絵本の紹介「あんぱんまん」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

我が家では、滅多にテレビをつけません。

別に見たいものがないということもありますが、子どもが2歳くらいになるまでは、液晶画面を見せるのはやめようと思っていたからです。

やはり、テレビの音や光は、赤ちゃんには刺激が強すぎると思うのです。

 

赤ちゃんが、圧倒的な情報量のテレビ画面に釘付けになるのは当たり前です。

それを、「喜んでいるから」「楽だから」と、テレビやスマホに子守りをさせるという風潮は少し心配です。

 

赤ちゃんの健全な五感の発達という面から考えれば、静かな部屋で抱っこしながら絵本を読み聞かせる以上の仕事を、電子機器が代わってくれるとは思えません。

 

今回紹介するのは、アニメ版とはかなり違う、原作絵本としての「あんぱんまん」です。

大人気ですよね、アンパンマン。

ですが、初期の絵本とアニメキャラクターとしてのアンパンマンには、ずいぶんと相違があります。

これは「アンパンマン」シリーズの第一作ですが、何が違うといって、この頭身。

背、高い。

このボディにアンパンの顔が乗っかっている姿は、シュールの一言。

これで首が無くなったら、ただのホラー絵にも見えてしまう。

でも、ちゃんと縮みます。

 

まだ「ばいきんまん」も、ほかのパン仲間も登場しません。

ただ、あんぱんまんがお腹を空かせた人々に「さあ、ぼくのかおを たべなさい」と迫るだけ(結構怖い)のおはなし。

ジャムおじさんにも名前がありません。

 

アニメ版は、原作の持つこのシュールさや、あんぱんまんの飄々としたキャラクターが失われていて、個人的には好きではありません。

あんぱんまんは単なる良い子の正義の味方ではありません。

そこには、本来、作者のやなせさんの「正義」に対する考えが込められていたはずなのです。

 

戦争で従軍体験したやなせさんは、「正義」の裏にある暴力性を痛感し、単純な「正義」という言葉を疑問視するようになっていました。

やなせさんは、普遍的な「正義」とは、「ひもじいものに食べ物を分け与える」行為だと考えました。

そして、自ら体を張ってその「正義」を代行するヒーローとして、「あんぱんまん」が誕生したのです。

 

仕方のないことかもしれませんが、アニメ版からはそういう背景は一切感じられませんし、商業的に、子どもが喜びそうなことを詰め込んだ作品になっています(それが悪いとは思いませんが)。

アニメの「アンパンマン」で育った子どもは、この絵本を見てどう感じるでしょうか。

「なにかちがう」と敬遠するでしょうか。

けれど、いつの時代も、子どもの目は確かです。

本当にすぐれた絵本は、必ず正当な評価を受け、選ばれ、読み継がれていくものだと思います。

 

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

絵本専門の古本屋 えほにずむ

〒578-0981

大阪府東大阪市島之内2-12-43

URL:http://ehonizm.com

E-Mail:book@ehonizm.com

 

絵本の紹介「かいじゅうたちのいるところ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はモーリス・センダックさんの最高傑作との呼び名も高い、「かいじゅうたちのいるところ」を紹介します。

コールデコット賞という、絵本界では最高の賞を受賞している作品です。

 

ある日、いたずらが過ぎたマックスという男の子は、お母さんに夕ご飯抜きで寝室へ放り込まれてしまいます。

すると、寝室がたちまちのうちに大きな木の生え茂る森に変貌します(この間、だんだんページにおける絵の比率が大きくなっていくことに注目)。

マックスは船に乗り、「1しゅうかんすぎ、2しゅうかんすぎ、ひとつき ふたつき ひが たって、1ねんと 1にち こうかいすると」「かいじゅうたちの いるところ」に到着します。

このかいじゅうたちの描写がなんとも独創的で秀逸です。

子どもが怖がるのでは……と心配になるほどの迫力。

すごい こえで うおーっと ほえて

すごい はを がちがち ならして

すごい めだまを ぎょろぎょろ させて

すごい つめを むきだ」すのですから。

 

しかし、マックスは「かいじゅうならしの まほう」で、かいじゅうたちをあっさり服従させてしまいます。

そしてここから、見開き3連続による、文章のない絵のみのシーンが展開されます。

センダックさんはいつもクラシック音楽を鑑賞しながら創作に向かうそうです。

そのせいか、彼の作品のバックグラウンドには、いつも音楽的な躍動感が流れています。

 

このシーンも、読み聞かせる側にしてみれば、「どうすりゃいいの?」と困惑するところですが、子どもは絵本の中で流れているはずの音楽を、お祭り騒ぎを、しっかりと感じています。

子どもと一緒に歌うもよし、楽器を鳴らすもよし、踊るもよし。

 

子どもだけが持つ、原始的な感情のカタルシスは、言葉では表現できません。

踊り、歌い、リズムに乗り、体全体、五感のすべてを使って感情を発散させるのです。

 

やがて、感情を吐き出しつくしたマックスは、急にさびしくなって、「やさしい だれかさんの ところへ」帰りたくなります。

それで、引き留めようと懇願するかいじゅうたちを残して、マックスは船に乗ります。

これは重要なことですが、この世界ではマックスが完全に主導権を握っているのです。

だから、絵本を読む子どもたちも、かいじゅうたちを恐れる必要がないのです。

空想の世界から寝室に戻ったマックスの、この憑き物が落ちたような顔。

 

「かいじゅうたち」は、子ども自身の、制御できない恐ろしい衝動的な感情であり、それを手なずける手段は、空想力です。

もりのなか」の紹介文でも触れましたが、子どもは現実と空想の世界を自在に行き来しますが、それは子どもが成熟するために、必要不可欠の能力なのです。

 

≫絵本の紹介「もりのなか」

 

真の意味での「現実」は、「空想」に支えられて初めて生きた姿を見せます。

現実は空想を生み、空想は現実の理解を助けます。

大半の大人が言う「現実」は、そういう意味では片手落ちなのです。

 

子どもの空想とは、何でもありのカオスではありません。

そこには厳然たるルールが存在します。

それは、子ども同士の真剣な遊びを見ていればわかることです。

 

「かいじゅうたちのいるところ」は、そうした子どもにとっての空想、ファンタジーというものを、センダックさんが率直で先入観のない目でとらえ、描いた傑作です。

 

 

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3歳までに絵本を1000冊読み聞かせたら

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

私には3歳の息子がいます。

0歳の時から、ほぼ毎日、絵本を読み聞かせています。

我が家の読み聞かせルールは、「子どもが望むとき、望んだ分だけ、いつでも、何度でも読んであげる」です。

 

そうして、3歳までに読み聞かせた絵本は1000冊を超えました(1000回読んだ、でなく、1000種類の絵本、という意味です)。

2〜3回しか読まなかった絵本もあるし、それこそ何十回となく読んだ絵本もあります。

 

ただし、強制は絶対にしません。

読んでみて、反応がもうひとつだな、と思ったら、話の途中でも中断して、ほかの遊びをします。

逆に、子どもから「読んで」と言われたら、自分が何をしていても、絵本へ向かいます。

夜中じゅう繰り返し読み続けたこともあります(後半は睡魔のあまり読み間違えだらけでしたが……)。

 

以前にも幼児への早期教育や、集中的な読み聞かせについての記事を書きましたが、3歳くらいまでの子どもの吸収力というものは凄まじいものがあり、8歳にして6か国語を自由にしたドイツのカール・ヴィッテや、また、時には重い障害すら克服してしまったニュージーランドのクシュラのような例もあります。

 

読み聞かせはいつから?

クシュラの奇跡

 

子育てはどこで終わりというものではなく、成功・失敗がはっきりしたものでもありません。

ですから、途中経過はあくまで途中経過ですが、読み聞かせ育児というものの一つの参考事例として、息子の成長について、ここに紹介してみます。

 

息子は、1歳を少し過ぎたころには、平仮名・カタカナ・アルファベットを識別し、1歳半には文章を読めるようになりました。

特に教えてはいませんが、いつの間にかローマ字も判読するようになっていました。

たまには自分で絵本を読むこともありますが、基本的には読んでもらいたがります。

絵本を元ネタとした遊びをしたがります。

時にはこぐまちゃんになり、時にはうさぎになり、ロボットになり、絵本のセリフを諳んじます。

記憶力は相当いいようで、一度読んだだけの絵本のタイトルや内容も実によく覚えていて、こっちがついていけないこともしばしばです。

 

語彙が豊富で、単語ではなく長文を作って会話します。

割と的確な言葉を使います。

替え歌が大好きで、いろいろ作っては歌っています。

 

言葉が豊富だということは、感情表現も豊かだということに繋がります。

単に泣きわめくだけでなく、自分がどういう気持ちなのか、どうして欲しいのか、懸命に言葉を探しているようです。

ですから、滅多に癇癪は起こさないし、気分の切り替えも早いです。

 

少々親の欲目が入っているかもしれませんが、そんなところです。

今後この子がどう育っていくのかは、まだまだわかりません。

しかし、現時点でのこれらの成長と絵本の読み聞かせは、けっして無関係ではないと思っています。

 

ただ、誤解していただきたくないのですが、私は息子を東大に入れたいとか、学者にしたいとか考えているわけではありません(そうなってくれても一向に構いませんが)。

子どもには、将来、自分の人生を満ち足りたものとして、肯定的に、主体的に生きて欲しいと願っています。

そのために最も重要な土台となるのは、幼児期の愛情だと思っています。

 

赤ちゃんにとって、無条件に愛されていることが、あらゆる人間的資質の開花のための栄養分なのです。

絵本を読んでもらうことは、愛情の確認作業でもあります。

どんな時でも拒絶せずに読んであげることで、「あなたはいかなる時でも無条件に愛されている。あなたにはそれだけの価値がある」と、子どもに伝えているのです。

そして、子どもが親に対して真に求めているものは、まさにそのメッセージなのです。

 

子どもの早期教育と言って、高価な教材を購入したり、有名幼稚園に通わせようとするなら、手間と時間を惜しまず、子どもに絵本を読んであげましょう。

 

 

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