【絵本の紹介】「おやすみなさいコッコさん」【264冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

早いもので、来月になれば息子も5歳の誕生日を迎えます。

息子の成長についても、また書こうとは思ってますが、「とにかく寝ない」という特徴だけは、赤ちゃんの頃からほとんど変わっていません。

 

まあ、本当に微妙な変化はあって、以前よりは多少リズムもついて、そうそう徹夜することもなくなったんですが、「素直に布団で横になって寝ようとする」ことは滅多とありません。

明らかに眠い時でも、なんとか頑張ろうとします。

 

これが寝かしつけをしなかったせいなのか、それとも生まれ持った性なのかは不明です。

 

今回は片山健さんが自分の娘さんをモデルに描いたコッコさんシリーズより、「おやすみなさいコッコさん」を紹介します。

作・絵:片山健

出版社:福音館書店

発行日:1988年1月30日

 

ま、程度の差はあれど、「寝るのが嫌い」という子どもはたくさんいます。

いつまでも遊んでいたいのか、どこか寂しくて怖い気持ちになるのか、そういう子どもの親はあれやこれや手を変え品を変え我が子を寝かしつけようと頑張ります(そして最終的にキレてしまう親もたくさんいることと思います)。

 

寝る前に絵本を読んであげることは、昂った神経を鎮め、楽しい気持ちで眠りにつかせるのに非常に有効です(うちの子は例外)。

「寝かしつけに良い絵本を……」と探す親たちのために、絵本にはいわゆる「おやすみなさいシリーズ」とでも呼ぶべきジャンルが存在します。

 

この「おやすみなさいコッコさん」も、もちろん寝かしつけにぴったりな絵本ではありますが、おそらく片山さんはそんな意図よりも、単に眠りに入る前の愛娘の可愛らしさに夢中になっているだけという気がします。

「コッコさん」シリーズ全編を貫いている「愛すべき親バカ」目線ですね。

布団に入ったまま寝ようとしないコッコさんに、お空のお月様がやさしく話しかけます。

もう そらの くもも ねむったよ

するとコッコさんは、

そらの くもが ねむっても コッコは ねむらないもん

と返します。

いけの みずだって ねむったよ

いけの さかなも ねむったよ

とりも……

いぬも……

おにいちゃんも……

 

だんだんと近づいてくるお月様の語りかけに対し、

コッコは ねむらないもん

と抵抗を続けるコッコさん。

 

しかし、この言葉遊びのような問答に引き込まれていること自体が、お月様(=親)の優しい計略の内。

予想通り、最後にはコッコさんは静かに眠りの世界に入っていきます。

コッコはねむらないもん……

コッコは……ねむらない……もん……

 

★      ★      ★

 

だんだん文字が小さくなるにつれ、読み聞かせるほうも自然と声を潜め、子どものまぶたも重くなって……。

と、そう上手くいけばありがたいんですがね。

 

うちの息子には、むしろいい言い回しを与えたようで、「ねむらないもん」を連発し、いっそうはしゃぎだす始末。

 

そもそも息子は「おやすみなさい〇〇」系の絵本を見るだけで内容を予測し、「読まない!」と拒絶することも多いです。

こちらが邪な気を持って読み聞かせようとするからでしょうか……。

 

≫絵本の紹介「おやすみなさいおつきさま」

絵本の紹介「おやすみなさいフランシス」

絵本の紹介「ねないこだれだ」

 

一時は絵本よりも、宇宙に関する本などを延々と読んで聞かせるほうがよく寝ました。

最近はもうその手も通じませんが。

というかもう諦めてます。

 

作者の片山さんですが、その昔は怪しさ漂う幻想的でエロティックな鉛筆画で知られた画家で(「赤ずきん」などの挿絵も残ってます)、絵本とはずいぶん印象が違います。

 

絵本を作るようになってからも、その画風、ことに子どもの描き方が初期とはかなり変化しています。

例えば「ゆうちゃんのみきさーしゃ」と「おなかのすくさん」に登場する子どもを見比べてみると、彼らの発する生命力の差に驚きます。

 

≫絵本の紹介「ゆうちゃんのみきさーしゃ」

絵本の紹介「おなかのすくさんぽ」

 

それはやはり、ご自分が子どもを持ったことによる影響が大きいのでしょうね。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

作者の目線の優しさ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「おやすみなさいコッコさん

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「2018イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」に行ってきました【西宮市大谷記念美術館】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年も行ってきました、毎年恒例の「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」

いつも終了間際のレポートですけど、今回は珍しく早いですよ。

公式HP≫2018イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

 

実は前回記事の「みんなのレオ・レオーニ展」と同日に回ってます。

今、阪神間で行われている3つの展覧会のいずれかのチケットを提示すれば、相互割引が受けられます。

 

詳しくは≫「夏休みと絵本展のこと」

 

さてさて、もう1年たったのかーっていうのが一番の感想だったり。

この「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」は、ボローニャで開催される絵本コンクール(5点1組の絵本原画を用意すればだれでも応募可能)の入賞作品を集めた展示会です。

 

今年は約70か国3053作品の応募があり、日本人10名を含む25か国77作家(うちユニット3組)が入選を果たしました。

そのすべてがここで見ることができます。

 

何しろすごい数ですので、ひとつひとつじっくり見ていると膨大な時間がかかります。

正直なところ、小さな子どもを連れての観覧に向いているとは思いません。

展示されている高さが子ども目線ではないですし(息子に見せるにはいちいち抱き上げなくてはなりませんでした)。

 

内容の方も、絵本原画と言っても必ずしも子ども向け作品ばかりではありません。

というか、たった5点の絵でひとつの物語を構築しているわけですから、見る方もかなり想像力を駆使しなくては読めません。

 

それぞれの絵に箇条書き程度のテキストはついていますが、中にはそれを読んでも短い時間ではよくわからない作品もあります。

国も文化も違うとなおさらです。

 

でも、その極限に無駄を削ぎ落し、凝縮された表現こそ「絵本」の魅力であるとも思えます。

そして中にはぜひロングバージョンで読んでみたいと思う作品もいくつかありました(ほとんど作者名も作品名も覚えてませんけど)。

 

息子に受けて、私も面白いと思ったのは「都会の中の野性」(タイトルうろおぼえですが)という作品で、街の風景の中に隠し絵のように動物が潜んでいるというもの。

信号機がキリンだったり、観覧車がクジャクだったり。

 

他には韓国の作家さんの作品で、「あか」。

これはモノクロ画に赤色だけを効果的に用い、「赤」の持つイメージや認識を見るものに発見させるような作品です。

 

その他、ストーリーはわからなくとも、絵だけで十分に楽しめる作品もたくさんありました。

が、息子が途中で飽きてしまったため、後半は駆け足に。

特別展示(スペインの作家さんの絵本原画とかアニメーションとか)はほとんど見れませんでした。

 

子どもを連れてくるなら、小学生以上になってからのほうがいいかもしれませんね。

そんなわけで、3つの展覧会のうち、「チャペック兄弟と子どもの世界」展までは足を運べませんでした。

これは9月9日までやってますので、また一人でゆっくり行ってみたいと思ってます。

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました【伊丹市立美術館】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

前回の記事で言っていたように、11日から開催している「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました。

公式HP→『みんなのレオ・レオーニ展』

 

会場は以前に林明子さんの「えほんのひきだし」展も開催していた伊丹市立美術館。

このブログではひろしま美術館でのレポートを書きましたが、実は伊丹のほうにも行ってます。

 

中に庭園があり、地下もあり、ちょっと入り組んでますが綺麗な美術館です。

電車で行くとまあまあ歩きます。

 

日本でも人気の高いレオニ(レオーニ)さんの絵本。

その内容はどこか哲学的で、作者の知性や崇高な思想を感じさせます。

それは彼の波乱に満ちた生涯が関係しています。

 

レオニさんは1910年にオランダのアムステルダムで生まれます。

父親はダイアモンド・カッティング専門士、母親はオペラ歌手。

伯父はかなりの美術蒐集家だったようで、レオニさんは幼い頃からピカソやシャガールなどの芸術作品に触れて育ちます。

 

その後、父親の仕事の関係でアメリカやヨーロッパ、イタリアを転々とします。

様々な国の文化や言語に触れたことが、のちに絵本作家としての彼の仕事に大きく影響したと思われます。

 

1939年、29歳の時にレオニさんは家族を連れてイタリアからアメリカに亡命します。

イタリアではムッソリーニの独裁体制で、反ファシズム運動家でユダヤ人だったレオニさんは身の危険を感じたのです。

 

第二次世界大戦後、アメリカで画家や彫刻家として認められはじめたレオニさんですが、マッカーシー上院議員の台頭と、それに伴うマッカーシズムの攻撃により仕事を奪われ、窮地に追いやられます。

 

それでも、マッカーシーの失脚とともにレオニさんは年間最優秀アートディレクター賞を受賞するなどして復帰を果たし、そして1959年、最初の絵本「あおくんときいろちゃん」を制作・発表するに至るのです。

 

この「あおくんときいろちゃん」は、孫の扱いがわからなくて困ったレオニさんが、たまたま手元にあった雑誌の広告ページから、青い紙と黄色い紙をちぎって即興のお話を作ってやったのがきっかけだったと言います。

 

抽象化の極致のようでいて、ごく自然に膨大なイメージを喚起される作品で、すぐに子どもたちからも支持を集めました。

レオニさんの絵本作りの土台というか背骨のようなものは、すでにこの時点で完成していたことがうかがえます。

 

彼の作品には常に無駄がありません。

わかりやすく、それでいて重厚なメッセージに貫かれています。

そしてよくよく読み込めば、二重三重の深みが隠されてもいるのです。

 

逆境の中で己を見つめ直し、真実を見極めることのできる崇高な「眼」を育てる「スイミー」や、一見すると生産性のない芸術家的存在の変わり者が最終的にコミュニティを救う「フレデリック」など、レオニさんの作品には、作者自身の理想とする社会像や、人間同士の関係性、「自分とは何か」を問い続ける物語が描かれています。

 

そして何より、彼の作品の深部で核を成しているものは、「平和への祈り」です。

「あおくんときいろちゃん」も、隠されたテーマは「青」と「黄色」という異なる他者同士の交流と絆です。

 

それは世界各地を転々とし、様々な偏見や攻撃に晒されながら表現活動を続けた作者自身の物語なのでしょう。

 

今回の展覧会ではそうしたレオニさんの生涯や絵本原画を紹介するとともに、絵本とは違う彼の彫刻家としての仕事なども見ることができます。

 

そして幻と言われる「スイミー」の5点しかない原画も公開されています。

これは絵本とはずいぶん色合いが違って渋い印象になっています。

レオニさんが原画として新たに描き直したものなのか、それとも絵本製版の工程で現在の色彩になったのか、今となっては知るすべもないそうです。

↑これはグッズのポストカードですが、原画版です。

 

また、レオニさん自身が手掛けた彼の絵本のアニメーションも上映されていました(グッズ売り場にてDVDも販売)。

動く「スイミー」や「さかなはさかな」、「コーネリアス」などに感動しました。

細部において絵本とは違っていて、その違いも楽しめます。

 

これがグッズ売り場の横で上映されているという計算高さ。

子どもをここに座らせておいて、ゆっくりグッズを漁れるわけです。

 

息子も喜んで観ていました。

知っている作品だけに興奮したのだと思いますが、居並ぶ子どもたちの中で一人だけゲラゲラ笑って衆目を集めていました。

↑グッズはぬいぐるみ、マグカップ、小皿、キーホルダー、ポストカード、トートバックにTシャツなどなど、充実しておりました。うちの店にもまた仲間が増えました。

 

キャラクターとしてこれだけ可愛いのに、可愛いだけでないのがレオニさんの絵本の凄いところ。

大人の一人読みにも十分耐える深みと厚みがあります。

今の時代だからこそ、もう一度彼の絵本を手に取ってみて欲しいと思います。

 

関連記事:≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

 

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