絵本の紹介「わたしとあそんで」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは、コールデコット賞受賞作品「わたしとあそんで」です。

文・絵:マリー・ホール・エッツ

訳:与田凖一

出版社:福音館書店

発行日:1968年8月1日

 

以前紹介した「もりのなか」の作者、エッツさんのもう一つの代表作です。

 

≫絵本の紹介「もりのなか」

 

「もりのなか」は単調なようでいて、実に深い謎めいた構造になっている絵本でしたが、この「わたしとあそんで」も、独特の読後感があり、単純に見える一方、なかなか一筋縄ではいかない作品です。

 

えほにずむショップ上で、私は自分で作ったカテゴリに(無粋であることは承知で)絵本を分類しているのですが、「わたしとあそんで」をどうカテゴライズするか、ずいぶん悩みました。

 

結局「しぜん・どうぶつ・むし」の項目に入っていただきましたが、そうすることで一種の固定概念を植え付けてしまうのではと、いまだに迷っています。

 

そもそもこの絵本は特定のジャンルへの分類にはなじまないものです。

かと言ってお高く止まったような作品でもなく、非常に読みやすいものです。

つまり、読み手それぞれの自由な解釈を許してくれる、懐の広い絵本なのです。

 

暖かな春を連想させるクリーム色を基調とした色彩。

わたし」は、原っぱへ遊びに行きます。

そこで、色々な動物に、

あそびましょ

と近寄りますが、動物はみんな逃げてしまいます。

誰も遊んでくれないので、「わたし」は池の傍の石に腰かけて、水すましをじっと見ていました。

 

わたしが おとを たてずに こしかけていると

さっき逃げ出した動物たちがだんだんと戻ってきます。

そのままじっとしていると、動物たちは警戒を解き、「わたし」に近寄ってきてくれます。

 

鹿の赤ちゃんも現れて、「わたし」が「いきを とめていると」、近寄ってきてほっぺたを舐めます。

この時の「わたし」の幸せそうな、くすぐったそうな、なんとも言えない表情が素敵です。

 

最後は動物たちに囲まれながら、

ああ わたしは いま、とっても うれしいの

なぜって、みんなが みんなが わたしと あそんでくれるんですもの

という笑顔で終わります。

 

★      ★      ★

 

この絵本を「友達を作ること」「人間関係」についての示唆として読んでもいいし、「孤独に耐えたのちの希望」の物語として読んでもいいし、それこそそのまま「自然の中での遊び方」や「野生動物観察の手引書」として読んでもいい。

どれも間違いではありません。

 

それは、この絵本が、エッツさんのリアルな体験に基づいた作品であるがゆえに、あらゆる「読み方」に耐える厚みを持っているからです。

 

エッツさんは幼少時より自然に親しみ、結婚後も、病気の夫とともにシカゴ郊外の森の中で過ごしたりと、豊かな自然体験を持ったひとです。

彼女は、そこで自分が自然から学んだ様々なことを、そのまま写し取ったような絵本を描きます。

 

ですから、エッツさんの絵本はどれも自然そのものであり、「説教臭さ」も「押しつけがましさ」もなく、ただ(空想も含めての)「真実」のみが描かれているような印象をたたえています。

 

「自己アピール能力」や「プレゼン能力」や「不屈の行動力」のようなものばかりが重要視される現代社会。

「自分が」「自分が」と幼児的に主張し続けることで、いつしか仕事にも、家庭にも、人間関係すべてに疲れてしまった人々が増えているのではないでしょうか。

 

でも、この絵本の女の子のように、自分を抑制し、自然と一体化することで、はじめて手に入る幸福感もあるのです。

 

大切なことは、自然の中でこそ学ぶことができる。

 

私がエッツさんの絵本から読み取るのは、そんなメッセージです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

表現力の確かさ度:☆☆☆☆☆

 

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絵本の紹介「飼育係長」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは、一度見たら忘れられないインパクトの絵本、「飼育係長」です。

作・絵:よしながこうたく

出版社:長崎出版

発行日:2008年2月11日

 

作者のよしながさんは福岡出身のイラストレーター。

初めての絵本「給食番長」が大人気となり、以後、「わんぱく小学校シリーズ」として続編を次々に刊行。

 

この「飼育係長」はその2作目に当たります。

 

何と言っても、絵が衝撃的。

ちょっと自己主張が強すぎる画風に、敬遠される方もいるかもしれません。

 

登場する動物たちは、可愛いというよりも不気味だし、画面の隅々でうごめく小さな動物たち(これを探すのも楽しみの一つですが)は、「どこの星の生物?」だし。

 

でも、内容はわりとテーマがはっきりした、オーソドックスな絵本だったりします。

わんぱく小学校1年2組の個性あふれる生徒たち。

今回は動物大好き、飼育係の「まさお」が主役。

 

動物園からの遠足の帰り、まさおのリュックに動物の子が潜り込んでいました。

まさおはこの子を「シマ子ブタ」だと言い張り、こっそり学校で飼うことにします。

「しまぷー」と名付けた子ブタに、まさおは毎日たくさんエサをあげますが、夏休みの終わり、しまぷーは巨大な姿に成長、キバまで生えてきます。

 

どうやらブタではなく、イノシシだった模様。

でも、まさおは相変わらず小屋の中でエサをやり続けます。

 

そしてある日、しまぷーは飼育小屋から脱走してしまいます。

 

探し回っても見つからず、仕方なくまさおたちは動物園に行き、園長に打ち明けます。

園長は、動物を飼育することの難しさや責任について、まさおたちに説いて聞かせます。

エサをあげればいいってもんじゃないんですよね。

そこで、しまぷーと感動の再会。

しまぷーは狭い小屋を抜け出して、動物園に戻ってきたのでした。

 

★      ★      ★

 

絵は個性的でも、メッセージは明確。

そしてこのシリーズのもう一つの特徴は、「福岡」という作者の地元を強力に押し出した「ご当地絵本」であること。

 

標準語の本文の他に、博多弁バージョンの文がついた、方言バイリンガル絵本なのです。

面白い試みだと思いますが、私としては、むしろ標準語は完全に排除して、博多弁一本で勝負して欲しかったです。

 

子どもが幼いうちからの英語教育に熱心な方が、子どもが方言を覚えることを嫌がるのは奇妙な気がします。

「多様な言語文化」を学ぶことが目的なら、どんどん方言を教えても問題ないはずです。

何よりも、子どもは方言が大好きですし。

 

標準語版がいらないという理由のひとつは、ページにおける活字の配分を少なくしてほしいからです。

だって、絵の情報量が凄いから。

どうしても字が邪魔に感じてしまうんですよね。

どうせなら手書き字体のほうが、この絵にはしっくり来るような気がしますが、どうでしょうかね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆(博多弁に馴染みがない人の場合)

地元愛度:☆☆☆☆☆

 

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