【絵本の紹介】「ぶたぶたくんのおかいもの」【364冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのはこのブログ初登場・土方久功さんの傑作「ぶたぶたくんのおかいもの」です。

作・絵:土方久功

出版社:福音館書店

発行日:1985年2月28日(こどものとも傑作集)

 

月刊絵本「こどものとも」に発表されたのが1970年ですから、実に50年前の作品。

古い新しい以前に絵の個性が強烈。

 

この主人公「ぶたぶたくん」の造形、そして買い物かごの中身を見てください。

人の顔のパンがありますが、その顔が、なんというか。

そして「キャラメル」の字もシュール。

 

派手さはなく、絵の雰囲気も好みが分かれそうで、人によってはちょっと手に取りづらいと感じるかもしれません。

ですが、食わず嫌いはもったいない。

物凄くおもしろいし、子ども受けも最高な作品なのです。

 

とりあえずこの独特な世界に踏み込むには、黙読ではなく音読が条件です。

黙読だと何だか冗長に感じてしまうテキストが、声に出して読んでみると楽しくて仕方がない。

子どもはゲラゲラ笑うし、実は相当に高いレベルで練り上げられていることがわかります。

 

それは主人公の名前にすでに表れています。

ぶたぶたくん」という名前そのものが繰り返しのリズムによって生まれているのです。

きみたち、こぶたの ぶたぶたくん しってる?

この こぶたくんは」「ぶたぶた ぶたぶた という くせが あるのさ

いつのまにか みんなが ぶたぶたくんと よぶように なってしまったのさ

この語り口にまずニヤニヤさせられます。

 

さて、ぶたぶたくんはお母さんから買い物を頼まれます。

そうさ ぼくだって ひとりで いけるのさ」「ぶたぶたぶた

リズムよく歌いながらまずはパン屋さんに到着。

 

パン屋の「にこにこ おじさん」の顔も凄いですけど、売り物も凄い。

ぶたぶたくんがおまけしてもらった「かおつきぱん」の顔が、どっかの国の置物土産っぽい。

 

ぶたぶたくんは続いて八百屋さんへ。

途中で「からすの かあこちゃん」と道連れに。

八百屋さんは「はやくち おねえさん」。

おかいものは なにと なにと なにと なに

きゃべつ きゅうり とまと ねぎ、ばななに りんごに なつみかん

あまい しょっぱい すっぱい にがい……

とまくしたてます。

 

それからお菓子屋さんへ。

ぶたぶた かあこお ぶたぶた かあこお」と歩きます。

繰り返しますが、音読しないとこの楽しさはわかりません。

お菓子屋の主人は「ゆっくり おばあさん」。

 

帰り道、「こぐまくん」に出会って、三人で近道をとって家に帰ります。

ぶたぶた かあこお くまくま」……。

友達と別れた後、ぶたぶたくんは無事に家に帰り着き、家の前で待っていたお母さんにかじりつきます。

ぶたぶた。ぼく ひとりで おかいもの できたよ

 

★      ★      ★

 

このシュールさ、ユニークさ、インパクト、テキストの妙、そしてどこかに漂う異国テイスト。

この感じ、誰かに似てると考えてみたら、スズキコージさんが近いような気がしますね。

日本のようでいて日本でないような、しかしどこの国かはわからないような、独特の世界。

たぶん、スズキさんは土方さんに何らかの影響を受けているのではないでしょうか。

 

実際、様々な絵本作家さんが、印象に残る絵本として「ぶたぶたくんのおかいもの」をちょいちょい挙げてます。

作り手の目から見ると、この作品によりいっそう感心してしまうのかもしれません。

 

はじめてのおつかいに出かける子どものドキドキ感、ワクワク感、冒険心、ちょっとした不安。

はっきり言ってありふれた題材を土台に据えながら、ここまで個性的に描けるとは。

 

そして単純そうに見えながら、内部には実に様々な仕掛けが施されており、絵本の基礎とも言える「3の繰り返し」要素もふんだんに盛り込んでいます。

最後にはぶたぶたくんが辿った道の地図があり、また最初に戻って確認しながら読みたくなります。

良作。

 

ぶたぶた かあこお」のリズムにハマったら、土方さんの別作品「ゆかいなさんぽ」もおすすめです。

こっちはさらに動物が増えてカオスなことになってます。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

かおつきぱんのインスタ映え度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ぶたぶたくんのおかいもの

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】樋口淳・片山健「あかずきん」【363冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

昔話絵本というものは同じ物語であっても再話者・挿絵画家によって大きくその印象は異なるもので、「これが決定版」と安易に選出することはできません。

そうした差異自体を読み比べる愉しみもあります。

 

今回は数ある海外の昔話の中でもトップの知名度を誇る「赤ずきん」のおはなしを紹介するわけですが、以前にポール・ガルドンさんによるわりとオーソドックス(広く世間に認知されているストーリー展開という意味で)な「あかずきんちゃん」を取り上げました。

 

≫絵本の紹介「あかずきんちゃん」

 

そこで「あかずきん」にはペロー版・グリム版を二大勢力として、実に様々な形態が存在することに触れました。

予習的に読んでいただければと思います。

 

で、今回登場するのは樋口淳さん再話・片山健さん画による「あかずきん」です。

文:樋口淳

絵:片山健

出版社:ほるぷ出版

発行日:1992年4月20日

 

繰り返しになりますが、赤ずきんの物語には大きく分けて二つパターンがあります。

ペロー版は赤ずきんが狼に食べられて終わるバッドエンド。

グリム版では狩人の介入によって赤ずきんとおばあさんは狼の腹から救出されます。

その他、口承として残っている赤ずきん物語の中には、なんと赤ずきんが自力で狼から逃げ出す(しかも「赤ずきん」を被っていない)ものもあります。

 

今回紹介するところの樋口さん作「あかずきん」はそれらをブレンドし、現代的に再構築した内容になっています。

ちなみに現在絶版で入手困難なことから読んだ人も少ないと思われますが、結構驚くようなストーリー展開です。

 

まずは読んでみましょう。

導入部は誰もが知っているグリム版とほぼ同じ。

主人公「あかずきん」が、病気のおばあさんを見舞うため、お母さんから「パンとバター」を預かって出かけます。

 

あかずきんは森の中で「おおかみ」に遭遇。

絵が色々と凄まじいんですが、それは後で。

 

おおかみに遠回りの道を教えられたあかずきんは、途中でつい道草を食ってしまいます。

一方のおおかみは先回りしておばあさん宅に到着。

そして衝撃的な見開きでおばあさんを「あたまから ばりばり」食べてしまいます。

しかも「のこりをなべにいれて 火にかけた」って……。

 

この時点でおばあさんの復活はありえないことがわかります。

さらには遅れてやってきたあかずきんに対し、おおかみはおばあさんの肉と血の葡萄酒を勧めるのです。

怖すぎる。

 

この猟奇性からすぐに連想されるのは日本昔話史上類例を見ない残虐復讐譚「かちかちやま」です。

 

≫絵本の紹介「かちかちやま」

 

あの恐るべき「ばあじる事件」と同類のカニバリズムエピソードは海外にもあったのです。

が、この絵本では「ふしぎな小鳥」の助言により、あかずきんがおばあさんを食べてしまう胸の悪い展開は回避されます。

 

しかしまだおおかみの正体に気づかないあかずきんは、おおかみに誘われてベッドに入ります。

ここはペロー版「赤ずきん」の特徴を引き継いでいます。

 

ペロー版では赤ずきんは服を脱いでベッドに入るという露骨な性的描写がなされており、「狼」=「娘をたぶらかす男」という図式で、貞操についての教訓的物語になっているのです。

そしてその部分が特に時代と共に改編されてきたわけです。

 

それはそうですよね。

逆に言えばそうやって時代の気分に合わせてメタモルフォーゼを繰り返すことで、「赤ずきん」は現代まで生き延びてきたということです。

 

さて、物語の山場であるあのスリリングな問答「おばあさん、なんておおきな耳なの」「なんておおきな目なの」「なんておおきな口なの」を経て、ついにおおかみがその正体を現します。

どう見てもあかずきんもあばあさんと同じ運命を辿るとしか思えない絵。

ですが、ここからさらに物語は意外な展開を見せるのです。

 

あかずきんは咄嗟の機転で「おしっこがしたい」と言います。

おおかみはあかずきんを紐で繋ぎ、逃げられないようにして外の便所へ連れて行きます。

 

あかずきんはひもをスモモの木に結ぶと逃げ出します。

その間、小鳥があかずきんの代返を引き受けてくれます。

 

おや、これはやっぱりあの日本昔話「さんまいのおふだ」と同じエピソードではありませんか。

 

≫絵本の紹介「さんまいのおふだ」

 

おおかみは戦慄する怪力でスモモの木を引き倒し、あかずきんを追跡します。

逃げるあかずきんに「さんまいのおふだ」はありませんが、ここでは「せんたくおんな」さんが力を貸してくれます。

せんたくおんなが川にシーツを広げると、シーツが橋の代わりをなって、あかずきんは向こう岸へ逃げます。

続いておおかみもシーツを渡り始めますが、重みで川に沈んで溺れ死にます。

 

あかずきんは無事に家に帰り着き、両親と(赤ずきんの父親が登場することの珍しさを考えてみてください)幸せに暮らします。

クリック クラック これっきり

 

★      ★      ★

 

「コッコさん」シリーズでもそうですが、片山さんは「可愛くないのに可愛い」子どもを描く名手です。

この「あかずきん」もまた、まったく「美少女」ではありません。

膨らんだ鼻の孔、そばかすだらけの顔、強すぎる青い目の光……「可憐さ」というイメージからはかけ離れた「生命力の強靭さ」が漲っています。

だからこそあの凶悪残忍な「おおかみ」と渡り合い、その魔手から自力で逃れることに納得感を与えてくれます。

 

従来の「赤ずきん」がフェミニズム的な観点から批判されてきたのは、主人公が「か弱く、ちょっとバカな美少女」であり、狼に対して何もできず、最終的には男性である「狩人」の力によって救い出される受動的存在である点です。

けれど、この「あかずきん」にはそうした批判は何一つ当てはまりません。

 

その一方で反対側から「伝統ある民話を改編して骨抜きにするとは何事だ」という声も上がるかもしれません。

しかしながら前述した通り「赤ずきん」はもともと時代と共に姿を変えてきた物語です。

 

この「あかずきん」は樋口さんの独創、もしくは日本昔話の継ぎはぎであるように見えますが、実はペロー以前の民間口承「赤ずきん」(あとがきによれば「フランスのトゥーレーヌ地方の語り」)を元にした物語なのです。

ですから、斬新であるどころかむしろ「伝統」的にはこちらの方が起源が古いのです。

 

ものごとの起源をどこまでも遡って「純血」に辿り着こうとすると、往々にしてこういう現象が起こるものです。

繰り返しになりますが、昔話が時代と共に変化することは自然なことです。

そして古い時代の昔話を現代的な価値観で批判し、「ダメだ」と決めつけることも自由な精神とは言えません。

今に伝わる昔話には須らくそれぞれの時代の要請に応えてきた歴史があるのです。

 

絵本の真価を知りたいのなら、あれこれ考えずに、「自分の中の子ども」に訊けばいいのです。

おもしろいか、おもしろくないか」。

「彼ら」はけっして間違えませんから。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

おおかみというよりもはや怪獣度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「あかずきん

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我が家の絵本収納事情。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は絵本の収納について。

お店はもちろんなんですが、我が家には大量の絵本蔵書があります。

息子が0歳の時からひたすら読み続けてきて、量は増える一方。

 

≫3歳までに絵本を1000冊読み聞かせたら

 

今ではちょっとした絵本図書館の感があり、それは誠に楽しいのですけど、さて問題はいかにして収納するかです。

絵本というものは大きさも形もバラバラなものが多いので、単純に作者別や出版社別に並べようとしてもなかなか効率よくいかないのですね。

第一、毎日毎日次から次に息子が引っ張り出して放置している絵本を、丁寧に片付けてられません(息子は片付けません。出したら出しっぱなし)。

以前に自宅を引っ越した時、絵本が多過ぎ&重過ぎでえらい難儀したことを書きました。

 

≫絵本の収納がいかに大変かというだけの話

 

で、もう一つ困るのは、大きい本棚ってなかなかのお値段するんですよね。

昔は思い切ってウン万円する絵本用の本棚(上の写真はそれ)を買ってみたりしたんですけど、すぐに一杯になってしまう。

それに、どうも思ったように並べられない隔靴掻痒の感があり、そもそも本棚にお金かけるなら、そのお金でいったい何冊絵本が買えるんだということで、他の方法を妻が考えました。

 

色々試したけど、ホームセンターのカラーボックスを倒して使うのが一番便利でした。

何個も並べられるし、リーズナブルだし。

特によく使うのが写真のコーナンの「ホームボックスα」。

2280円くらいで、絵本なら150冊以上は収納できます。

大きさはバラバラでも、厚みはあんまりないのが絵本。

 

これを横倒しにすると高さ28センチまでの絵本なら並べられます。

てぶくろ」がちょうどそんな高さ。

≫絵本の紹介「てぶくろ」

横幅もだいたい28センチくらいまで。

福音館の「こどものとも傑作集」のような横長の絵本の他、少々飛び出しても気にしないならもう少し長い絵本でも大丈夫です。

 

高さ28センチ以上の大型絵本なら、これを縦置きにすれば2段の側は高さ40センチ以上入ります。

いたずらきかんしゃちゅうちゅう」も余裕。

≫絵本の紹介「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」

 

他にも3段カラーボックスを縦置きにしたり、色々組み合わせて綺麗に収納できます。

ウォールペーパーを貼ったりしてもいいでしょう。

 

なんか実用一点張りな気もしますが、我が家の絵本棚事情はこんな感じです。

参考になるでしょうか?

 

しかし考えてみれば、こんな絵本だらけの家庭の方が少ないかもしれません……。

しかも現在のところ新たに浮上している問題は、本棚を置くスペースそのものがなくなっているということです。

 

天井まで届く絵本棚というのは私の夢ですけど、地震が怖いので妻が許してくれません(あのぎっしり詰まった絵本棚が頭上に倒れてきたらかなりの確率で死ねます)。

それに、息子の手が届かないと意味ないしね。

ていうか、いい加減自分で片付けたらどうなんだ……。

 

ああ、広い家に引っ越したい。

でも、あの絵本をまた荷造り&荷ほどきするのはもうイヤだ……。

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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