絵本の紹介「ぞうくんのさんぽ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は「ぞうくんのさんぽ」(作・絵:なかのひろたか、レタリング:なかのまさたか、福音館書店)を紹介します。

作者のお二人は兄弟です。

ひろたかさんが弟さん、まさたかさんがお兄さん。

「レタリング」って、一瞬何を担当しているのかわからないですが、文章の字体を作ってるんです。

海外の絵本なんかだと、文字も絵の一部と捉えて、作家さんが全部自分で書いてある作品が結構あります。

古典名作などを原本で読むと、それぞれの作風に合わせた字体を、苦心して作られているのがわかります。

 

日本の絵本はほとんどが活字印刷で、字体まで作る作家さんは少数派のようです。

でも、この「ぞうくんのさんぽ」では、その独特の字体と、丸みを帯びた絵柄が見事にマッチしています。

 

お話の方はいたってシンプル。

ぞうくんがさんぽにでかけると、途中でかばくん(という名の、謎の生き物)に出会います。

おや、ぞうくん。どこいくの

さんぽだよ。いっしょに いこう

せなかに のせてくれるなら いってもいいよ

いや、歩こうよ(読んでいる大人の心の声)。

 

でも、気のいいぞうくんは「いいとも、いいとも」と、あっさり承諾。

次に登場するのはわにくん。

おや、ぞうくん。かばくんのせて どこいくの

さんぽだよ。いっしょに いこう

それじゃあ ぼくも のせてよ

ぞうくんは ちからもちだね

おまえら……。

 

最後に小さなかめくんが登場。

例によって例のごとく、背中に乗ります(どうやって登ったんだろう)。

ぞうくんはそろそろ重さに耐えかねている様子。

そして行く手には池。

 

小さな子にも、この先の展開は予想できます。

絵本の王道ですよね。

 

でも、水の中でよかった。

ケガしなかったし、みんなごきげんで遊んでるし……と、子どもに安心感を与える終わり方です。

 

続編もありまして、「ぞうくんのあめふりさんぽ」「ぞうくんのおおかぜさんぽ」、そしてつい最近、10年ぶりに最新作「かめくんのさんぽ」が月刊絵本「こどものとも」から出版されました。

 

じゃあ、この「ぞうくんのさんぽ」が生まれたのっていつなの?

実は1968年。

なんと50年近く前なんです。

全然古臭く感じませんよね。

これぞアンチエイジング絵本。

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

絵本専門の古本屋 えほにずむ

〒578-0981

大阪府東大阪市島之内2-12-43

URL:http://ehonizm.com

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「しろいうさぎとくろいうさぎ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は結婚式にも贈られることの多いロングセラー絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」(文・絵:ガース・ウイリアムズ、訳:まつおかきょうこ、福音館書店)を紹介します。

なんといっても絵が美しいです。

うさぎの毛のふわふわした質感が、非常にリアルな存在感を放っています。

広い森に棲む、仲良しのしろいうさぎとくろいうさぎ。

二匹は毎日、楽しく一緒に遊んでいました。

 

けれども、くろいうさぎは時折かなしそうな顔で物思いにふける様子を見せます。

さっきから、なにを そんなに かんがえてるの?

しろいうさぎが尋ねると、

ぼく、ねがいごとを しているんだよ

いつも いつも、いつまでも、きみといっしょに いられますようにってさ

と、くろいうさぎは打ち明けます。

しろいうさぎは目を丸くしながら、

ねえ、そのこと、もっと いっしょうけんめい ねがってごらんなさいよ

と促します。

くろいうさぎは心を込めて言います。

これからさき、いつも きみといっしょに いられますように!

しろいうさぎは、このプロポーズを受け入れ、二匹は結婚します。

森のうさぎや動物たちが集まってきて、祝福のダンスを踊ります。

 

初めから終わりまで、愛で満たされた物語です。

 

「結婚」とは何かを、子どもにどう伝えるかは意外と難しいもの。

もちろん、行政的な話や動物学的な話を持ち出すのはセンスなさすぎです。

 

子どもにとって一番最初の「結婚」のモデルは両親です。

二匹のうさぎは子どもではありません。

ですからこの絵本を読む子どもは、二匹に自己ではなく、両親を投影します。

 

以前にも書きましたが、絵本の最大の存在価値とは、「この世界は楽しく、美しく、素晴らしいところである」というメッセージを子どもに伝えることです。

そしてそれは、親が子どもに伝えるべきメッセージでもあります。

 

たとえ現実がどうあれ、子どもには「結婚とは、愛し合う二人が『いつも いつも、いつまでも』一緒に、幸せに暮らすこと」なのだと伝えるべきでしょう。

子どもにとって、自分が両親に愛されているかどうかと同じくらい、両親が愛し合っているかどうかは重要な問題だからです。

両親の不仲は、子どもに自分の存在や将来への不安を植え付け、人格形成やその後の人生にまで影響を与えかねません。

極端な意見であることを承知で言えば、子どもの前で夫婦喧嘩をするというのは、虐待の一種だとさえ思います。

 

ちなみに。

この絵本が描かれたのは1965年のアメリカ。

時代背景を考えれば、ちょうど国際連合が人種差別撤廃を宣言したころです。

ですから、この絵本の隠されたテーマは、「白」いうさぎと「黒」いうさぎの、異人種間での結婚についてなのだという見方もできます(作者のウイリアムズさんは否定されていますが)。

 

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絵本の紹介「のろまなローラー」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「のろまなローラー」(作:小出正吾、絵:山本忠敬、福音館書店)です。

以前取り上げた「とらっく とらっく とらっく」と同じ、我が家の息子も大ファンの山本忠敬さんの乗り物絵本。

 

≫絵本の紹介「とらっく とらっく とらっく」

 

初期のころの山本さんは、文は他の作家さんに任せ、絵に専念している作品が多いです。

その絵柄も、こうして見るとずいぶん変化が見られます。

 

お話の内容に合わせるためかもしれませんが、このころの乗り物絵は、後期に比べると精緻さがなく、より擬人化されて描かれています(それでも、ちゃんと車には人が乗っていて、車のみで走ったりはしません)。

しかし、すべての作品を通じて、その乗り物愛だけは揺るぎないのはさすがです。

ローラーが、「おもい くるまを ころがして、ゆっくり ゆっくり」道を直しながら進んでいます。

それを、トラックや立派な自動車、小型自動車たちが、邪魔にしたり、馬鹿にしたりしながら追い越してゆきます。

 

それでもローラーはけっして急がず、丁寧に自分の仕事を続けます。

やがて山道に入ると、さっきローラーを馬鹿にした車たちが、でこぼこ道でパンクしています。

 

ローラーは彼らにやさしく労わりの声をかけ、道を直しながら進みます。

パンクを直した自動車らは、道を直してくれるローラーの仕事の大切さに気付き、さっきの無礼を詫びて行きます。

 

誰もが気づかないようなところで、誰かがやらなければならない仕事を黙々とやる。

褒賞を求めるわけでもなく、人から馬鹿にされても、軽く見られても、やるべきことを、手を抜かずにやる。

ローラーはそんな日本的美徳(現代ではどうか知りませんが)の体現者です。

 

自分に意地悪をした自動車たちが困っているのを見ても、「ざまあみさらせ」なんて思いもしません。

それは ほんとに おきのどく。はやく なおして おいでなさい

と、紳士的態度を崩さないのです。

なんともカッコイイやつ。

 

小出さんの文章は全文通して口ずさみやすいリズムに整えられていて、少々古めかしいセリフ回しも耳馴染みが良く、読み聞かせる側も楽しめます。

 

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