【絵本の紹介】「だってだってのおばあさん」【248冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

説明不要のロングセラー「100万回生きたねこ」の出版40周年を記念した「佐野洋子の世界展」が山梨県立美術館で開催されています(行きたいのに行けない絵本展が多すぎる)。

 

佐野さんの絵本は読者年齢を問わないのが特徴ですが、今回紹介する作品も大人が読んでも面白い、むしろ大人になったからこそ読むべき絵本です。

だってだってのおばあさん」。

作・絵:佐野洋子

出版社:フレーベル館

発行日:1975年

 

ちいさな家で、猫と暮らす御年98歳のおばあさんが主人公。

「加齢」がテーマになった作品ですが、「100万回生きたねこ」にしろ、「おじさんのかさ」にしろ、佐野さんの絵本の主人公は子どもでないことも多く、広い視点で読めば同様のテーマを扱っているとも言えます。

 

そして、このおばあさんもまたチャーミング。

98歳とは思えない矍鑠としたおばあさんと、孫のような存在の男の子猫。

 

ねこは魚釣りにおばあさんを誘いますが、

だって わたしは 98だもの、98の おばあさんが さかなつりを したら にあわないわ

と断るおばあさん。

さて、おばあさんの99歳の誕生日、ねこは99本のろうそくを買いに出かけます。

その間におばあさんはケーキを焼きます。

だって わたしは おばあちゃんだもの、おばあちゃんは ケーキを つくるのが じょうずなものよ

 

ところが、ねこはろうそくを川に落としてしまい、泣きながら帰ってきます。

残ったろうそくはたった5本。

おばあさんはねこを慰め、5本のろうそくをケーキに立てます。

そして、自分に

5さいの おたんじょうび おめでとう」。

そして次の日から、おばあさんは5歳のおばあさんになります。

ねこが魚釣りに誘うと、

だって わたしは 5さいだもの……、あら そうね!

 

おばあさんは溌溂と魚を釣り、川を飛び越え、川に入って魚を捕まえます。

5さいって なんだか ねこみたい

おばあさんは夢中になり、来年も誕生日には5本のろうそくを買ってきておくれ、とねこに頼むのでした。

 

★      ★      ★

 

「だって……だもの」

ネガティブに聞こえるフレーズを、魔法のように素敵な言葉に変えてしまう、佐野さんの手腕。

 

あえて98歳「らしさ」の中に自分をとどめていたおばあさんですが、たった一言、自分にこの言葉をかけるだけで生まれ変わったような楽しみや歓びに触れることができるのです。

 

年相応というのは別に悪いことだとは思いませんが、時には自分で自分にかけた呪縛から解放されてみるのもいいと思います。

幼児的な大人は醜悪ですが、童心を忘れない大人は素敵です。

 

「自分が何歳であるか」が重要なのではなく、「今、自分が何がしたいか」が大切。

そんな爽快なメッセージが軽妙な会話の中に感じられる作品です。

 

ちなみに、あとがきがさらに素敵です。

だって、おばあさんは一番たくさん子どもの心を持っているんですもの」。

 

「おばあさん」だけでなく「人間」に対する佐野さんの温かい視線こそが、彼女の作品の芯をなしているのでしょう。

 

関連記事≫絵本の紹介「100万回生きたねこ」

≫絵本の紹介「おじさんのかさ」

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

99歳の足腰壮健度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「だってだってのおばあさん

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【絵本の紹介】「こすずめのぼうけん」【247冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

人混みなどで、ほんの一瞬でも目を離すといなくなる子ども。

一体あの短時間で、どんな動きをして視界から消えてしまうのか、ほとんど手品みたいな気がします。

 

我が家の息子もしょっちゅう姿を消しますが、幸いにして全部すぐに捕獲成功し、迷子になったことはありません。

隠れて行動観察していると、最初は勝手気ままに歩いたり立ち止まったりしていますが、親の姿が見えないことに気づくと、突然あらぬ方向へ猛ダッシュしたりします。

なるほど、こうやって迷子になるのか。

 

私自身はデパートやら動物園で何度も迷子になる子どもでした。

親切な人に迷子センターに連れて行かれる時に、妙な屈辱感を覚えた記憶があります。

 

私の親はさほど心配した様子もなく「またか」という感じで迎えに来たものですが、親になった今、もし息子が本当に迷子になったらと想像すると、私なら半狂乱になる気がします。

それだけ時代が(気分的に)物騒になったのかもしれません。

 

今回紹介するのは「こすずめのぼうけん」です。

作:ルース・エインズワース

絵:堀内誠一

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:1977年4月1日(こどものとも傑作集)

 

これは、イギリスの児童作家エインズワースさんの物語に、堀内さんが絵を付け、石井さんが翻訳して絵本にした作品です。

翼をぱたぱたさせることができるようになったこすずめに、おかあさんすずめが飛び方を教えます。

 

まずは巣から見える石垣まで飛ぶ稽古をしますが、初めての飛翔に成功したこすずめは、

ぼく、これなら、あの いしがきの てっぺんより、もっと とおくへ とんでいける

と考え、

せかいじゅうを みて こられる

とまで思い、そのまま石垣を飛び越えて行ってしまいます。

しかし調子に乗って飛んでいたのは初めだけで、羽が痛くなってきてしまうこすずめ。

どこかで休ませてもらおうと、色んな鳥の巣に入れてもらおうとしますが、からすやふくろうたちは「ちゅん、ちゅん、ちゅんってきり いえない」こすずめを、「なかまじゃない」と、拒みます。

 

くたびれ果てたこすずめが地面の上を歩いていると、おかあさんすずめが迎えに来てくれます。

暗がりでお母さんだとは気づかないこすずめは、

ぼく、あなたの なかまでしょうか?

と切ない問いを発します。

おかあさんすずめはこすずめを背中に乗せて巣に戻ります。

ラストの安心感と美しい情景が心に響きます。

★      ★      ★

 

主人公が一人で外の世界を冒険し、様々な経験をし、最後は母親のもとへ帰って安心して眠る。

子どものための物語の、一つの型とも呼ぶべき構成の作品です。

 

奇をてらうような展開や表現はありませんが、自立心や冒険心の芽生え始めた子どもたちは、このこすずめに共感し、同化して物語に入って行けるでしょう。

何気なく、色々な鳥たちの巣作りの習性などを知ることもできます。

 

堀内さんはこの作品を絵本化するにあたり、イギリスの農村風景の地形の断面図まで事前に制作したそうです。

横長のページを効果的に使い、広々とした風土や情景、鳥たちの生活感までがリアルに伝わってきます。

夕暮れ時の色使いは特に美しいですね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

おかあさんすずめが割と冷静度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ともだちや」【246冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

我が家の息子(4)は幼稚園や保育所に通っていないので、およそ友達と呼べる相手はまだいません。

公園などで同じくらいの年の子どもと一緒に遊ぶことはあります。

 

しかし、当たり前の話かもしれませんが、その遊び方は超絶自己中心的。

大体、相手の持っているおもちゃだけが目当てだったり、ほんのひと時一緒に遊んでも、すぐに自分の世界に戻って、もう見向きもしなかったり。

 

やっぱりもっとたくさんの友達体験をさせるべきでしょうか。

心配な気もするし、焦ってもしょうがない気もするし。

 

子どもの頃の友達は何物にも代えがたい宝物だと言いますし、それはその通りだとは思いますが、しかし一方で子どもの友達付き合いは、互いの未成熟ゆえに不安定で歪な面が大きいもの。

小学生くらいの子どもたちを観察していると、彼らの関係性は、けっして大人たちが(自分たちの子ども時代を忘れて)目を細めるような牧歌的なものではありません。

 

むき出しの自己、危うい自己肯定感、攻撃性、不寛容、依存心……それらが常にぶつかり合い、形容しがたい緊張状態に晒されています。

もちろん、そういう摩擦の中で互いに学び、真にぬくもりのある対等な信頼関係を構築できれば、それは一生の宝物になるでしょう。

 

私個人は、子どもの頃のような友人関係をもう一度持ちたいとは思いません。

精神的にハードすぎます。

ノスタルジィから「あの頃の友達は最高だった」と言う気持ちは理解できますけど、たぶん大人になってからではあの関係はとても「もたない」でしょう。

 

前置きが長くなりましたが、今回紹介する絵本は「ともだちや」です。

作:内田麟太郎

絵:降矢なな

出版社:偕成社

発行日:1998年1月

 

20年間で全11冊(たぶん完結)が描かれた人気シリーズ「おれたち、ともだち!」。

子どもたちにもわかりやすい形で「ともだち」をテーマにしています。

 

物語の案内役的存在であるミミズクのじいさんの独り言から始まります。

いちじかん ひゃくえん」で寂しい人の友達になるという変わった商売を始めたキツネ。

そこに声をかけたのは、一匹のオオカミ。

ちょっと怖そうですが、オオカミは普通にトランプの相手をしろ、と言います。

ひとしきり遊んだ後、キツネがお代を要求すると……。

この顔。

食べられてしまうのかとドキッとしますが、オオカミは「おまえは、ともだちから かねを とるのか」と憤慨。

 

オオカミは最初からキツネを「ともだちや」としてではなく、「ともだち」として呼んでいたのです。

 

二人は明日も明後日も遊ぶ約束をし、キツネはスキップしながら帰ります。

 

★      ★      ★

 

実はキツネは「もりいちばんの さびしんぼう」で、友だちが欲しかったのだというお話。

不器用ですね。

 

リアクションにヒリヒリ感のあるオオカミは、子どもたちにとってまさに未知の恐怖や魅力を持った「ともだち」です。

今後、キツネとオオカミは上手くやっていけるのでしょうか。

それは、続編を読み進めていくとわかります。

シリーズ通して読むと、徐々に関係を深めていく二人への共感が湧いてきます。

 

しかし、今では「ともだちや」なんて商売も当たり前に成立しそうですねえ。

いや、すでに成立してるのかな。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

オオカミのオーバーアクション度:☆☆☆☆☆

 

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