【絵本の紹介】「さむがりやのサンタ」【287冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「さむがりやのサンタ」です。

作・絵:レイモンド・ブリッグズ

訳:すがはらひろくに

出版社:福音館書店

発行日:1974年10月25日

 

この時期になると今でも本屋さんに並ぶロングセラーです。

テキストなしのコマ割り手法を用いた「ゆきだるま」が世界中で大人気になったブリッグズさん。

この作品も同様にテキストはなく、フキダシにによるセリフのみという漫画的絵本です。

 

≫絵本の紹介「ゆきだるま」

 

点で描かれたつぶらな瞳がチャーミングなサンタさん。

絵本に登場するサンタさんって、わりかし作者の個性がにじみ出たキャラクターが多いんですが、このサンタさんは少なくとも見た目は一発でわかる王道サンタクロースです。

 

ところが、ページをめくってみると予想外。

何しろ、いきなり自宅のベッドで南国の夢を見ているところを目覚ましに起こされて、不機嫌そうな顔で、

やれやれ またクリスマスか!

と愚痴が飛び出すのです。

そして、ぶつぶつと文句を言いながら紅茶を入れ、朝ごはんを用意し、身支度をします。

これが細かいコマ割りで実にリアルに、丁寧に描かれています。

 

イギリス風生活を営むサンタの日常がありありと想像できるのです。

口を開けば文句と愚痴ばかりなサンタですが、生活の所作は丁寧で実直。

 

プレゼントをそりに積み、きちんと幌をかけ、一緒に暮らす動物たちに声をかけ、仕事に繰り出します。

 

そして一軒一軒を回ってプレゼントを配るのですが、これがなかなかの重労働。

意外にも煙突はお嫌いなようで、考えてみれば玄関を開けていてもらえば早いものを、わざわざ煙突を降りなければ入れないのは確かに非効率です。

 

えんとつなんて なけりゃいいのに!

すすだらけになっちまった

 

悪態をつくサンタに、同情しつつもついクスリと笑ってしまいます。

ラジオで雪情報を聴きながらお弁当のサンドイッチを食べるサンタ。

ちゃんとトナカイにもエサをあげます。

 

住人の差し入れ、ジュースは喜ばないけど酒には満足。

寒いですものね。

 

牛乳配達人と言葉を交わし、女王の宮殿にもプレゼントを配り、やっと仕事は終わります。

ここで終わらないのがこの作品のいいところ。

自宅へ戻ったサンタは、また紅茶を入れ、トナカイを労わり、温かいお風呂に入って一杯やります。

 

そして、自分へのクリスマスプレゼントを開け、ひとくさり文句。

寝る前にはちゃんと犬と猫にもプレゼントをあげ、最後は読者に向かって仏頂面で、

ま、おまえさんも たのしいクリスマスをむかえるこったね

 

★      ★      ★

 

いやあ、実に楽しいサンタさんです。

 

口が悪くて不愛想で文句が多いけど、根はやさしくて仕事も暮らしぶりも丁寧で真面目。

昔の頑固おやじ風のブリッグズサンタ。

 

何だか普段は知らないお父さんの仕事を覗き見たような気分になります。

それが不思議と温かく、親近感が湧きます。

 

リアリティと人間味たっぷりだけど、夢は壊れず、むしろサンタさんがもっと好きになる、そんな素敵な絵本です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆(コマ割りについてこれる子でないと難しいです)

人間臭さ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「さむがりやのサンタ

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「マドレーヌのクリスマス」【286冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は大人気「マドレーヌ」シリーズより、この季節にぴったりの一冊を紹介しましょう。

マドレーヌのクリスマス」です。

作・絵:ルドウィッヒ・ベーメルマンス

訳:江國香織

出版社:BL出版

発行日:2000年11月1日

 

パリの寄宿舎で暮らす12人の女の子の活躍を描いた素敵な物語。

これまでに2作品を紹介しました。

 

≫絵本の紹介「げんきなマドレーヌ」

≫絵本の紹介「マドレーヌといぬ」

 

マドレーヌといぬ」では絵本界の最高賞コールデコット賞を受賞したものの授賞式には出ず、マドレーヌの名前のモデルである妻を代理に立てたというシャイなベーメルマンスさん。

素行不良で故郷にいられなくなり、アメリカに渡り、ほとんど独学で絵を、描いて描いて描きまくることによって学んだベーメルマンスさん。

 

そんな魅力的な作者の生涯は、「ベーメルマンス マドレーヌの作者の絵と生涯」という本にまとめられています。

とても面白いですよ。

 

さて、シリーズ化して以降のマドレーヌたちは、隣に引っ越してきたいたずらっ子のペピートと交友を深めたり、ロンドンやアメリカに遠征したりと世界を股にかけた活躍を見せます。

今回はパリに帰ってきて、お馴染みの寄宿舎でクリスマスを迎えるのですが……。

 

なんとマドレーヌ以外の11人と、ミス・クラベルまで屋敷中が風邪で寝込んでしまいます。

たった一人元気なマドレーヌは、掃除に料理、みんなの看病までてきぱきとこなします。

ただのいたずらっ子ではない、実にしっかり者。

そこに訪ねてきた、妙にアラビアンなじゅうたん商人さん。

12まいのじゅうたん」を行商に来たのです。

 

なんてすてき。あさ おきるとき、これで あしが つめたくないわ

と、やさしいマドレーヌは、ミス・クラベルの許しを得て、12枚のじゅうたんを商人から買い取ります。

 

ところが、全部のじゅうたんを売ってしまった商人は寒さに震え、じゅうたんを取り戻そうと屋敷に引き返してきます。

どんな商人だよ。

 

屋敷に辿り着いた時には、商人は全身カチンコチンに凍っており、マドレーヌがやかんのお湯で解凍し、薬を飲ませてやります。

パリの冬って、そこまで寒いの?

元気になった商人は実は魔術師で、マドレーヌを手伝って魔法で皿洗いをします。

さらに、呪文を唱えると、

じゅうたんが一斉に空に飛び上がり、12人をそれぞれの家族のもとに連れて行ってくれます。

12人は実家で楽しく過ごした後、寄宿舎に戻って元気に新しい年を迎えるのでした。

 

★      ★      ★

 

ツッコミどころ満載のマドレーヌ流クリスマス。

サンタカラーのじゅうたん商人、あれほどの魔術師なら、寒さくらいなんとかならなかったのかとか、最後に呪文を解くのは何故かミス・クラベルだったりとか。

なかなかはっちゃけた展開のオンパレード。

 

この楽しい絵本が、ベーメルマンスさんの遺作となりました。

絵本製版にあたっては、雑誌掲載時のカットを写真撮影で引き延ばしたり、その上から彩色したりして製本したそうです。

 

そのためかどうか、正直なところ、絵の完成度としては初期作品に及ばない部分が見られます。

いつもの美しい街並みのカットがないせいかもしれません。

 

でも、マドレーヌの奮迅ぶりは頼もしいし、珍しく彼女の顔のアップも見られますし、荒唐無稽でありながら幸せなストーリーも爽快感があります。

あっさりとした終わり方は、ある意味でベーメルマンスさんの遺作に相応しいようにも思います。

 

ベーメルマンスさんの死後、このシリーズは彼の孫のジョン・ベーメルマンスさんが引き継いで描いています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

じゅうたん商人にツッコミたくなる度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「サンタクロースってほんとにいるの?」【285冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

そろそろ今年もクリスマスが近づいてきました。

ぼちぼちクリスマス絵本を取り上げて行こうと思います。

 

サンタクロースを信じているのは何歳までか」という問いが定番になっているほど、子どもとサンタを巡る問題は決着しません。

子どもにサンタの存在を信じ込ませようとするのは親のエゴだ」と言われると、そうかもしれない気もします。

 

無邪気にサンタを信じ、プレゼントに感激する子どもの姿は確かに可愛いものです。

しかし、「いい子にしていないとサンタさんが来ないよ!」と取引の道具にするのはどうかと思います。

 

かの瀬田貞二先生が児童百科事典を編纂した際に、「かっぱ」の項目に「かっぱは今もいる」と断言された時の気持ちを考えると、子どもにとってサンタがいなくてどうするのだ、とも思います。

 

では、当の子どもたちはこの問題をどう考えているのでしょう。

大人よりも遥かに合理的で現実的な彼らは、「サンタクロースの矛盾」を無視はできないはずです。

 

今回はそんな子どもたちと両親の息詰まる攻防を描いた絵本「サンタクロースってほんとにいるの?」を紹介します。

作:てるおかいつこ

絵:杉浦繁茂

出版社:福音館書店

発行日:1982年10月(かがくのとも傑作集)

 

ねえ サンタクロースって ほんとにいるの?

 

いつかは浴びせられるであろう、子どもからの問い。

とある家庭の、浴室風景です。

お父さんは子どもたちとお風呂に入りながら、彼らの鋭い質問に答えて行きます。

えんとつがなくても くるの?

ドアに かぎが かかっていても くるの?

 

どうして ぼくの ほしいものが わかるの?

どうして としとって しなないの?

どうやって ひとばんで せかいじゅうを まわれるの?

みなみのくにでは どうするの?

こないうちもあるのは なぜ?

お父さんとお母さんは、次々に投げかけられるもっともな質問から逃げたりあしらったりせず、真摯に丁寧に、彼らが納得しやすいような回答を与えます。

 

最後に子どもたちはどこか不安な表情で、

ねえ、ほんとうにいるの

 

いるよ

サンタクロースは ほんとにいるよ

せかいじゅう いつまでもね

 

子どもたちは求めていた答えを得て、幸せな表情で眠りにつきます。

 

★      ★      ★

 

子どもに嘘を教えることは良くないことです。

しかし、子どもにはファンタジーが必要です。

 

彼らはこの世界が「善きところ」「美しきところ」であることを信じたいと思っています。

これからの長い人生にとって、世界が美しく善いところでなくてどうしましょう。

 

子どもがいつかサンタクロースの正体を知る日が来たところで、そんなことは些末なことです。

その時までに、彼らの心に色鮮やかなファンタジーが育っていれば、サンタクロースそのものは問題ではないのです。

 

大人がそのことを理解し、そして自分も心からこの世界が美しいことを信じていれば、この絵本のような子どもからの質問に、確信をもって即答することができるはずです。

 

大人たちが一瞬でもたじろいだり、「自分の言葉でない言葉」で語ったり、ごまかしたりすれば、子どもは即座に見抜きます。

その時、子どもは大人を出し抜いたという勝利感を手にするでしょうが、同時にかけがえのない世界を失っているのです。

子どもに、そんな悲しい勝利を与えたくはありません。

 

それにしても、我が家の息子はサンタクロースについてどう考えているのでしょう。

実のところ、どうにもそれが不明なんです。

 

年齢相応以上の読書経験のある子ですから、その中にはサンタの存在を否定するような内容のものもあったでしょう。

科学本もたくさん読んでいますし、意外と現実と幻想を分けているような素振りも見せます。

本当はサンタクロースなんていないと思ってるのかもしれません。

 

でも、今年のクリスマスには「本当に乗れる飛行機のラジコン」が欲しいなどと宣います。

そんなもん……」と言いかけると、不思議そうな顔でこちらを見てきます。

どうしてダメなの? サンタさんに頼むのに」と言わんばかりの表情で。

 

何もかもわかっててやってるのか。

無邪気なのか。

 

聞くわけにもいきませんしねえ。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

両親のアドリブ能力度:☆☆☆☆☆

 

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