【絵本の紹介】「エルズワース 犬になった犬」【214冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はちょっと変わった犬の絵本を取り上げます。

エルズワース 犬になった犬」。

作・絵:ジョン・アギー

訳:なだいなだ

出版社:ミキハウス

発行日:1988年11月20日

 

ポップな色使いと丸みを帯びたキャラクター造形。

とても可愛らしい絵です。

 

しかしその内容はちょっと普通の絵本とは違います。

ある意味哲学的なのですが、全然深刻さはなく、ユーモアたっぷり。

でもナンセンスな悪ふざけ絵本なのかと言えば、わりと深い。

 

子供服ブランドのミキハウスは、こうしたちょっと毛色の違った絵本を出版しています。

 

まず、主人公のエルズワースという犬は本文にもある通り、「ふつうの犬ではなくて」、なんと大学でケイザイガク(経済学)を教えています。

スーツ姿で自転車通勤の途中、スタンドで経済新聞を買うエルズワース。

洗練された都会の知識人たる彼は、トチモンダイイインカイ(土地問題委員会)では座長を務め、周囲から尊敬を集めています。

 

本人もまんざらではないのですが、エルズワースには秘密がありました。

実は、ひとたび家に帰れば、犬としての本能を抑えきれなくなり、まるっきりの犬になってしまうのです。

猫をおっかけ

クルマにほえつき

家にかえるひとのあとをつけ」……。

 

いちにちじゅう きょうだんなんかに立ったあとでは おもいっきり犬になりたくなる。ただそれだけ

 

しかしある時運悪くその姿を仲間の先生に見られ、噂が広まり、エルズワースは大学をクビになってしまいます。

次の職のあてもなく、途方に暮れたエルズワースは公園のベンチで眠り込みます。

目が覚めると、目の前には「プードルのかわいこちゃん」。

ありのままの犬として楽しげに振る舞う彼女を見て、エルズワースは「あたまをガーン」。

 

もちろんだ、これっきゃない

いぬになろう!

 

エルズワースは衣服を脱ぎ捨て、プードルと一緒に四つ足で走り出すのでした。

 

★      ★      ★

 

とにかく、なだいなださんの訳文の洒落ていて軽快なこと。

大人が読んでも面白いです。

 

というより、小さな子どもには、このオチはちょっと意味不明かもしれませんね。

実際、うちの子に読んだ時も(2歳半くらいだったかな)、キョトンとしていました。

 

「犬になる」ったって、最初っからエルズワースは「犬」とはっきり言明されているのにね。

しかし、そこは最後の

そして、そういうこと

の一文で気持ちよく強引に納得させられていたようでした。

 

内容は理解できずとも、色々と耳慣れない言葉がテンポよく飛び出すのは、なかなか刺激的で楽しい体験のようです。

 

「本当の自分」を見失っている大人は、一度固定概念を捨てて、ありのままの「子ども」の姿を見てみるといいでしょう。

エルズワースのように、「あたまをガーン」とやられるかもしれませんよ。

私はしょっちゅうです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

訳文の楽しさ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「エルズワース 犬になった犬

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【絵本の紹介】「11ぴきのねことあほうどり」【181冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「11ぴきのねこ」シリーズで知られる絵本作家・馬場のぼるさんが生前に描いたスケッチやアイディアを記したノートなどが大量に残されていることが発見され、ニュースになりました。

 

それら創作資料の中には、「11ぴきのねこ」に関する構想や考察も多く含まれていたそうです。

「猫の歴史」について書かれたページには、猫がいつ日本に来たのか、どんな模様の猫が多かったのか、など、文献を調べてわかったことが実に詳細に記述されていました。

 

あの独特のフォルムの「11ぴきのねこ」が、けっして適当に描いたわけではなく、膨大な情報と知識に基いて描かれていることがわかります。

たかが子どもの本、と絵本を侮る人には理解できない真摯な仕事ぶり。

 

今回は馬場さんへの敬意を込めて、「11ぴきのねことあほうどり」を紹介します。

作・絵:馬場のぼる

出版社:こぐま社

発行日:1972年11月10日

 

シリーズ第一作については、以前の記事をご覧ください。

≫絵本の紹介「11ぴきのねこ」

 

大ヒットとなった「11ぴきのねこ」。

ぜひ続編を、と読者や編集者に熱望され、構想に取り掛かったものの、完成までに実に5年を要した苦労作。

 

馬場さんが最初に思い描いたのは、「11ぴきのねこがあほうどりの背に乗って空を飛んでいる」カットだったそうです。

しかし、そこに行き着くまでが出てこない。

 

最終的には表紙のように、11ぴきは気球に乗ることになりました。

 

前作ではいつも腹を空かせたノラネコだった11ぴき。

なんと今作では商売をしています。

11ぴきのねこのコロッケ屋さんは大繁盛。

結構楽しそうに働いています。

売れ残りのコロッケも食べられて、お腹も満足そう。

 

……が、毎日毎日コロッケばかり食べているうちに、11ぴきは、

もう コロッケはあきたよ

おいしい とりのまるやきが たべたいねえ

と言い出します。

 

前回は魚で、今回は鳥というわけです。

とりのまるやき」を思い浮かべている11ぴきの前に、一羽のあほうどりが現れ、コロッケをせがみます。

11ぴきは舌なめずりをしながら、あほうどりをもてなします。

このあほうどり、「3」までしか数えられない上に、11ぴきの下心にも気づかず、

ホー しあわせ、わたしはもう しんでもいい

などと隙だらけなセリフを吐きます。

 

さすが、捕まえ易すぎて絶滅危惧種になったといわれるあほうどり。

前回の巨大魚とはえらい違いです。

 

このあほうどりも11ぴきの胃袋に収まってしまうのか……と思ったら、あほうどりは故郷に兄弟がいることを明かします。

その数、「3ばと 3ばと 3ばと 2わ」。

つまり、「11ぴき」!

 

11ぴきはあほうどりの兄弟にもコロッケをご馳走すると言って、気球に乗り込みます。

やってきた南の島で、11ぴきはあほうどりの兄弟を紹介されますが……。

だんだん大きくなるあほうどり。

最後の「11わあっ」は、入り口を破壊してしまうほどの巨大さ。

 

11ぴきは「とりのまるやき」にありつくどころか、あほうどりたちのためにひたすらコロッケを作り続けるハメになってしまうのでした。

 

★      ★      ★

 

映画などでも、ヒット作が出ればすぐにシリーズ化の流れになりますが、どの世界でも二番煎じは難しいもの。

1作目の出来が良ければ良いほど、2作目でそれをさらに超えるのが困難になります。

設定だけを受け継ぎ、かえって自由な発想を制限され、ほとんどの場合、シリーズ2作目は駄作となりがちです。

 

馬場さんがそうした難しさに正面から向き合ったからこそ、この「11ぴきのねことあほうどり」は完成までに5年もかかったのでしょう。

こぐま社の創業者である佐藤英和さんと馬場さんは何度も打ち合わせを繰り返し、悩み抜き、苦しみ抜いて、もう「11ぴき」はやめようという話にまでなったそうです。

 

そうした日々の末に馬場さんは「だんだん大きくなる」というアイディアを閃き、数を数えられないあほうどりと組み合わせて、あの越えがたい「11ぴきのねこ」のラストシーンに勝るとも劣らぬクライマックスに辿り着いたのです。

うちの息子も、「11わあっ」のシーンが大好きです(このページを書き写して壁に飾るほど)。

 

どうせ子ども用の本なんだから」そこまで悩まなくてもいいじゃない、という大人もいるでしょう。

 

けれど、馬場さんは子どもの本だから「こそ」、一切の手抜きや妥協を認められなかったのです。

大人相手なら騙せるんだけどねえ。子どもは騙せないからなあ

生前、馬場さんはそんな風に語られていたそうです。

 

子どもの本を作ること、子どもを楽しませることの難しさを誰よりも知っていた馬場さん。

その一方で、本当に面白いものを作れば、子どもは必ずそれを選んでくれるのだということも知っていた馬場さん。

 

誕生から50年経った今でも、馬場さんが生み出した「11ぴき」は子どもに支持され続けています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

あほうどりの無警戒度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ジャイアント・ジャム・サンド」【180冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

息子はほぼ毎日絵を描きます。

だいたい一日にスケッチブック一冊以上は消費します。

 

同時に、私にも絵をリクエストしてきます。

私はさほど絵心のある方ではないのですが、小さな人間や機械がいっぱい出てくる漫画的な絵を描いてやったら息子が大喜びします。

一枚の絵の中で、色んな人間が色んな行動を取っているのが面白いらしいのです。

 

そうした楽しみは絵本の絵にも通じるところがあります。

「物語る絵」の歓びです。

 

今回はとにかくたくさんの人物が動き回る、絵本のひとつの醍醐味とも言える楽しさに溢れた一冊を紹介しましょう。

ジャイアント・ジャム・サンド」です。

作・絵:ジョン・ヴァーノン・ロード

訳:安西徹雄

出版社:アリス館

発行日:1972年

 

絵の楽しさはもちろん、安西さんによる、歌のようにリズムある訳文も秀逸です。

そして物語の発端は、ある村に突然蜂が大量発生するというもの。

 

虫の異常発生による被害って相当怖いんですが、そこはコミカルに描かれています。

ブンブン ワンワン ウォンウォン チクッ!

蜂の数はなんと「400まんびき」。

どうにも こうにも もう たまらん」ということで、村人たちは緊急集会を開きます。

 

そこでパン屋のおじさんが一計を案じます。

蜂の好物のイチゴジャムでジャイアント・ジャム・サンドを作り、罠を張って一網打尽にするというのです。

 

このぶっ飛んだ作戦に、村人たちは「やんやの だいさんせい」。

賛成するのか……。

それからは村人総出の大仕事。

巨大な食パンを焼き、運び、ジャムを塗り……。

 

さらに「サンド」するために、ヘリコプターで上空にパンを吊り下げます。

読み通り、400万匹の蜂の群れは、地上のパンに群がってきます。

 

そこで空からパンを落とすと……。

ジャイアント・ジャム・サンドの出来上がり!

 

作戦大成功で、村人たちは大喜び。

うたって おどって わらって さわぐ」。

 

サンドは鳥たちが運び去り、「100しゅうかんも だいえんかい」をしたというオチ。

 

★      ★      ★

 

スケールの大きいストーリーも面白いですが、上で書いたようにこの絵本の何よりの楽しみは、細部まで描かれた絵をじっくりと見ること。

 

大掛かりな仕掛けに、大勢の登場人物。

よくよく見ると、その中にユーモアがいっぱい。

 

ダンディな農夫さんは何をするにも農具を駆使し、最後はトラクターをヘリコプターに改造してしまいます。

みんなが仕事に駆り出される中、ひたすら蜂と格闘し続ける3人のおじさん。

蜂に囲まれながら巨大パンを切る大変な作業の中で、律儀にコーヒーを配る人。

 

残ったパンもちゃんと有効利用されていて、食べ物を粗末にしません。

ちなみに作者のロードさんはパン屋の息子だったそうで、なるほどと妙に感心してしまいました。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

蜂と戦うおじさん3人の不屈の闘志度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ぶたのたね」【176冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は佐々木マキさんの「ぶたのたね」を紹介します。

作・絵:佐々木マキ

出版社:絵本館

発行日:1989年10月

 

佐々木さんをこのブログで取り上げるのは二回目。

 

≫絵本の紹介「ねむいねむいねずみ」

 

前衛漫画家出身で、児童書の挿絵の仕事をしたことがきっかけで絵本作家に転身、アナーキーとも言われる作風ながら、子ども受けもよく、次々とヒットを飛ばしました。

天才肌の作家という印象が強いのですが、作品に対しては真摯で勉強熱心で、色々な児童文学作家から物語の作り方を学んだそうです。

 

この「ぶたのたね」は、絵本作りに慣れてきた作者が、純粋に「面白いもの」を、描きたいように描いたといった物語です。

 

主人公のおおかみは、走るのがとても遅く、ぶたを捕まえることができません。

ぶたたちも、そんなおおかみを少しも怖がらず、余裕で逃げながら「ここまで おいで、あっかんべー」とからかう始末。

 

悔し涙をこぼすおおかみの前に、「きつねはかせ」が現れます。

一度でいいから腹いっぱいぶたを食べてみたい、というおおかみに、きつねはかせが渡したものは……。

なんと、「ぶたのたね」。

 

これを地面に撒いて成長促進剤をかければ、ぶたの木が育ち、ぶたの実が生るというのです。

 

おおかみが半信半疑ながらも言われたとおりにすると、一週間ほどして、本当にぶたの木にぶたの実がたわわに実ります。

驚喜するおおかみでしたが、そこに……。

何故かぞうの群れが地響きたてて走ってきます。

きょうは ぞうの マラソンたいかいの日」。

 

ぶたの実は全部下に落ちてしまい、逃げ出してしまいます。

 

がっかりするおおかみ。

しかし一匹だけ、落ちた時に気を失っているぶたを見つけます。

 

ともかく一匹でも、生まれて初めてぶたの丸焼きが食べられることにわくわくしながら、おおかみが火を起こしていると、ぶたは目を覚ましてしまいます。

ぶたは暴れて、抑えようとしたおおかみは自分で起こした火をしっぽに付けてしまい、熱さに飛びあがっている間にぶたは逃走。

 

それでもおおかみは「こんどこそ!」と、懲りずにぶたのたねを埋めて、薬をかけているのでした。

 

★      ★      ★

 

不思議な読後感と難解なイメージのデビュー作「やっぱりおおかみ」に登場するシルエットおおかみに比べ、同じおおかみでもこの絵本の主人公は随分と間抜けで、詰めが甘くて、親しみやすい。

その親しみやすさは物語そのものにも通じます。

 

ぶたの木にぶたの実が生るさまはシュールそのものですが、ただ単純に笑えます。

私はどこかで佐々木さんの作品に「怖さ」や「狂気」を感じてしまう読者なのですが、この作品に限っては、そういう印象は皆無でした。

 

それは物語の馬鹿馬鹿しさも然ることながら、主人公のおおかみのキャラクターに依るところが大きいと思います。

 

「ダメな子ほどかわいい」の典型みたいなおおかみ。

やることがいちいち甘くて、でも本人は一生懸命で、ぶたに馬鹿にされて涙を浮かべる姿にはつい同情心を誘われます。

 

なにより、最後の「こんどこそ!」の姿がいい。

努力の方向もちょっと違うし、絶対また失敗することが見えてるんだけど、心のどこかで応援してしまいます。

 

この作品はシリーズ化され、「また ぶたのたね」「またまた ぶたのたね」と続きます。

先の読めないシュール・ナンセンスな展開は変わりませんが、それでも安心して楽しめるのは、「必ず、最後におおかみが失敗する」ことだけは予想できるから。

 

それをわかった上で、やっぱり「がんばれ!」と思って読んでしまうんですね。

 

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【絵本の紹介】「リサ ジャングルへいく」【172冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

夏休み=8月31日まで。

と、漠然と思い込んでいたんですが、昨今はそうでもないようで、今日が2学期の始業式という小学校も結構あるみたいですね。

世知辛い世の中ですな。

 

大人になってしまうと一か月なんてあっという間ですが、子どもにとって一か月以上の夏休みはとても長く、大きな意味を持ちます。

目まぐるしい心身の成長もあり、新学期に久しぶりに会う友達なんて、ほとんど別人のように変化している(実は自分が変化していたり)ような気になるものです。

 

夏休みが終わってしまう寂しさと、久しぶりに友達に会える嬉しさ、それぞれの休み中の出来事を語り合う楽しさ……。

あの新学期特有の空気は、大人になるともう味わえない種類のものです。

 

今回紹介するのは大人気「リサとガスパール」シリーズより、「リサ ジャングルへいく」です。

文:アン・グットマン

絵:ゲオルグ・ハレンスレーベン

訳:石津ちひろ

出版社:ブロンズ新社

発行日:2002年11月

 

夫婦による合作で、世界中で人気を集めている「リサガス」。

以前「リサとガスパールのクリスマス」を紹介しました。

 

≫絵本の紹介「リサとガスパールのクリスマス」

 

作品ごとにリサ視点・ガスパール視点を入れ替えて語られます。

今回はリサの物語。

 

新学期。

夏休みどこにも行かなかったリサは、ガスパールがヨットの写真をみんなに見せているのを(「ガスパール うみへいく」のエピソードですね)羨ましく思います。

 

そこで思わず、「わたしは ジャングルに いったの」と口走ってしまいます。

みんなに注目されて、リサは調子に乗ってホラ話を続けます。

ありませんでしたか、こんなこと?

私はよくありました。

 

みんなが自分の話を聞いてくれるのが嬉しくて、ついつい話を盛ってしまうという状況。

「嘘だよ」と白状して笑い話にしてしまえば済むのに、幼さゆえにそれができない。

 

こういうのは、バレないギリギリのラインの見極めが重要なのですが、リサのホラはスケールが大きすぎ。

ジャングルでヒョウの飼育をしているおじさん、高い木のてっぺんにある家、ゴリラの出迎え、ゾウに乗ってのお出かけ。

ワニの背中を渡り、ピラニアのいる湖を越えて、ヒョウの世話をしに行きます。

リサは完全にノリノリですが、こういう時に必ず、聴衆の中に一人、冷静なヤツがいるんですよ……。

 

突っ込んだのはクラスメイトのバスティアン。

リサのはなし ぜったいに おかしいよ!

ジャングルにいってたわけないさ

だって うちのちかくのプールで いつもおよいでたじゃないか!

 

ひゃー。

嘘がばれそうになって焦るリサですが、今度は動物園でたくさん証拠写真を撮ろうという、姑息な隠蔽手段を思いつくのでした。

 

★      ★      ★

 

キャラクターの可愛らしさが注目される「リサガス」ですが、絵本としての質を問う評論はあまり見かけません。

でも、私は結構好きです。

教訓臭くならないところが、特に。

 

嘘は良くないことを、ちゃんと伝えて欲しい」などという親の意見があるかもしれませんが、リサがペナルティを受けたところで、子どもは喜びません。

 

もちろん、嘘はいけません。

しかし、子どもがちょっとした見栄からポロッとついてしまう嘘を、とことん追求し、逃げ場を奪い、糾弾するようなことは、子どもの成長にとっては決して有益ではないと思います。

 

どうにかして子どもに「罪の意識」を持たせよう、という教育を行っている人を見かけますが、私はむしろ逆で、どうすれば子どもが「罪の意識」に苛まれずに成長できるか、と考えています。

幼いうちから「罪悪感」を植え付けることは、様々な可能性を摘みかねないと思うからです。

 

リサは子どもそのものですが、「いい子」ではありません。

そういう子どもの分身体としてのキャラクターの失敗や恥は、子どもにとっては「救い」なのです。

 

「こういうことをしてしまうのは、自分だけじゃない」と思うことで子どもは「ホッ」とし、そして心を閉ざしたり強張らせたりする危険を回避して、正しく己を見つめ直すきっかけを掴めるのです。

 

作者はちゃんとそういうことを理解しています。

大人にも受ける可愛らしいキャラクター性はあっても、大人に媚びた絵本ではないのです。

 

見返しや扉絵にもちゃんと意味があり、絵本の面白さというものをきっちり抑えた良作です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

リサの即興力度:☆☆☆☆☆

 

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