……。

 

というわけで、この「おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく」は、後期のシリーズであり、レイ夫妻の作品ではありません。

しかし、絵柄もキャラクターも、そして「ジョージ」の芯となる部分(後述します)も、わりと忠実に再現していると思います。

仲良しの「きいろいぼうしのおじさん」に連れられてチョコレート工場へ来たおさるのジョージ。

おじさんがチョコレートの代金を払っている間に、工場の中の様子が気になり、中に入って行ってしまいます。

工場では、大きな機械からベルトコンベアに乗って大量生産されるチョコレートを、職員さんたちが流れ作業で箱詰めしています。

機械の中がどうなっているのか、ジョージは好奇心を抑えきれず、さらに近づいて覗き込みます。

 

その時、知らずに足でレバーを踏んでしまい、ベルトコンベアのスピードをMAXにしてしまいます。

作業が追い付かなくなり、慌てる職員さんたち。

そんなことはお構いなしに、大好きなバナナクリームのチョコレートを追いかけるジョージ。

そのついでに、他のチョコレートを箱詰めします。

 

その手際の良さに、工場の混乱は収まり、結局のところジョージはお咎めなしで、おまけにおみやげまで渡されます。

 

でも、ジョージはおみやげを断って、黄色い帽子のおじさんと帰ります。

実は、どさくさに紛れてチョコレートをお腹いっぱい食べてたんですね。

 

★      ★      ★

 

前述したこのシリーズの芯とは、ジョージのいたずらが咎められないことです。

ジョージは悪意はないものの、毎回好奇心から事件を起こしてしまいます。

結構な騒動になることもしばしばですが、黄色い帽子のおじさんを始め、周りの大人たちは基本的にジョージに対して寛大です。

 

「おさるのジョージ」の人気の源は、実はここにあるのかもしれません。

 

何度失敗しても、好奇心からの行動を抑えられないジョージは、まさに子どもの化身です。

子どもたちは知りたい気持ち、やってみたい気持ちを存分に発散させるジョージと自分自身を重ね合わせ、痛快さを感じます。

 

そして、どんなに騒ぎを起こしても、説教や罰を与えられることなく、最後には赦してもらえる。

子どもにとって、これは理想の世界なのです。

 

ことに、保護者である黄色い帽子のおじさんのジョージに対する理解の深さと寛容さは素晴らしいです。

『上司にしたい絵本のキャラクターランキング』(そのうちやってみようかな)でも、おそらく上位間違いなし。

責任は私が取る。好きにやってみなさい」的な。

 

エンドレスな子どものいたずらを、笑って許せる広い心が欲しい時には、黄色い帽子のおじさんを思い出しましょう。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

おじさんのファッションが最先端すぎる度:☆☆☆☆☆

 

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絵本の紹介「こんとあき」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

現在、我が家の絵本棚には1200冊以上の絵本が並んでいます。

それだけの数があると、何度でも読んでもらえる絵本も絞られてきます(もちろん、選考者は息子です)。

 

今回紹介する「こんとあき」は、そんな熾烈なレギュラー争いを勝ち抜いた一冊です。

作・絵:林明子

出版社:福音館書店

発行日:1989年6月30日

 

林さんの絵本を紹介するのはこれで3度目ですが、彼女の作品の中では私自身もこれが一番のお気に入りです。

相変わらず、絵が上手い。

 

特に、子どもの表情と、肌の質感がたまりません。

ほっぺたを触りたくなります。

 

内容としては、女の子とぬいぐるみの友情物語、という体裁ではありますが、その中に実に様々な要素が詰め込まれていて、しかもそれが無理なく絶妙に調和されており、何層にも深みのある絵本となっています。

 

おばあちゃんに赤ちゃんのおもりを頼まれて「さきゅうまち」からやってきた、きつねのぬいぐるみの「こん」。

あき」というのが赤ちゃんの名前。

ふたりはいつでもいっしょに遊んで、あきはだんだん大きくなり、こんはだんだん古くなります。

ある日、とうとうこんの腕がほころびてしまいます。

だいじょうぶ、だいじょうぶ

さきゅうまちに かえって、おばあちゃんに なおしてもらってくる

と、出かけようとするこんに、あきはついて行くことにします。

こんとあきは特急列車に乗り、「さきゅうえき」に向かいます。

途中で弁当を買いに行ったこんがドアにしっぽを挟まれるトラブルに遭いながらも、ふたりは「さきゅうえき」に到着します。

 

ちょっとだけ砂丘を見たい、とあきが言い、ふたりは砂丘に足跡をつけます。

そこでもトラブルが起こり、こんは野良犬にくわえられ、連れ去られてしまいます。

 

あきはどうにか砂に埋められたこんを見つけ出し、背中におぶって、おばあちゃんのうちへ向かいます。

こんは小さな声で「だいじょうぶ、だいじょうぶ」としか言わなくなってしまいます。

とうとうおばあちゃんのうちに辿り着いたあきは、おばあちゃんの胸に飛び込んで、

おばあちゃん、こんを なおして!

と懇願します。

 

おばあちゃんはふたりを家に入れ、こんのあちこちをしっかり縫い付け、仕上げにお風呂に入れて、「できたてのように きれいな きつね」にしてくれます。

 

★     ★     ★

 

息子はいろいろな絵本のキャラクターになりきりますが、この絵本では必ず「こん」になります(私は「あき」にされます)。

いつもあきの先に立って彼女をリードする、ちょっと背伸びしたようなこんが、子どもの目にもとても魅力的に映るのだと思います。

 

逆に、親の目から読むと、各ページごとのあきの表情の変化が胸に響きます。

表紙の、こんを見る優しい顔。

汽車の席で、こんの帰りを待つ不安げな顔。

こんといっしょにお弁当を食べている時の無防備な顔。

砂丘で犬に遭遇した時の怯えた顔。

 

そして何よりも、砂に埋まったこんを抱き上げた時の顔と、見開きでこんをおぶって砂の山を下って行く姿は、何度見ても涙が出そうになります。

 

設定は一風変わっていますが、これは王道の「冒険成長物語」です。

あきの成長は、「行間を読む」ような仕方で「絵を読む」ことで伝わってきます。

 

さらに、この絵本を味わい深いものにしているのは、いつもの林さんの遊び心。

駅や汽車に登場する人物をよく見ると、林さんの他の作品からの友情出演があったり、なぜかチャップリンがいたり、「不思議の国のアリス」や「ピーターラビット」のキャラクターがいたり。

 

それに、「さきゅう」はどう見ても鳥取砂丘。

あげどんべんとう」(レシピが存在します)にも鳥取名物の豆腐入りちくわが入っています。

林さんのご両親(表紙の優しそうな老夫婦のモデルらしいです)が鳥取県出身ということで、いわば「ご当地絵本」としての側面も持っているんです。

 

まだまだ語りたいことはいろいろありますが、きりがないのでこのへんで。

とにかく、読んだことのない方は一度読んでみてください。

 

ラストの「よかった!」を読むとき、いつも子どもと心が一つになれます。

幸せになれる絵本です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

こんの存在感度:☆☆☆☆☆

 

林明子さんの他の作品記事

≫絵本の紹介「はじめてのおつかい」

≫絵本の紹介「おつきさまこんばんは」

 

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絵本の紹介「アンパンマンのサンタクロース」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

クリスマス絵本特集第8回は、「アンパンマンのサンタクロース」(作・絵:やなせたかし、フレーベル館)を紹介します。

初期のころの絵本とアニメ版のアンパンマンとの差異については、以前の記事で書きました。

 

≫絵本の紹介「あんぱんまん」

 

この「アンパンマンのサンタクロース」が出版されたのは1981年ですが、そのころにはすっかり人気も確立し、表記も平仮名からカタカナの「アンパンマン」となり、ばいきんまん、しょくぱんマン、カレーパンマンなどのレギュラー勢も定着し、安定しなかったアンパンマンの頭身も、無事2頭身に収まっています。

 

それでもまだまだ、アニメ版にはないシュールさは健在です。

クリスマスの準備中、助けを呼ぶ声を聞いて、飛び出すアンパンマン。

雪山に埋もれていた「くまの サンタクロース」とトナカイを救出します。

 

くまのサンタさんは一命をとりとめたものの、しもやけで動けません。

そこで、ジャムおじさんはアンパンマン・しょくぱんマン・カレーパンマンのうちの誰かをサンタクロースの代理に立てようとします。

だれが いちばん サンタクロースが にあうかなあ?

選ばれたのはアンパンマン。

ホイップで付けひげ。

それにしても、このしょくぱんマンの不満そうな顔、秀逸です。

 

そして、こどもたちへプレゼントを配りに飛び立つアンパンマン。

そのシーンが……

適当すぎるだろ。

 

そして案の定、半分も配り終えていないうちにプレゼントが足りなくなってしまうという自滅っぷり。

このあたりのダメさ加減が、アニメ版の優等生キャラとは一線を画すところ。

 

困っているアンパンマン(自業自得)を助けに来るのは、なんと本物のサンタクロース。

しょくぱんマンたちも手伝って、無事にプレゼントを配り終えましたとさ。

めでたしめでたし。

 

……ところで、「くまの サンタクロース」って何だったんでしょう。

ほんものの サンタクロース」は人間のおじいさんです。

つまり、この世界において、サンタさんは複数いることになります。

ノンタン!サンタクロースだよ」的な設定なのでしょうが、説明は一切ありません。

それに、くまのサンタも人間サンタも、プレゼントの管轄は同じようです。

 

謎だ……。

しかし、そんなアバウト設定も、絵本版アンパンマンのいいところ。

 

≫絵本の紹介「ノンタン!サンタクロースだよ」

 

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