【絵本の紹介】「ババールのこどもたち」【190冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

回を重ねて4回目、「ぞうのババール」シリーズを紹介しましょう。

いよいよババールも父親になります。

ババールのこどもたち」。

作・絵:ジャン・ド・ブリュノフ

訳:矢川澄子

出版社:評論社

発行日:1974年12月30日

 

これまでのババールの活躍は、過去記事をご覧ください。

 

≫絵本の紹介「ぞうのババール」

≫絵本の紹介「ババールのしんこんりょこう」

≫絵本の紹介「おうさまババール」

 

母親を亡くし、逃げ込んだパリで優しいおばあさんに巡り会い、ぞうの国に帰還して王さまとなったババール。

セレストとの波乱万丈な新婚旅行を経て、さいの国(埼玉にあらず)との戦争に勝利。

そして荒廃したぞうの国を再び繁栄させます。

 

平和と安定を手に入れたババールに、さらに嬉しい出来事が起こります。

セレストが妊娠したのです。

しかも産まれたのは3つ子ちゃん。

 

ババールはそれぞれポム・アレクサンドル・フローラと名付けます。

幸せの絶頂ですが、3人いっぺんの育児はとても大変。

ガラガラを呑み込んで窒息しそうになったり、乳母車が坂道で暴走して崖から落ちたり、ワニのいる川でおぼれそうになったり。

 

色々な人たちの助けを借りて、どうにか危機を乗り越えます。

最後のページで、ババールがしみじみと漏らす言葉には、親として非常に共感できます。

こどもをそだてるのって たいへんなものだなあ

でも くろうするだけのことはある

あのこたちのいないくらし なんて とても かんがえられないよ

 

★      ★      ★

 

「ババール」シリーズは、この次の作品「ババールとサンタクロース」より後は、ジャン・ド・ブリュノフさんの長男であるロランさんが引き継いで続編を手掛けています。

 

つまり、ブリュノフさん自身が描く「ババール」は、次で最後ということです。

この「ババールのこどもたち」は、結核に侵されたブリュノフさんが、いよいよ自身の死期が近いことを悟って描かれたものだと思われます。

 

不幸を乗り越え、幸せな人生を歩みなさい

 

ブリュノフさんが無念にも残していく子どもたちに発し続けたメッセージ。

彼はこの作品で、自らの人生を語っているように、ババールが育児に奮闘する姿を描きます。

 

作者の胸の内を思うと、最後のババールのセリフはとりわけ感動的です。

彼は子どもたちへ「愛している」と言っているのです。

「君たちのおかげで幸せだった」と。

 

それは絵本という形で刻印され、一生残るメッセージとなります。

作者の子どもたちは、この素敵な絵本を開くたびに、亡き父親の愛と教えに触れることができるのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

でも、乳幼児にハチミツを与えては駄目ですよ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ババールのこどもたち

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「月おとこ」【183冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

月は古代より神秘の象徴。

様々な影響を地球に与え、月をモチーフにした神話や昔話などは枚挙に暇がありません。

 

月の起源に関しては今のところ、地球から分離して誕生したという説が有力視されています。

してみると、月を仰ぎ見るときに私たちの胸に去来する慕情は、かつて自分たちの一部であり、今は遠く離れてしまった存在に対するノスタルジックな想いが含まれているのかもしれません。

 

今回は秋らしく、月の絵本を紹介しましょう。

トミー・ウンゲラーさんの傑作絵本「月おとこ」です。

作・絵:トミー・ウンゲラー

訳:田村隆一・麻生九美

出版社:評論社

発行日:1978年7月10日

 

何やらロマンチックな書き出しをしてしまいましたが、作品自体は少しもロマンチックな内容ではありません。

まことにウンゲラーさんらしい、独創的で滑稽で華やかで、そして狂騒的な物語です。

 

月おとこ」原題は「MOON MAN」。

表紙絵の、何やら顔色の悪い太っちょさんが「月おとこ=ムーンマン」というわけです。

 

この月おとこは、毎晩月に座り込んで地球を見下ろし、そこで踊っている人々を羨ましく思っていました。

いちどでいいから、なかまになりたいなあ

 

ある夜、近くに飛んできた流れ星の尾に掴まって、月おとこは地球に飛来します。

隕石の落下に驚いた人々、警察や消防士、それにさっそく見物人を当て込んだアイスクリーム屋などが集まってきて、月おとこを発見します。

 

役人やら政治家やら科学者やら将軍たちは月おとこを「宇宙からやってきたインベーダー」だと決めつけ、投獄してしまいます。

がっかりする月おとこでしたが、月の満ち欠けと共に身体が瘦せてゆき、鉄格子の隙間から脱出に成功します。

 

晴れて自由の身になった月おとこは、仮装パーティーに紛れ込み、念願のダンスを踊ります。

しかし、気難し屋の通報によって再び追われる身となり、月おとこは森の中の古城に辿り着きます。

 

城の主は、300年も前から月に行くための宇宙船の研究をしていたというマッドサイエンティスト風の博士。

博士は月おとこに、完成した宇宙船の乗客第一号にならないかと誘います。

月おとこも、もう好奇心を満足させたし、地球ではゆっくり暮らせないことがよくわかったので、喜んで宇宙船に乗り込み、月へ帰って行きます。

 

その後、博士は世界に認められ、科学委員会の委員長に選ばれます。

 

★      ★      ★

 

辛辣な風刺画家としても有名なウンゲラーさん。

子どもから見ればただただ楽しい絵本の中にも、大人の目からはちょっとドキリとするような毒気を含ませます。

 

地上に憧れて降臨する月おとこは十分に滑稽ですが、さて、その地上で踊り狂う人々のエキセントリックなこと。

ダンスに興じる紳士婦人、月おとこを一目見ようと集まってくる野次馬、しかつめらしい軍人や役人、科学者、さらには犬に至るまで、地球の住人たちはみんな狂気じみており、作者のシニカルな目が光っています。

こんな狂乱の渦中に迷い込んだ、純真な月おとこに同情せずにはいられません。

 

この月おとこが月の満ち欠けに呼応して痩せたり太ったりするアイディアはとても鮮やかで楽しいものです。

「アンパンマン」シリーズの生みの親であるやなせたかしさんは、この絵本に衝撃を受け、

「ムーンマンのようなキャラクターを描きたい」

と強く思ったそうです。

 

そして誕生したのが「アンパンマン」。

顔が欠けたり新しくなったりする、今では国民的人気キャラクターのルーツは、ウンゲラーさんのこの作品にあったのですね。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

アイスクリーム屋さんのあきんど根性度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「おちゃのじかんにきたとら」【182冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は個人的に興味深いロングセラー「おちゃのじかんにきたとら」を取り上げます。

作・絵:ジュディス・カー

訳:晴海耕平

出版社:童話館

発行日:1994年9月15日(改訂新版)


定番にして人気の絵本です。

確かに楽しくて、可愛くて、ユーモラスなお話です。

 

しかし、私はこの作品を咀嚼するのにずいぶん時間がかかりました。

一読したとき、どこか難解な印象を受けたのです。

 

この作品に対する他の人の感想や評論などを読んでも、わりとバラバラな読解をされているようです。

広く支持されながらも解釈が分かれるということは、その作品の懐の深さを示しているとも言えます。

 

では、問題の内容をざっと読んでみましょう。

 

主人公はソフィーという名前の小さな女の子。

その日、ソフィーはおかあさんと台所で「おちゃのじかん」にしようとしていました。

そこに、玄関のベルが鳴ります。

 

この時間に訪ねてくる人物に心当たりがないおかあさん。

ともかくソフィーはドアを開けてみます。

すると、なんとそこには「おおきくて 毛むくじゃらの、しまもようの とら」が立っていたのです。

とらは礼儀正しく、

おちゃのじかんに、ごいっしょさせて いただけませんか

と言います。

 

おかあさんは驚きもせず、「もちろん いいですよ」ととらを招き入れます。

とらは行儀よくテーブルにつきますが、その食欲は野生そのもの。

サンドイッチも、パンも、ビスケットも、ケーキも、そして飲み物も、テーブルにあるものを何から何まで全部平らげてしまいます。

それでもとらは満足せず、台所を眺め回し、冷蔵庫や戸棚にある食べ物まで、何もかも食べてしまい、さらには水道の水まで全部飲み干してしまいます。

やがてとらは丁寧にお礼を言って、帰ってしまいます。

 

さて、家じゅうのすべてのものを食べられてしまい、夕ご飯の支度ができないばかりか、水道の水まで飲み尽くされてお風呂にも入れないソフィーとおかあさん。

そこにお父さんが帰ってきます。

 

事情を聞いたおとうさんは慌てず騒がず、レストランへ行こうと提案。

そこで家族は幸せな時間を過ごし、次の日、ソフィーとおかあさんは「とらが、いつ また おちゃのじかんに きても いいように」と、たくさんの食べ物と「タイガーフード」の缶詰まで買い込みます。

 

しかし、その後、とらが現れることはありませんでした。

 

★      ★      ★

 

この絵本の面白さは、とらが家にやってくるという非日常の事件に対し、ソフィーと母親がまったく動揺せず、当たり前のように受け入れるところにあります。

とらの豪快な食べっぷりも楽しいですが、その後帰宅した父親が少しも驚きも怒りもしないところも可笑しい。

 

これらを、「馬鹿馬鹿しいナンセンスな笑い」として楽しむこともできるでしょう。

しかし、絵をとっくりと見てみると、また違った「読み」も可能です。

 

このお話において、主人公であるソフィーのセリフは一言も出てきません。

文章も淡々としたもので、人物の心情を説明する部分はありません。

ですから、ソフィーが何を思い、何を感じているのかは、絵から読み取るほかありません。

 

玄関でとらに遭遇したソフィーは後ろ姿で、その表情は見えませんが、その後とらに対するソフィーの目線は常に優しく、慈愛に満ちています。

慇懃な言葉遣いとは裏腹の、傍若無人でさえあるとらの食事の最中にも、ソフィーは毛皮に顔をくっつけたり、尻尾を撫でたりして、愛おしむ仕草を見せています。

 

ですから、ソフィーは「とら」の訪問を内心で待ち望んでいたとも考えられます。

そこからこれを「ソフィーの内面的な物語」として読むこともでき、年頃の子どもの「外界への好奇心や期待や憧憬」を描いた作品なのだと解釈することもできます。

 

そしてまた別の視座から読んでみると、「他者への寛容性」がこの物語の核であると捉えることもできます。

 

ここに登場するのは犬でも猫でもなく、大きな「とら」という、とびっきりの「他者」です。

可愛いと言えば可愛いけど、やっぱり怖さも持っている猛獣です。

 

丁寧な言葉遣いをしていても食欲は旺盛であり、それを満たすためには遠慮はなく、いつソフィーたちに牙を向けるかしれないと、読者は心のどこかでハラハラせずにはいられません。

食べ物を探すとらの目つきは鋭く、油断なく、獰猛さを内に秘めています。

 

他者に対し恐怖心から疑いの目を向けること、防衛本能から拒絶すること、非寛容になることは、現実世界においても起こることです。

それが差別を生み、暴力を生みます。

 

しかし、この腹を空かせたとらを、ソフィーの母親は温かく迎え入れ、家じゅうの食べ物を食べ尽くされた後でもなお、困惑はしても批難はしません。

父親の対応も非常に理性的です。

 

何故なら、とらは最後まで礼儀正しく振る舞おうとする誠意を見せていたからです。

おそらく、とらにとって品のいい「おちゃのじかん」は苦痛であったでしょう。

しかし、彼は自分のテリトリー外での「マナーと作法」を守ろうと努力し、丁寧な言葉を使って挨拶することを心がけました。

 

たとえ相手が理解できない異邦人であっても、敬意と誠意に対しては敬意と誠意で応えることが人間として成すべき態度なのだと、ソフィーの両親は示して見せたのだと考えられないでしょうか。

 

私がそう考えるのは、作者のジュディス・カーさんが、1930年代、ナチスの圧迫から逃れ、父親とともにドイツを離れた経験を持つ方だからです。

その頃の経験は、カーさんの小説「ヒットラーにぬすまれたももいろうさぎ」にまとめられています。

「他者への非寛容」性の増幅によって最悪の人種差別と虐殺を生んだナチスの存在が、彼女の作品(それはとても明るいものばかりですが)に何の影響も投げかけていないことは想像しにくいのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

タイガーフードの需要性に疑問度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「漂流物」【170冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

先日水族館に行った時、次はこの絵本を紹介しようと決めていました。

2007年コールデコット賞受賞作品「漂流物」です。

作・絵:ディヴィッド・ウィーズナー

出版社:BL出版

発行日:2007年5月25日

 

稀代の絵本作家、ウィーズナーさんの作品を取り上げるのは2回目。

 

≫絵本の紹介「セクター7」

 

今作も「セクター7」と絵本作りの手法は同様です。

文は一切ありません。

そして、ただ事じゃない胸の高鳴りを呼び起こしてくれる、果てしない想像力。

細部まで丁寧に描き込まれた、圧倒的な画力によるリアリティ溢れる空想世界。

 

大人が読んでも面白い絵本の代表みたいな作品です。

 

友達と海へ遊びに来ている少年。

彼の興味は泳ぐことよりも、浜辺の生き物を観察することのようです。

 

虫眼鏡や双眼鏡、さらに顕微鏡まで持参している素敵な科学少年。

また何か観察対象を探しに波打ち際へ歩いて行くと、大波が打ち寄せます。

 

波が引くと、そこにはとても年季の入った水中カメラが打ち上げられていました。

中を開けてみると、フィルムが入っています。

好奇心を覚えた少年は、ビーチ周辺のプリントショップでフィルムを現像に出します。

 

このシーンは細かいコマ割りで描かれていますが、上の空の店員や、ちゃんと新しいフィルムを買う少年、店のすぐ外で仕上がりを待つ少年など、必要かつ無駄のない表現がなされています。

そして、出来上がった写真に写っていたのは……。

冒頭の虫眼鏡をのぞくカットもそうですが、この少年の「目」のアップが非常にインパクトがあります。

表紙絵も魚の「目」のアップですし、これはこの作品のひとつのコンセプトだと思います。

さて、写真に写っていたのは、深い海の底の様子。

しかし、それは普通では考えられないような幻想世界の光景だったのです。

 

機械仕掛けの魚。

ソファに座って読み聞かせをするタコ。

気球になったハリセンボン。

亀の甲羅の上にある巻貝の町。

深海に観光(?)に来た宇宙人。

背中が島になっている巨大ヒトデ。

 

次々に写真をめくって行くと、最後に意外な一枚が現れます。

 

アジア人の少女が、一枚の写真を手に、記念撮影風に写っているのです。

少女の手の写真をよく見ると、そこには少年が同じように写真を手に写っている。

その少年が持つ写真には、また別の子どもが。

 

無限に続く合わせ鏡のような写真。

 

少年は虫眼鏡や顕微鏡を使い、さらに写真の奥を覗いて行きます。

世界の様々な国の子どもたちが、写真を手にして写っており、辿り着いた「最初の一人」は、かなり昔の時代の子どものようです。

 

少年は、この写真が、世界の海を漂流し続ける水中カメラを発見した子どもたちの「記念写真リレー」であることに気づきます。

 

友達が帰り始めると、少年は水中カメラを使って自らも記念写真を撮影します。

そして、水中カメラを海に放ります。

カメラはまた海を漂い、様々な不思議な世界を旅し、長い時間をかけて、再びどこかの浜辺に打ち上げられます。

そして、次の子どもがそれを見つけます。

 

★      ★      ★

 

子どもが何かに見入っている時の顔は美しいものです。

この世の成り立ちを知ろうとする、純粋な好奇心。

あくなき探究心。

 

そんな時の子どもの瞳を見て、私は息を呑むことがあります。

あまりにも澄んでいて、神的なものすら連想させられるからです。

 

ウィーズナーさんが描こうとしたのは、この瞳に映し出される、純粋なる探究心ではないでしょうか。

 

推奨年齢:10歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆(テキストなし)

水中カメラの高解像度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ゆめ」【168冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はキーツさんの「ゆめ」を紹介します。

作・絵:エズラ・ジャック・キーツ

訳:木島始

出版社:偕成社

発行日:1976年9月

 

「ピーター」の絵本で人気のエズラ・ジャック・キーツさん。

しかし、この絵本は同じニューヨークの下町を舞台にしていながら、おなじみのピーターが登場しません。

 

≫絵本の紹介「ピーターのくちぶえ」

 

キーツさんの絵本の中ではあまり知られておらず、現在は絶版で、希少な作品です。

けれども、「ピーター」シリーズとはまた違った技法での表現は幻想的で美しく、魅力的な仕上がりになっています。

キーツさんのファンの方には、ぜひ一度は読んでみて欲しい一冊。

 

主人公はロベルトという男の子。

彼が学校で作った「かみねずみ」を、アパートの同じ階に住むエイミーに見せます。

この独特の空の描き方はマーブリングという技法です。

 

アパートの一室一室に光と色でドラマが紡がれ、それがこの絵本のサブ・ストーリー的役割を果たしています。

それぞれの部屋の住人が眠ると灯りは消え、夢を見始めると、それが前述のマーブリングによって幻想的に表現されます。

 

しかし、ロベルトの部屋だけは色がなく、彼が寝付けずにいることがわかります。

どうしても眠れずに、ロベルトが窓の外を見ると、アパートの下にアーチ―の猫がいて、大きな犬に追い込まれています。

 

なんとか助ける方法はないかとロベルトが思案したとき、窓辺に置いてあった「かみねずみ」が下に落ちます。

アパートの外壁に映った「かみねずみ」の影は、「かみねずみ」の落下に伴って巨大に膨れ上がり、その大きさに驚いた犬は逃げて行ってしまいます。

安心したロベルトは眠りにつき、次の朝、みんなが起きた後も、まだ夢を見ていました。

 

★      ★      ★

 

タイトルは「ゆめ」ですが、ストーリーは現実の出来事を語っています。

もしかすると、かみねずみの活躍はロベルト自身の夢を表現しているのかもしれませんが、キーツさんがこの絵本でやりたかったことは、やっぱりアパートの住人それぞれの「ゆめ」を絵によって現す手法でしょう。

 

下町で暮らす人々の、それぞれの生活や想いが、色とりどりの模様に渦巻いています。

下町の暮らしの温かさのようなものが伝わってきます。

 

かみねずみ」の作り方はカバーに紹介されていて、誰でも作れる簡単なものです。

また、キーツさんはこの絵本を、日本で関わった方々に向けてささげています。

キーツさんの日本への親愛の情も感じることのできる作品です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

マーブリングの不思議さと楽しさ度:☆☆☆☆☆

 

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