児童書感想文・その2

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

まだまだ暑いですが8月も終わりますね。

今年はコロナ一色、3月ごろにはまだ楽観的な意見もよく見かけたんですが、結局いまだに感染収束の気配はありません。

 

様々な人がその影響を被っていますが、気の毒な子どもたちは夏休みを大幅に失った上にこの暑さの中、マスクで登校しなくてはなりません。

息子の小学校もすでに2学期が始まっていますが、息子はまだ自主的夏休みを続けています。

息子には小学校へ遊ぶつもりで楽しく通ってほしかったし、学校生活が始まれば友だち付き合いも覚えて、このブログでもまた色々と書くことができるんだろうと思っていたんですが。

まさか学校に行くことそのものがリスクとなるとはねえ…。

 

学校に行ってない間もそうですが、夏休みの間にも課題は出ます。

息子は課題を喜びません。

他の先生や学校がどうなのかは知りませんが、私から見るとずいぶん課題の量が多いと感じます。

もちろん、息子がその気にさえなればすぐに終わってしまうような内容ではあるけれども、息子はとにかくやりたがらないです。

これを一種の訓練のようにしてやらせることがいいことなのかどうか、今でも答えが出ていません。

 

さて、息子の読書生活について最近あまり触れていなかったのですが、絵本よりも図鑑や漫画が中心になっています。

絵本をまるで読まないかというとそんなことはなく、非常に短い時間ですが一人で引っ張り出して読んでいることがあります。

読んであげようか」と言ってもほぼ断られます。

これについては私の怠惰もあり、もっと良いタイミングを見計らって持っていけば絵本を読む機会はいくらでも増えるはずだと思っています。

 

あと、夜寝る前には字の多い児童書を読み聞かせるのが習慣化しています(いくら読んでも寝ませんけど)。

以前に息子に読んだ児童書の感想文的な記事を書きましたが、あれから読んだ本も増えてきたので、その一部だけですが久しぶりに紹介してみようと思います。

 

≫たまには児童書感想文

 

まずは世界的名作「くまのプーさん」(岩波書店・石井桃子訳)。

ディズニーのイメージが圧倒的でしょうけど、私も原作を読んだのは息子に聞かせた時が初めて。

ストーリーやらキャラクターやらは省きますが、息子が笑い転げ、何度も繰り返し読みたがるのはさすがに名作。

 

海外児童書らしく文章が諧謔に満ちていて、息子の年では理解が難しい内容が多いと思うのですが、それでもしっかりと面白いのですね。

導入部からして複雑で、この物語は作者が息子の「クリストファー・ロビン」に聞かせているお話という形式を取っています。

クリストファー・ロビンはぬいぐるみのくまの「プー」を持って父親の話を聞いています。

ここではプーは本当のぬいぐるみとして描かれています。

しかし、お話の中ではプーは動いて喋り、クリストファー・ロビンや森の仲間たちと交流を持ちます。

息子がすんなりとこの二つの次元を理解できたとは思えません。

それでもじっと話を聞き続け、プーが木から落ちたり、コブタが怖がって取り乱したりするシーンではゲラゲラ笑い転げます。

そして時々は自分で読んでいます。

 

ちなみに私はディズニー版よりもE・H・シェパードさんの挿絵が好きです。

クリストファー・ロビンの美少年っぷりが凄い。

 

グリックの冒険」「ガンバとカワウソの冒険」(斎藤惇夫作・薮内正幸画)。

これは前回も紹介したドブネズミ・ガンバシリーズ「冒険者たち」の続編的作品です。

 

発表順としては「グリック」が最初で、「冒険者たち」「ガンバとカワウソ」と続きます。

どちらも相当長いお話ですので、2冊読了するまでにはかなり時間を要しました。

毎回小さな動物たちが大変な苦労をし、必ず何人かのキャラクターが死にます。

一作目を読んだときはラストで初めて涙した息子ですが、もう今ではそういう物語も受け入れるようになりました。

ただ、その後で自分のオリジナルストーリーの漫画を描いて、死んだキャラを生き返らせたりしています。

 

二分間の冒険」(岡田淳作・太田大八画)

今でもよくあるところの、異世界に召喚された普通の主人公がヒロインを守って敵と戦うファンタジー。

主人公は「いちばんたしかなもの」を捕まえることで元の世界に戻れるという設定。

子どもの時に読んでもいまいちピンとこない哲学的テーマが含まれており、大人になってから読むことで新しい発見ができる作品です。

竜との知恵比べや主人公とヒロインの淡い恋、それに太田大八さんのオリジナリティあふれる竜の造形も見どころ。

 

キョーレツ科学者・フラニー」シリーズ。(あかね書房)

ジム・ベントン作の子ども向けドタバタSFコメディー。

主人公はフラニーという小学生の女の子ですが、いわゆるマッドサイエンティストで、不気味な怪物を作り出したり、危険な発明をしたり。

これは息子が一人で読みふけってました。

日本での「かいけつゾロリ」シリーズのように、海外で子どもたちに圧倒的人気のシリーズのようです。

一度読みだすと止まらなくなるくらい面白い。らしい。

 

なんじゃもんじゃ博士」(長新太・福音館書店)

これは「母の友」という雑誌に連載されていた2ページ完結の漫画作品です。

ナンセンスの神様・長新太さんの味が最もよく味わえる作品だと思いますので、長さんファン必読の書として薦めたいです。

 

「ハラハラ編」「ドキドキ編」があります。

とにかくとぼけたなんじゃもんじゃ博士のキャラクターと、物言わぬ相棒のゾウアザラシのコンビが、行く先々で奇怪な生き物に絡まれ、「ワーッ」とか「トホホ」とか「どうしようどうしよう」とか言いますが、最後は「ああ、よかったねえ」で済んでしまう。

読み終わると自然と口調がなんじゃもんじゃ博士っぽくなります。

 

このシリーズの絵本化作品「なんじゃもんじゃ博士のおべんとう」を息子が1〜2歳くらいの時に読みましたが、その時の息子の反応が忘れられません。

博士たちが巨大エビに襲われて、「おおきな ツメが せまってくるぞ!」というシーンで息子は泣きそうになって部屋を飛び出し、なんかごそごそして持ってきたのは爪切り。

爪切りで切るの!」と叫んだときの息子は本当に可愛かったです。

 

以上、本当にごく一部しか紹介できなかった…。

他にも色々と読んでいますが、また機会を見つけて紹介したいと思います。

そういえば息子は小学校の図書室からはもっぱら「かいけつゾロリ」シリーズを借りてきます。

やっぱりねえ。

 

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「トプシーとアンガス」【386冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

ずっと以前に紹介した「アンガスとあひる」をご存じでしょうか。

 

≫絵本の紹介「アンガスとあひる」

 

古典名作として取り上げられることの多い作品ですので、読んだことのある方も多いと思います。

けれど、この知りたがり屋で好奇心旺盛なスコッチテリアの「アンガス」の絵本が全5作のシリーズであることを知っている人は少ないかもしれません。

 

今回はシリーズ最終作である「トプシーとアンガス」を紹介しましょう。

作・絵:マージョリー・フラック

訳:まさきるりこ

出版社:アリス館

発行日:2008年3月15日

 

実はこのシリーズ、「アンガスとあひる」「アンガスとねこ」「まいごのアンガス」の前3作は瀬田貞二さん訳で福音館書店から発行されていましたが、後2作「ベスとアンガス」そしてこの「トプシーとアンガス」は長い間翻訳されないままだったのですね。

 

ゆえにアンガスがシリーズ連作であることを知っている人でも、3部作だと思っていた人も多かったのではないでしょうか。

かくいう私もその一人です。

 

近年になってアリス館から間崎ルリ子さんの翻訳により、ようやくすべてのアンガスシリーズが日本語で読めるようになったのですが、悲しいことに現在のところアリス館出版の2作品はすでに絶版重版未定です……。

こういう時こそ古本屋。

 

宣伝はおいといて、第一作があまりにも完成されすぎていて2作目以降が埋もれてしまう現象はシリーズ絵本あるあるですが、「アンガス」は5作全部それぞれ違った面白さが維持されています。

その上で、後2作は前3作とやや毛色が違い、特に「トプシーとアンガス」はテキストが多く、ドラマに比重を置いた作りとなっています。

これは、「アンガスとあひる」を読んで育った子どもの成長を作者が計算に入れているのかもしれません。

物語の中心になるのはアンガスではなく、コッカー・スパニエルの「トプシー」です。

ペットショップで寂しい思いをしているトプシーを見かけた少女「ジュディ」がトプシーを欲しがりますが、母親は許してくれません。

 

くまのコールテンくん」を思い出す展開ですが、結局トプシーはジュディではなく「サマンサ・リトルフィールド」という名の老婦人に買われることになります。

 

≫絵本の紹介「くまのコールテンくん」

 

婦人はお金持ちで、トプシーに様々なものを買ってやりますが、トプシーはしつけのできていないいたずらっ子で、それらをみんなめちゃくちゃにしてしまいます。

サマンサ婦人はトプシーを大変可愛がってはいるけれども、少々手を焼き始めます。

きちんと整えられた家の中まで荒らされて、とうとう婦人はトプシーを地下室に閉じ込めます。

 

地下室から抜け出したトプシーは、外を走り回り、そこで子犬のアンガスに出会います。

前回アンガスの友だちとなった「ブルンブルンベス」も加わり、楽しく駆け回っているところへ、ペットショップで毎日トプシーを見に来ていたあのジュディが現れます。

ジュディとトプシーはしっかり抱き合い、互いに喜びます。

ジュディはトプシーを家に連れ帰りますが、次の日にはサマンサ婦人がトプシーを探しにやってきます。

 

悲しむジュディを見て、婦人はトプシーをジュディに譲ると言ってくれます。

ジュディの母親も犬を飼うことを認めてくれ、それからはジュディとトプシー、それにアンガスとベスも一緒に毎日楽しく遊ぶようになるのでした。

 

★      ★      ★

 

作者のマージョリー・フラックさんが発表した絵本はこのアンガスシリーズを含め、「おかあさんだいすき」など9冊。

絵本作家としては決して多作ではありませんが、どの作品も創意工夫にあふれており、構図や場面転換などの表現方法は後進の作家に大いに影響を与えました。

 

まだ絵本というものの価値や可能性が低く見られていた時代に、フラックさんの残した功績は小さなものではありません。

それゆえに彼女はワンダ・ガアグさんと並んで、アメリカ絵本の礎を築いた存在だと言われているのです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

犬好き絵本度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「トプシーとアンガス

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【絵本の紹介】「くろずみ小太郎旅日記 おろち退治の巻」【385冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は絵本界の浪曲師・飯野和好さんによる「くろずみ小太郎旅日記 おろち退治の巻」を紹介したいと思います。

作・絵:飯野和好

出版社:クレヨンハウス

発行日:1997年3月

 

以前このブログでも取り上げた「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズと並ぶ、同作者の人気シリーズ。

 

≫絵本の紹介「ねぎぼうずのあさたろう その1」

 

やっぱり時代劇風・浪花節風・講談風の作品で、主人公は炭。

昔はどこの家庭にもあった一般的な燃料ですが、今は焼き鳥屋にでも行かないと見ることも少ないですね。

炭を擬人化するとか、いかにも飯野さんらしい。

 

この「くろずみ小太郎」は忍術の心得がある旅の若者。

テキストは「ねぎぼうずのあさたろう」よりもさらに簡潔、というより圧倒的に絵に比重があり、オール見開きの迫力あるカットが連続します。

ことにおろちが登場するまでの展開は、他の作家なら2場面くらいにまとめてしまうところを5場面もかけて(しかも全部見開きで)描いています。

その間テキストはほんの1、2センテンス。

冗長というのではなく、あえて「間」を取ることで、講釈を聴いているような、紙芝居を観ているようなワクワク感を呼び起こされます。

 

さて、巨大なおろちにあっさりひと呑みにされてしまったくろずみ小太郎、おろちの腹の中で「たどん」(炭を練った玉)に火をつけて明かりにすると、先に呑み込まれていた旅の親子の姿が。

これははやくだっしゅつしないと とかされてしまうぞ

一計を案じた小太郎は、「特大の下しぐすり」の術で、おろちに下痢を起こさせ……

ま、ようするに下の出口から旅の親子ともども飛び出します。

 

おろちはぐったり。

脱出に成功したくろずみ小太郎は再び旅を続けるのでした。

 

★      ★      ★

 

飯野さん一流の、泥臭くも迫力いっぱいの画面、アングル。

今の日本ではなかなか見られない雄大な景色、たなびく雲。

こういう時代には本当に忍術使いやおろちが生きていたのではないかと想像させるのに十分な絵筆の力を感じます。

 

あとがきでも書かれていますが、この絵本のモチーフとなっているのは古典落語の「夏の医者」という噺です。

落語にはこの大蛇=「うわばみ」というやつがよく登場します。

人間を丸のみにしてしまうほど大きな蛇で、「夏の医者」では、古いチシャを食べて当たった病人を見舞いに行く途中で医者がこいつに呑み込まれてしまいます。

腹の中で医者はやっぱり下剤を撒き、うわばみの肛門から脱出するけれども、大事な薬篭(薬かばん)を腹の中に忘れてきてしまい、うわばみにもう一度呑んでくれと頼みます。

するとうわばみは「夏の医者(チシャ)は腹に障る」と断る……というサゲになっています。

 

毎日暑い日が続きますが、みなさまも食べ物にはご注意くださいね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

忍術らしさ度:☆

 

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