【絵本の紹介】「ゆき」【221冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

雪の絵本というのはいくらでもあります。

そのくらい、子どもにとって雪は特別なものなのでしょう。

 

触れると消える、一片の雪。

その美しい唯一無二の結晶体は、この世界の神秘の象徴のようです。

 

今回はシュルヴィッツさんの「ゆき」を紹介します。

作・絵:ユリ・シュルヴィッツ

訳:さくまゆみこ

出版社:あすなろ書房

発行日:1998年11月15日

 

大自然の一瞬の変化を捉えた傑作「よあけ」と同じ作者による絵本ですが、絵のタッチはずいぶんと違います。

 

≫絵本の紹介「よあけ」

 

浮世絵を意識したような「よあけ」に比べ、この「ゆき」は全体にデフォルメされたアニメーションのように、輪郭のはっきりした、可愛くて楽しいタッチになっています。

空から降ってきた一片の雪を見つけた、犬を連れた少年。

ゆきが ふってるよ

と、嬉しそうに言います。

 

でも、町を歩く大人たち(ひとりひとりが実に個性的です!)は、大した雪じゃないと取り合いません。

ラジオもテレビも、

ゆきは ふらないでしょう

 

しかし、そんな大人たちを尻目に、雪は「あとから あとから」降ってきて、ついに町を白く覆います。

雪が深くなるにつれ、大人たちは姿を消していき、本屋の看板から「マザーグース」のキャラクターたちが飛び出してきて、男の子と踊り出します。

すっかり町が雪をかぶった後、灰色だった空は晴れ上がります。

真っ青な空と白い雪の美しいコントラストが見事です。

 

★      ★      ★

 

とにかく絵を楽しむべき絵本です。

最後の鮮やかな転換は「よあけ」に通じるものがあります。

 

そして、あえて不均一な線で描かれた町並みをよく見ると、登場人物のほとんどがすでに最初から描き込まれているのがわかります。

くろひげの おじいさん

ひょろながぼうしの おじさん

おしゃれがさの おばさん

ラジオを抱えた人、二人一組のようなヒゲのおじさんたち……裏表紙での彼らの行進は非常に愉快です。

 

主人公の男の子は、特に何か雪遊びをするわけではなく、ただ純粋に雪が降り積もったことを喜びます。

マザーグースの世界のキャラクターと楽し気に踊る男の子と、寒そうに肩を縮め、俯いて歩き去る大人たちとの精神の対比は、灰色の空と、輝く青空によって表現されています。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

キャラクターデザインの秀逸度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ふくろうくん」【220冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「おひとりさま」という言葉をよく耳にする昨今。

カラオケでも焼肉でも、一人で楽しもうというある意味前向きな考え方。

 

今回紹介するのは究極の「一人上手」絵本「ふくろうくん」です。

作・絵:アーノルド・ローベル

訳:三木卓

出版社:文化出版局

発行日:1976年11月20日

 

作者は我が家の息子にも大好評の「がまくんとかえるくん」シリーズで有名なアーノルド・ローベルさん。

訳文も同じ三木卓さん。

5話からなる短編集という構成も同じ。

 

≫絵本の紹介「ふたりはともだち」

 

でも、温かい交流が描かれる「がまくんとかえるくん」とは違い、この「ふくろうくん」は孤独です。

脇役さえ登場しません。

最初から最後まで独りぼっち。

 

そんな孤独をユーモラスに楽しむふくろうくんの優雅な日常……と言えば聞こえはいいのですが、彼の思考と行動ははっきり言ってかなり病的です。

家のドアを叩く風の音を、「ふゆくん」が入りたがっているんだな、と解釈して迎え入れてやった結果、吹雪に家じゅうをめちゃくちゃにされてしまう「おきゃくさま」。

 

布団の中で盛り上がる自分の足を「へんな こんもりくん」と呼び、その正体を探して半狂乱になる「こんもり おやま」。

悲しいことを次々に思い浮かべ、その涙でお茶を沸かす「なみだの おちゃ」。

 

一階と二階、異なる空間に同時に存在することはできないか」という哲学的思索に取り憑かれて、猛スピードで階段を上り下りする「うえと した」。

夜空に浮かぶお月様が、ずっと自分についてくる「いい ともだち」だと感動してみせる「おつきさま」。

 

分厚い本を手に、蝋燭をかがける表紙絵のふくろうくんの目が、ちょっぴり怖く思えるのは私だけでしょうか……。

 

★      ★      ★

 

普通なら考えもしないようなことを、どこまでも深く考える哲学的姿勢。

そして突飛な行動を大真面目にやってしまう可笑しさは、「がまくん」にも通じるものですが、「がまくん」が「かえるくん」によっていかに救われているか、この絵本を読むとよくわかります。

 

これは「一人を楽しむ」なんて生易しい表現では追いつかないと思いますが、しかし一方、誰だって一人の時には、こういう妙なことを考えたりしてるのかもしれません。

 

他人の前で同じことをやってたら、すぐに病院に連れて行かれそうなふくろうくんですが、「一人だからこそ」気兼ねなしにこういう「遊び」ができるとも取れます。

 

ふくろうくんが病的に思えるのは、この絵本において彼が「子ども」としては描かれていない(私の印象ですが)からです。

もしふくろうくんが子どもなら、こういうどこまでも広がってしまう、まとまりを欠いた思考にふけったり、実際に行動したりすることはごく自然でもあります。

 

けれど、ふくろうくんは一人で生活している点で子どもではない。

ゆえに「変人」に見えてしまうわけです。

 

しかし、歴史的な哲学者や科学者たちは、このふくろうくんのように、普通の大人がもう考えもしなくなったようなことをどこまでも考え抜くことを止めなかった人々なのでしょう。

彼らはやはりどこか孤独ではありますが、その孤独は崇高な光を帯びてもいます。

 

それは「幼児性」ではなく「童心」を抱いたまま大人になった人間だけが纏う種類の「孤独」であるように思います。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

天才肌度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「だくちるだくちる はじめてのうた」【219冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

相も変わらず、習慣的に絵本の読み聞かせを行っています。

最近は息子の方から「読んで」と言ってくることが少なく、こちらが絵本を選ぶことが多いのですが、気分じゃない絵本を選ぶと即座に却下されてしまいます。

で、つい同じ絵本(鉄板絵本)ばかりを本棚から引き出すことになりがちです。

 

それ自体は全然悪いことではないんですが、もう全文暗記してしまっているような絵本を、眠たい時間に読んでいると、ついつい自動朗読機械のように無感情な読み方になってしまいます。

 

しかし、読んでもらってる子どもの方は日々成長変化しており、いつまでも同じ反応を示すわけではありません。

新しい絵本を与えるばかりでなく、以前はあまり受けなかった絵本を時期を見計らって取り出してみたり、赤ちゃんの頃に読んでいた本をもう一度開いてみたり。

こちらも変化していかなければ、絵本の「旬」を逃してしまいます。

 

今回は「読み聞かせ」の一つの核部分である「音・言葉との出会い」について描かれた絵本を紹介します。

だくちるだくちる はじめてのうた」です。

原案:V・ベレストフ

文:阪田寛夫

絵:長新太

出版社:福音館書店

発行日:1993年11月15日

 

にんげんが うまれる ずっと ずーっと まえのまえ そのまた ずーっとまえに

イグアノドンが いた

恐竜時代を舞台とした、これは詩の絵本です。

 

イグアノドンは さびしかった

だけど あるひ だくちる だくちる おとがした

ちいさな プテロダクチルスが とんできた

 

だくちる だくちるる」と、プテロダクチルスは鳴き声とも唸り声ともつかぬような音を発します。

他には何にも言えません。

 

でも、「イグアノドンは うれしかった」のです。

それはイグアノドンが初めて耳にした「生き物が発する音」だったからです。

イグアノドンは「だくちる」を聞くと「もう どんどん ばんばん」嬉しくなってしまいます。

イグアノドンにとって「だくちる」は「はじめての うた」だったから。

音の溢れる世界の中で初めて耳にした、生命のこもった「うた」だったのです。

 

★      ★      ★

 

この絵本の原案となっているのはロシアの詩人ベレストフさんの「はじめての歌」という詩です。

それを、童謡「さっちゃん」などの作詞を手掛けた阪田寛夫さんが文にし、長新太さんが絵を描いて作り上げたという、なかなかに豪華なコラボ絵本です。

 

長新太さんの描くイグアノドンはシルエットのみのデザインなのですが、感情と共にシルエットの色が変化し、その喜びが生き生きと伝わってきます。

 

太古の地球で独りぼっちの存在だったイグアノドン。

彼の壮絶な孤独感はいかばかりだったでしょう。

初めて他者が発する音に触れた時の喜びはいかばかりだったでしょう。

 

人間も同じです。

この世界に生まれ落ちた時、赤ちゃんはどれほど不安なことでしょう。

少しでも身近な人間の声を聞きたくて、赤ちゃんは声を振り絞って泣きます。

 

母親の声を聞くと安心します。

この世界で生まれる無数の音の中から、赤ちゃんは母親の声を聴き分けることができます。

それからわずか3年足らずで、赤ちゃんは日常会話レベルの言語を学習してしまうのです。

 

人間が「言葉」を希求する強さは計り知れないものです。

人間と他の動物を隔てるものは思考する点ですが、思考はそもそも言葉がなければできません。

言葉が貧弱だと、思考も貧弱になります。

 

子どもが最も言葉を求める幼少期に、できる限りたくさんの、美しい音楽的な言葉を聴かせてあげることが重要なのです。

これはいくら言っても言い足りないくらい、大切なことです。

 

絵本の大きな存在意義もそこにあります。

 

この「だくちるだくちる」は、声に出して読むべき絵本です。

今の日本では残念ながら詩というものの価値がほとんど見捨てられてしまっていますが、絵本においてはまだかろうじて生き残っていると思います。

 

そういうわけで、初心に帰って、今夜も絵本を読み聞かせたいと思います。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆

音読向き度:☆☆☆☆☆

 

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