絵本の紹介「ノラネコぐんだん パンこうじょう」


 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日2月22日は、222(ニャーニャーニャー)で「猫の日」です!

 

古典から新作に至るまで、ねこが登場する絵本は数えきれないほどありますが、今回は現在最も注目されている「ねこ絵本」を紹介します。

工藤ノリコさんの「ノラネコぐんだん パンこうじょう」です。

作・絵:工藤ノリコ

出版社:白泉社

発行日:2012年11月20日

 

私も個人的にファンである工藤ノリコさんの大人気シリーズ。

以前の記事で工藤さんの作品の魅力について語りましたので、そちらも併せてご覧ください。

 

≫絵本の紹介「ピヨピヨスーパーマーケット」

 

とにかく、工藤さんのキャラクターは可愛い。

それも、ちょっと他にはない可愛さです。

 

それはやっぱり、あの「顔のパーツ」の力だと思います。

たいていのキャラクターが、横一線の目に、タラコくちびる(クチバシ)。

 

たったそれだけのパーツで、実に豊かな表情を読み取ることができるのです。

これは「へのへのもへじ」並みの発明なのではないかと思います。

ワンワンちゃんの パンこうじょう」を覗いているノラネコぐんだん。

なにやらよからぬことを考えているよう。

 

工藤さん、相変わらず食べ物や小物の細かい描写が楽しいです。

夜中にほっかむり姿で工場に忍び込んだノラネコぐんだん。

自分たちでパンを作って食べるつもり。

 

意外と手際よくやっていますが、ふくらしこを一缶まるごと入れた結果、膨らみ過ぎたパンがかまどを破壊し、工場をふっ飛ばしてしまいます。

 

駆けつけたワンワンちゃんの前に、巨大なパン。

 

ワンワンちゃんはノラネコぐんだんを正座させ、

こんなことをして いいと おもっているんですか

と、なんとも型どおり過ぎて力の抜けるお説教。

 

ノラネコぐんだんも、

いいと おもってません

ニャー

と、絶対反省してなさそうな返事。

 

しかし、ここからがワンワンちゃんの教育(?)流儀。

巨大パンを使って、「パンまつり」を開催。

ノラネコたちはお手伝い。

 

パンを切ったり、サンドイッチを作ったり、結構楽しそうに働いてます。

労働の大変さや楽しさを教え、食べ物を粗末にせず、そして最後は工場の再建設まで、経験主義のまさに「生きた教育」。

 

ノラネコぐんだんの好奇心や興味を、実体験させることで満たしてやるわけです。

 

★      ★      ★

 

このシリーズを読み続けていくと、ひとつの疑問が湧いてきます。

ワンワンちゃんって、何者?

 

パン屋さんかと思っていると、農場主になってたり、お寿司屋さんになったかと思うと、飛行機まで所有していたり。

そのあたりの説明は一切ないんです。

 

実は、工藤さんはかつて4コマ漫画として「ワンワンちゃん」シリーズを連載しており、ノラネコぐんだんも、もとはその漫画のキャラクターだったんですね。

 

掲載されていたのが就職誌だっただけあり、「さすらいの就職犬」という設定のワンワンちゃんは、毎回様々な職種にチャレンジします。

絵本では名前すら出てきませんが、いつもワンワンちゃんと行動を共にしているニワトリ(?)は「マーミーちゃん」というロボットで、小鳥の方は「パッポヒ」というドイツ生まれの鳩時計に住む鳩です。

 

うーん、初めて読んだ時は、ワンワンちゃんとマーミーちゃんが夫婦で、パッポヒがその子どもかと思ってました。

この二人も、よく見ているとそれぞれのキャラクターに合った行動を取っていて面白いですよ。

 

パン屋のお客さんも、漫画にも登場したキャラクターたち。

漫画では、ノラネコぐんだんを始め、ほぼ全員がワンワンちゃんの足を引っ張ることが多いですが。

 

絵本紹介のはずが、漫画紹介みたいになってしまった……。

 

ので、最後にひとつ。

おさるさんが買っている「ねじりパン」の値段はいくらでしょう?

よーく絵本を読み込めばわかるようになっていますよ。

 

推奨年齢:1歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

ワルかわいい度:☆☆☆☆☆

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

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E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「しろくまちゃんのほっとけーき」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

みなさん、今日が何の日かご存知ですか?

今日、1月25日は「ホットケーキの日」なんです(何にでも記念日があるものですね)!

 

というわけで、必然的に(?)今回取り上げるのは「しろくまちゃんのほっとけーき」です。

絵:わかやま けん

出版社:こぐま社

発行日:1972年10月15日

 

「こぐまちゃん」シリーズのスピンオフ的作品でありながら、シリーズ中最も人気が高いというこの作品。

まさに「ホットケーキばかりか主役を食ってしまった」名脇役として絵本界に名高いしろくまちゃん。

 

内容は至ってシンプルで、しろくまちゃんがお母さんとホットケーキを焼き、友達のこぐまちゃんと一緒に食す、というストーリー。

卵を落として割ってしまったり、ボウルの中身をはね散らかしたりといった描写に、子どもが真似をすると苦情も寄せられたとか。

いいじゃないですか、割ったって汚したって、それも子どもにとっては必要なんだから。

単純化された造形、太い線の輪郭、いくつかの色の組み合わせによる鮮やかな色彩は、シリーズ通しての特徴であり、「ちいさなうさこちゃん」シリーズの生みの親・ディック・ブルーナの影響を受けていることは以前の記事で触れました。

 

こむぎこ おさとう ふくらしこ こなは ふわふわ ぼーるは ごとごと だれか ぼーるを おさえてて

このあたりのリズム感は本当に素晴らしいと思います。

このシーンでは見ている子どもが、無意識に絵の中のボウルに向かって手を指し伸ばすしぐさを見せることがあります。

画面に、手伝ってくれるはずのお母さんがいないことも計算のうちでしょう。

 

しかし、この絵本の最大の見どころは、やはり見開きでホットケーキを焼くシーン。

ぽたあん」「どろどろ」「ぴちぴちぴち」「ぷつぷつ」「やけたかな」「まあだまだ」「しゅっ」「ぺたん」「ふくふく」「くんくん」「ぽいっ」「はい できあがり

 

こんな単純化された線と色と言葉で、これほど雄弁にホットケーキの焼けるさまを説明した絵が、他にあるでしょうか。

子どもたちはこのページを食い入るように、いつまでも見つめます。

私もいつまでも見ていられます。

本当に美しいです。

さあ、今日はみんなでホットケーキを焼きましょう。

 

けれども、この大ロングセラーを手掛けたこぐま社の佐藤英和さんは、どうしてこの絵本がそこまで子どもに人気なのか、本当のところはわからないと言っておられます。

子どもの絵本を見る目は確かですが、その法則を大人が発見しようとするのは至難です。

子どもは批評をしませんからね(読むか、読まないかという行動で示すだけで)。

実際、似たような絵で似たような作品を作ったとて、必ずしもロングセラーになるわけではないでしょう。

 

私は、上で述べたような要素がいくつも重なり合って、絵本が唯一無二の芸術作品となったとき、子どもの心を掴むのだと思っています。

それは本当に難しく、磨かれた感性と、注意深さと、根気とを必要とされる作業です。

 

しかし何よりも重要なのは、子どもに対する誠実さであり、敬意だと思います。

流行を追いかけることに慣れた大人が、気安く作ったような絵本が、たとえ一時は子どもの気を引いたとしても、長い間選ばれ続けるということは、けっしてありえないのです。

 

関連記事≫絵本の紹介「こぐまちゃんおはよう」

≫絵本の紹介「ちいさなうさこちゃん

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

ホットケーキ食べたい度:☆☆☆☆☆

 

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絵本の紹介「ピヨピヨスーパーマーケット」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年は酉年。

ということで、新年最初の絵本紹介は、「ピヨピヨスーパーマーケット」を取り上げます。

作・絵:工藤ノリコ

出版社:佼成出版社

発行日:2003年12月

 

「ノラネコぐんだん」シリーズ、「ペンギンきょうだい」シリーズなど、次々とヒット作を生み出し、今、最も人気の絵本作家の一人、工藤ノリコさん。

私も大好きです。

はまっちゃいました。

はっきり言って、この人の絵本は子どものためよりも、自分のために集めてます。

工藤さんの絵本はそのくらい、大人にも面白いのです。

 

この「ピヨピヨ」シリーズは、現在6作品出版されています。

ヒヨコ5兄弟と、にわとり両親の、あったか家族の日常を描いた内容で、これはその一作目。

 

スーパーマーケットへお買い物に来たお母さんとピヨピヨたち。

お母さんが牛乳のタイムセールに飛びついている隙に、自分たちの欲しいものを次々とカートに入れて行きます。

この陳列棚のリアリティがいい。

「これ、絶対あの商品だ!」というパッケージがずらり。

ピヨピヨたちはお菓子ばかりを選んでレジへ向かいますが、すんでのところでお母さんに阻止されます。

手元に残されたのは30円のアメ(みんな知ってるアレですよね)だけ。

不満いっぱいのピヨピヨ。

 

でも、家に帰って、お父さんとお風呂に入り、出てみると……

用意されていたのは、大好きなミートソーススパゲッティで、みんな大喜び!

 

★ ★ ★

 


まずなんと言っても、ピヨピヨたちがキュートすぎる。

初めて見た時は「なんだこのブサイク」と思ったのですが、読んでいるうちにもう、表情も行動も可愛くて可愛くて。

 

そして、画面に無駄なものがない。

陳列棚と同様、描写のひとつひとつにリアリティと必然性があります。

例えば、お母さんがスーパーで買ったものは全部確認できますが、それらはちゃんと食卓に並ぶ料理に必要なものばかりです(翌朝の朝食に至るまで)。

お父さんが持って帰ってきたお花は花瓶に生けられています。

 

また、本編と関係なくとも、スーパーの他の客たちも、それぞれ個性豊かに行動しています。

「買って買って」と駄々をこねる子どもたちとか。

うさぎのお母さんはちゃんとタイムセールの牛乳を買っていますし。

読むたびにそうした発見の楽しみがあります。

 

これらの特徴は、他の工藤さんの作品にも共通するものです。

また、シリーズを通して読むと、どこかに前回の作品からの繋がりが見えたりして、ますます面白いです。

 

さて、ちょっとファンとして好意的に語りすぎました。

もう少し冷静に見てみましょう。

 

子どもへの読み聞かせ、という視点からはどうでしょうか。

この絵本には(他の工藤さんの作品も多くはそうですが)地の文がありません。

セリフのみで、あとは絵を見て想像するしかないので、実は結構読み聞かせが難しい。

子どもが幼ければ、どうしても説明を入れてしまいます。

 

工藤さんは漫画家出身ということもあり、漫画的な表現も目立ちます。

今は親たちのハートを掴むことで人気を博していますが、果たして彼女の作品は後世に残るロングセラーとなりうるでしょうか。

 

しかし、別に絵本は地の文がなければダメ、というものでもありません。

かの有名な「じごくのそうべえ」なども、セリフのみで構成されてます。

 

≫絵本の紹介「じごくのそうべえ」

 

絵柄は漫画的でも、前述のように描写はリアリティがありますし、テーマもオーソドックスです。

そもそも、絵本の重要条件である「絵で物語る」という点に関しては、絵本は漫画とも相通じるものがあります。

もちろん、漫画と絵本は大きく違います。

しかし、日本が世界に誇る文化にまで成長した「漫画」の技法を、古典文化である「絵本」の世界に取り入れるという試みは、日本の現代絵本作家にしかできない実験とも言えます。

そして工藤さんは、絵本の基盤を破壊しないよう、細心の注意を払いながら、そうした作業を行っているように思えます。

それが成功か失敗かを判断するのは、われわれではなく、子どもたちの目に委ねられるべきですが。

 

推奨年齢:3・4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

ピヨピヨの愛らしさ度:☆☆☆☆☆

 


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絵本の紹介「ぐりとぐら」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はいよいよ、みんな大好き「ぐりとぐら」を紹介します。

作者の二人は姉妹。

姉の中川李枝子さんが文を、妹の大村(山脇)百合子さんが絵を担当しています。

誕生から50年以上、21か国で翻訳され、シリーズ累計は2400万部を超えるという、ウルトラロングセラー。

その記念すべき一作目です。

 

ただ、「みんな大好き」とは書きましたが、「みんな」というのは子どもと、そして子どものころにこの絵本を読んだことのある大人を指したつもりです。

 

というのも、子どものころに読んでもらった記憶がなく、大人になってから「ぐりとぐら」を手に取った人からは、この面白さが理解できない、という声が意外に多いのです。

 

まあ、正直、ノスタルジックな気持ちを抑えて、冷静な大人の目で読んでみると、たしかに「なにがおもしろいの?」と思えなくもない。

もっと正確に言えば、「どうして子どもたちはこの絵本がそこまで好きなの?」かが理解できないわけです。

物語は、のねずみ(とてもねずみには見えない)の「ぐり」と「ぐら」が、「おおきなかご」を持って「もりのおくへ」でかけるところから始まります。

 

「このよでいちばんすきなのは」お料理することと食べることの2ひきは、どんぐりやきのこなどを拾って歩いているうちに、とても大きなたまごを発見します。

2ひきは喜んで、このたまごでカステラを作ろうと決めます。

しかしたまごが大きすぎて持ち帰れないので、この場に料理道具を持ってくることにします。

 

やがてにおいにつられて、森の動物たちが集まってきます。

そして完成。

カステラって、こんな食べ物だっけ。

と、一体何人の大人が心の中で突っ込んだことか。

 

出来上がった「かすてら」を、森の動物たちといっしょに残らず食べるぐりとぐら。

「森の動物たち」の顔ぶれは、象、フラミンゴ、ライオン、わに、蟹、猪……。

どんな森だ?

と、一体何人の大人が心の中で突っ込んだことか。

 

そんな大人の目など一切構わず、最後に2ひきは残ったたまごのからで自動車を作って(動力は不明)うちへ帰ります。

 

これでおしまい。

 

大人を拍子抜けさせるのは、この「なんにも起こらなさ」ではないでしょうか。

 

これは他の「ぐりとぐら」シリーズ通しての共通項ですが、この2ひきの物語には「障害」と呼べるほどの事件が何一つ発生しません。

私たち大人はあまりにも「主人公が穴に落ち、そこからどうやって這い上がるか(もしくは這い上がれないか)」という物語の定型に馴染みすぎているので、この予定調和が物足りなく感じてしまうのでしょう。

 

しかし、子どものための絵本にはドキドキハラハラの冒険だけではなく、この「ぐりとぐら」に代表される、安定と調和だけが存在する物語もあります。

そうした物語が子どもたちに向けて発するメッセージは、

「この世界を生きることは楽しく、素晴らしい」

です。

 

子どもの世界というのは、実は大人が考えているほど平和なものではありません。

彼らは自分にまだ人生を生き抜く力が足りないことを、無意識的であれ自覚しているし、周囲の大人に依存しなくては生きていけないストレスに晒されています。

だからこそ、「ぐりとぐら」のように、何の不安も恐れもない、ただ安心と自己肯定だけがある世界を必要としているのではないでしょうか。

 

もちろん、現実世界はカステラのように甘くはありません。

けれども、子ども時代の幸せな思い出が、その後の人生のすべての場面で、いかに重要な「生きる力」となるかは、誰もが実感することだと思います。

 

子どもの心をよく知る映画監督・宮崎駿さんが、「ぐりとぐら」をアニメ化しようとしていたそうですが、この絵本の世界を、どうしても再現できずに断念したという逸話があります(ちなみに、「となりのトトロ」の挿入歌「さんぽ」の作詞は中川李枝子さんです)。

 

また、「ぐり」と「ぐら」の見た目がそっくりで(青い方がぐり、赤い方がぐら)、セリフも交換可能で見分けがつきにくいことについて、絵本作家の長谷川摂子さんは、自著で、初めて友達を認識する3歳前後の子どもの心のありようと関連付けて分析しています。

 

そうしたことを踏まえてもう一度この絵本を見れば、絵本についても子どもの心というものについても、少し違った見方を持てるかもしれませんね。

 

 

蛇足ですが……。

読み聞かせの際、この絵本に出てくる有名な、

「ぼくらのなまえはぐりとぐら♪」

の歌に、どうメロディをつけるかですが、私は

「ごんべさんのあかちゃんがかぜひいた♪」

のメロディが一番うまいこと(?)歌えたように思います。

 

オリジナルを作曲できるセンスがないので。

 

 

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