【絵本の紹介】「11ぴきのねこふくろのなか」【348冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

絵本と他の本との違いは色々ありますけど、特徴のひとつとして、ロングセラーの多さが挙げられます。

通常、一般的な書籍だと、いくらベストセラーだと騒がれても1年(それでも長いかな)もすれば新しいものに取って代わられるのが定めです。

ことに近年は消費サイクルも早まっているので、作者も出版社も次から次へと手を変え品を変え、何とか新しいヒットを生み出そうとしています。

 

これが絵本になると、いまだに何十年も前の作品が本屋の店頭に並んでいたりします。

いかに時代が変わろうとも、子どもが喜ぶものはそう変わらないのでしょう。

 

もちろん、それだけ支持されるロングセラー絵本を描くことは大変に難しい作業です。

大人相手なら宣伝効果によって本が売れることもあるけど、子どもにその手は通じないからです。

なんかわかんないけど、話題になってるから

広告で見たから

読んでおかないと恥をかくから

という理由で本を読む子どもはいません。

 

彼らの価値判断は恐ろしく単純で、作り手にとっては冷徹でさえあります。

「おもしろいか、おもしろくないか」それだけです。

 

ただ、実際に絵本を購入するのは大人たちですから、宣伝が無駄というわけではありません。

絵本を選ぶのって難しいですからね。

作る側もついつい、購買者である親たちに媚びた内容の作品に傾いてしまうこともあるでしょう。

 

しかしながら長い目で見た場合、そうした作品が生き残り続けるということはありません。

読者の大多数が子どもである以上、いずれはおもしろくない作品は淘汰されます。

 

そういう厳しい業界で、誕生から50年以上も変わらず読まれ続けているロングセラー「11ぴきのねこ」シリーズ

今回は4作目「11ぴきのねこふくろのなか」を紹介しましょう。

作・絵:馬場のぼる

出版社:こぐま社

発行日:1982年12月5日

 

このブログでも発行順に取り上げていますので、過去記事もぜひ読んでいただければと思います。

 

≫絵本の紹介「11ぴきのねこ」

≫絵本の紹介「11ぴきのねことあほうどり」

≫絵本の紹介「11ぴきのねことぶた」

 

「11ぴきのねこ」シリーズが真に凄いのは、全6作品すべてが違うおもしろさを持っている点。

1冊のロングセラーを生み出すことも大変なのに、そのクオリティを維持したまま作品をシリーズ化することがいかに困難か、想像を絶するものがあります。

 

前作「11ぴきのねことぶた」から6年。

今作のゲストキャラはこれまでと違い、明確な「敵」として登場します。

その名も「ウヒアハ」。

なんで馬場さんがこんなけったいな名前を付けたのかは後述しましょう。

 

11ぴきのねこはリュックを背負って遠足に行きます。

色々あったけど、相変わらず楽しくやってるようです。

 

道中、様々なことを禁止した立札に遭遇しますが、ねこたちはそれらをことごとく無視します。

「花をとるな」「橋を渡るな」「木に登るな」。

禁止されるとやりたくなるのが業というもの。

シリーズ通してのテーマになっている人間心理はここでも見事に描かれています。

リーダーであるとらねこたいしょうも、形だけみんなを制止するけど、ちゃっかりおんなじ行動をしてるところがまた深い。

 

ねこたちはお弁当を食べた後、また妙な禁止書きを見つけます。

ふくろにはいるな」。

その脇には11ぴき全員が入れるくらい大きな袋が。

 

もはや禁を破ることに躊躇を覚えなくなっている11ぴきは袋の中に潜り込みます。

ウヒヒ、アハハ……

笑い声と共に袋の口が縛られ、11ぴきはまんまと生け捕られてしまいます。

罠を仕掛けたのは「ウヒアハ」という「ばけもの」。

巨大で毛むくじゃらで頭には角、尻尾にはリボン、肩からはポシェットという、何とも言い難い造形。

11ぴきは山の上のウヒアハの城に強制連行され、そこで奴隷のように労働させられます。

重たいローラーを引いて運動場を作らされる11ぴき。

割と怖い図です。

 

夜は地下牢に入れられ、昼は労働。

一度は絶望しかかる11ぴきですが、知恵と勇気で逆境に立ち向かいます。

 

彼らが立てた作戦は、そもそも自分たちを陥穽に落とした例の人間心理を利用したもの。

わざと楽しそうに歌いながら元気よくローラーを引いて見せます。

ウヒアハは自分もやってみたくなって、ねこたちからローラーを取り上げます。

 

その隙に11ぴきは姿をくらまします。

気付いたウヒアハが追いかけてくると、大きな樽に「たるにはいるな」の文字。

わかったぞ、なかにかくれてるな?

しかしこれが11ぴきの罠。

隠れていた11ぴきが飛び出し、樽ごとウヒアハを谷底に突き落とし、大勝利。

 

晴れて自由の身になったねこたちは帰り道、道路に「わたるな」の立札を見つけてドッキリ。

今度はちゃんと歩道橋を渡るのでした。

 

★      ★      ★

 

大変な経験をすることで、珍しく、というか初めて「学習」する11ぴき。

1作目からほとんど変わらないようでいてちゃんと成長しているところを見せます。

 

このお話を「ルールを守らないと因果応報、ひどい目に遭うよ」という教訓として読むこともできるし、それも間違いではないのですが、私はそれよりも11ぴきの「成長」そのものに目を向けたいと思います。

 

彼らが何を学び、どういう成長を遂げたのかと考えると、単純に「規則を守りましょう」という道徳を身に付けたという話ではないように思うのです。

ウヒアハとの対決なんか、なかなかの頭脳戦ですが、そこにこそ11ぴきの成長の中身が描かれています。

 

何度も触れていることですが、11ぴきはとらねこたいしょうを除き、個体識別ができません。

彼らの自我は「集団」に属しており、「個」としての自我は(まだ)芽生えていません。

「みんなでわたれば、こわくない」。それが11ぴきの幼児的無責任さの理由です。

 

彼らにとって重要なのは自分の属する狭い集団内での判断基準なのであって、「外なる世界」にはさして興味がありません。

だから立札や紙に書かれた文字を自分の属する世界での読み方に従ってしか読みません。

 

それが11ぴきを窮地に陥れるのですが、一方、そういう心理を逆手に取った罠を仕掛けたウヒアハも、自分がまさか同じ手を食うとは思いもしなかったのです。

ウヒアハもまた、「たるにはいるな」という文字を「自分の世界内での読み方」に従って読みます。

「自分に理解の及ぶ狭隘な世界」でのみ生きる者は、それゆえに敗北の道を辿るのです。

 

彼らの明暗を分けたのは「自分の属する世界」から「外なる世界」へと「橋を架ける」ことができたかどうかです。

11ぴきは「想像力」によってその架橋に成功します。

実に暗示的な物語です。

 

だから、ラストシーンで歩道橋を渡る11ぴきは、「規則に従わないとひどい目に遭う」ことを学習したというよりも、道路に掲げられている「わたるな」の立札に、「自分たちが理解しえない意味があるのかもしれない」という想像力を働かせたのだと読む方が適切だと思います。

 

その想像力を「知性」と呼ぶのです。

11ぴきは知的成熟への階梯の、最初の一歩を踏み出したのです。

 

画集「馬場のぼる ねこの世界」で、馬場さんが「ウヒアハ」の由来について語っています。

もとは馬場さんが自分の娘さんたちを脅かすときに作り出したキャラクターなのだとか。

ただ、小さい子に後々まで恐怖が残ってはいけないと考えた馬場さんは、成長すれば馬鹿馬鹿しく思えるよう「ウヒアハ」という滑稽な名前を付けたそうです。

 

子どもの成長、絵本の制作、それらに細かな気配りをする作者が、定型的「教訓」絵本など描くわけがないと私は思っているのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

ウヒアハの怖さ度:☆☆

 

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【絵本の紹介】「おばけのバーバパパ」【339冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は誰でも知ってる世界的人気キャラクター「バーバパパ」を取り上げます。

その誕生秘話が読める第一作「おばけのバーバパパ」です。

作・絵:アネット・チゾン&タラス・テイラー

訳:山下明生

出版社:偕成社

発行日:1972年6月

 

誰でも知ってるとは思いますが、それはアニメキャラクターとしての「バーバパパファミリー」であって、絵本作品としては意外と読んだことのない人も多いかもしれません。

けれど、単なる「キャラクターもの」と侮るなかれ。

その秀逸なキャラクターデザインと設定だけではなく、画面構成や物語のテンポにおいても、非常に成功している良作なのです。

 

さて、「知ってるけど意外と知らない」バーバパパ。

まず根本的な事実を挙げますと、バーバパパは私たちが想像するところのいわゆる「おばけ」ではありません。

 

幽霊じゃないし、宇宙人でもない。

突然変異のような、そうでもないような。

 

フランソワ」少年が庭で花に水やりをしていると、地中からバーバパパが誕生します。

文では何も説明はないけれど、絵を見ると地中で少しづつ成長する謎の生命体が確認できます。

 

桃色の綿菓子のようなフワフワの巨体。

フランソワはすぐにバーバパパと仲良くなりますが、フランソワのお母さんはバーバパパは大きすぎて家には置いておけないと言います。

泣く泣くバーバパパは動物園に引き取られます。

自由に形を変えられる能力を持つバーバパパは、檻を抜け出し、他の動物とコミュニケーションを取ろうと模索しますがうまくいきません。

園長に怒られ、動物園からも追い出されます。

 

行き場がなく、途方に暮れるバーバパパ。

その時火事が起こり、バーバパパは自らを非常階段に変形させ、人々を救助します。

さらに動物園から逃げ出したひょうを捕獲。

大活躍が認められ、バーバパパは町の人気者になります。

晴れてバーバパパはフランソワの家に戻り、フランソワのお父さんが作ってくれた家に住むことになります。

 

その後もバーバパパは公園で色んな遊具に変形して子どもたちと遊ぶのでした。

 

★      ★      ★

 

作者のアネットさんとタラスさんは夫婦です。

バーバパパ 」とは仏語で「パパのヒゲ」転じて「わたあめ」を差す言葉だそうです。

邦題に「おばけの」と加えたのは訳者の山下明生さんで、あの藤子不二雄の漫画を意識したのだとか。

 

この作品が世界中で爆発的人気を得た理由は、何と言ってもバーバパパのメタモルフォーゼ能力の楽しさ・痛快さでしょう。

雲のように水のように自由自在に姿を変えられるバーバパパは、人間の空想力を可視化したようなキャラクターです。

 

その視点から読むと、バーバパパが異端視され、迫害されるのは「自由で柔軟な想像力」に対する人々の冷たい目線を現わしているとも取れます。

しかし結局のところ、社会は想像力によって支えられているのです。

 

想像力という能力の個人差について、現代社会はほとんど黙殺しています。

勉強にしろスポーツにしろ、学校教育は数値化できるもの・可視化できるものだけを評価しています。

しかしその一方で「見えない能力」の差は、もはや埋めることが絶望的に困難なまでに広がっているように感じます。

 

人気シリーズ化された「バーバパパ」は、結婚し、家庭を築き、その活躍はさらに広域に及んでいきます。

やがては環境問題や教育問題などに警鐘を鳴らす存在となっていくのは、そのキャラクター性から考えればごく自然なことなのかもしれません。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

眉毛なのかまつ毛なのか度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「キスなんてだいきらい」【330冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年2月に87歳で亡くなられた絵本作家、トミー・ウンゲラー(アンゲラー)さん。

彼の作る独創的な絵本作品の数々は、世界中で支持されました。

 

ウンゲラーさんの凄みは扱いづらい特殊な題材(犯罪者、異星人、ヘビ、タコ、人喰い鬼……)を次々に取り扱いながら、まったく失敗しないところでしょう。

同時に、大人がギョッとするような過激で辛辣な鋭い風刺性を持ち合わせているのに、それを絶妙なさりげなさで絵本の中に溶け込ませてしまっている点も彼ならではのセンス。

 

本来なら頭の固い大人たちが怒り出しそうな作品も、ウンゲラーさんの筆にかかれば何となく黙ってしまいます(本当に黙ってたかどうかは知りませんけどね)。

 

今回はウンゲラー作品の中でも個人的に最もお気に入りの一冊を紹介しましょう。

キスなんてだいきらい」です。

作・絵:トミー・ウンゲラー

訳:矢川澄子

出版社:文化出版局

発行日:1974年3月20日

 

今度は不良が主人公。

「いたずらっこ」というレベルではなく、不良です。

それもカッコイイ不良。

ウンゲラーさんの題材選びが独特っていうのはこのへんです。

絵本で扱いづらい不良少年を持ってきて、喫煙シーンまで描いちゃう。

 

この主人公のねこのパイパーくん、年齢は不明です。

中学生くらいかもしれないけど、いたずらの内容が割と子どもっぽいから、もしかしたら小学校高学年かも。

「母親の愛情が煩わしく感じ始める思春期の少年」の物語なんですけど、登場人物のセリフがいちいちウィットに富んでいて、映画みたい。

これは一つには訳者の矢川さんの力によるものかもしれません。

 

パイパーのお母さんのポー奥さんは息子にべったりで、いつまでたっても坊や扱いするタイプの女性。

朝は息子をキスで起こします。

そんなお母さんが嫌でたまらないパイパー。

せっかく おとなぶってるのに すぐ じゃまして、こまらせるんだ」だそうです。

 

お父さんはもう今では絶滅種となった威厳ある家長タイプ。

妻と息子のいさかいを、一言で黙らせます。

 

そして後で息子と男同士の会話。

おれの おふくろも おれの おやじの おふくろも そんなふうだった。まあ、いいこに なってて やれよ

渋い。

 

さて、学校でもパイパーは有名な乱暴者。

けど成績は優秀。

ただの頭の悪い不良とは違うわけです。

 

休み時間に不良仲間のジェフと喧嘩になります。

このシーンがまた、ぬるくない。

ジェフの 左目は はれあがり、パイパーの 左耳は ちぎれかけ、どくどく ちが とまらない

ここまで徹底的。

 

そして、

ひでえ ざまだな。まあ、いっぷくしろよ

と、ジェフが葉巻とライターを取り出して仲直り。

 

パイパーはこれもまた濃いキャラクターの看護婦のクロットさんに耳を縫い付けられ、包帯でぐるぐる巻きにされます。

痛そう。

 

昼休み、息子をランチに連れ出そうと学校へやってきたポー奥さん。

息子のひどい姿を見て、息も止まらんばかりに動転し、キス責め。

かわいい かわいい ぼうや どうして そんな めに あったの? はやく おいしゃさまへ、びょういんへ!

 

仲間の前で恥をかかされ、パイパーは激怒します。

ひとまえで キスするなよ。キス。なんでも キス。いやなんだ。きらいなんだ

この騒動を聞いていたタクシーの運ちゃんが、

おふくろさんに あんなこと いうもんじゃない。はずかしいと おもえよ

そこでポー奥さんも怒りが湧いてきて、

そうよ。まったくだわ

と初めて息子にビンタします。

 

気まずい昼食の後、パイパーは学校からの帰り道で花屋に寄り、黄色いバラを買います。

そして家に帰って、もう何でもない様子で振る舞っている母親にバラを贈ります。

まあ きれい、びっくりしたわ。これ あたしに くれるの?

そうだよ。でも ありがとうの キスだけは ごめんだ

そこで二人ともにっこり。

 

★      ★      ★

 

「本当はお母さんが大好きなんだけど、うまく表現できないでいる息子」の物語、というような書評を見ますけど、それはちょっと違うような気がします。

パイパーは本気でお母さんから離れたがっています。

憎いわけじゃないし、本当は感謝しなければならないこともわかっている(頭はいいから)けど、それでもどうしても、母からの愛情を遠ざけたい。

 

これは別に特殊な感情ではなく、思春期の、特に男の子は多かれ少なかれ共感できる気持ちでしょう。

誰が悪いわけでもなく、少年が大人になるために通らざるを得ない道なのです。

 

早く大人になりたくて、気分はもう一人前の男で、仲間たちの中ではそう振る舞っているけれども、家庭ではそうはいきません。

そこではどうしても子どもとしての役割を与えられます。

その分裂に子どもの自我は堪えられないわけですが、かと言って、実際にはまだ大人の庇護下でしか生きられない現実も見えています。

結局彼に残された自由は反抗的な態度を取ることぐらいなのです。

 

「いいこに なってて やれよ」という父親の言葉のように振る舞えるのは、大人になってからです。

母親の呪縛(と感じているもの)から逃げ出して、そしてそんなものに囚われなくなってからもう一度戻ってきて、その時初めて母親と正常な関係が持てるのです。

 

母親に逆らえないのも、逆に反抗するのも、形は違えど「マザコン」です。

母親を一人の人間として客観的に見れるようになるまで、すべての男性はマザコンなのです。

 

しかし、最近では母と息子の関係性も時代と共に変化してきたような気もします。

たまにですが、母親と手をつないで買い物に行く高校生くらいの男の子を見かけるんですね。

いい悪いでなく、私だったら絶対できなかったと思います。

少年の成熟が遅くなったのか、それとも早くなったのか、興味深いところです。

 

うちの息子は現在のところ母親が大好きで(その割によくケンカしてますけど)、恥ずかしげもなくイチャイチャしてますけど、やがてはパイパーくんのようになるのでしょうか。

それとも、ずっと今のままでしょうか。

いずれにせよ、妻はポー奥さんとはまるで違う性格ですので、息子が離れてくれると喜ぶだけだと思いますが。


テキストばかり褒めましたけど、絵の方ももちろん楽しみがたくさんある作品です。

パイパーがトイレで読んでる漫画、朝食の席で自分が曲げたフォークを隠すパイパー、黒板の数字、町の人々……。

これらはテキストに登場しない部分で、絵を見なければわからないようになっています。

やっぱりウンゲラーさんは名手であるとため息が出ますね。

 

関連記事≫絵本の紹介「すてきな3にんぐみ」

≫絵本の紹介「へびのクリクター」

≫絵本の紹介「月おとこ」

≫絵本の紹介「ゼラルダと人喰い鬼」

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

会話のセンス度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ロッタちゃんとじてんしゃ」【323冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

はじめて自転車に乗れた日のことを覚えていますか?

私は今でもはっきり覚えてます。

息子は6歳に近い5歳ですが、まだ自転車には乗れません。

というか、自転車そのものがない。

 

公園なんかでよその子が小さい自転車(ペダルのないやつ。正式名称不明)に乗ってたりすると、息子は近づいて行ってちょっかいを出します。

ちょっと借りて練習させてみますが、練習嫌いの息子はすぐにやめてしまいます。

ちなみに、三輪車はあったけどまったくと言っていいくらい乗りませんでした。

何回教えてもペダルをうまく漕げないんですね。

それもあってずっと買わなかったんですが、そろそろ買ってやろうかしら。

 

今回紹介するのはスウェーデンの世界的児童文学者・リンドグレーンさんの「ロッタちゃん」シリーズより、「ロッタちゃんとじてんしゃ」です。

作:アストリッド・リンドグレーン

絵:イロン・ヴィークランド

訳:山室静

出版社:偕成社

発行日:1976年4月

 

リンドグレーンさんは「長くつ下のピッピ」という人気シリーズの作者でもあります。

この前、「長くつ下のピッピ展」に行ってきました。

 

これは絵本ではなくて児童書なんですが、息子に読んでやると大ハマリして、今でもお気に入りの作品です。

「ピッピ」の魅力(世界一強くて、大金持ちで、一人暮らしで、学校にも行かない)を語り出したら長くなり過ぎるので、ここでは触れません。

一度読んでみて欲しいと思います。

 

「ロッタちゃん」はピッピのような超人ではなく、ごく普通の幼児なんですが、その言動の痛快さはピッピにも劣らないものがあります。

 

兄のヨナスと姉のマリヤが自転車に乗っているのを見て、三輪車しか持ってないロッタは内心腹立たしくてなりません。

自分も同じように自転車に乗りたい、乗れるはずだ、と考えます。

でも、周りからは「おまえは ちいさすぎるからな」と言われてしまうのです。

自尊心の強いロッタは、実に良からぬ計画を企てます。

お気に入りの「ぶたぐま」のぬいぐるみ「バムセ」にだけはその計画を打ち明けます。

 

あたい、一だい かっぱらうつもりよ

 

どこでかっぱらうつもりかというと、仲のいい「ベルイおばさん」の物置からです。

そこに古い自転車があることをロッタは知っていたのです。

 

5歳の誕生日の日、やっぱり自転車はもらえなかったロッタはベルイおばさんの家に行きます。

ベルイおばさんからは素敵な腕輪をプレゼントされます。

ロッタは喜びますが、それはそれとして計画は実行に移すのでした。

ベルイおばさんが昼寝してる隙に、ロッタは自転車を盗み出します。

大きすぎる自転車に四苦八苦しますが、どうにかサドルにまたがります。

 

しかし、坂道を走り出した自転車を止めることができず、ロッタはベルイおばさんの家の垣根に突っ込んで怪我をしてしまいます。

あたいの たんじょうびなのに ちが でたあー!

 

ベルイおばさんに手当してもらいながら、ロッタは、

でも あたい、ほんの ちょっとのあいだ ぬすんだだけよ

と言い訳。

 

そしてせっかくもらった腕輪まで失くしてしまったことに気づいて、泣きわめきながら帰ります。

兄さんと姉さんから説教されて、ロッタは「あんたたちには くちを きくのも いやよ」とふくれっ面。

 

やがて父親が帰ってきますが、彼はロッタにぴったりの小さな赤い自転車を持って帰ってきてくれたのです。

大喜びで自転車に乗るロッタ。

そしてベルイおばさんは腕輪を見つけてくれます。

 

ご機嫌で自転車を乗り回すロッタですが、兄の真似をして両手を放して転び、兄に対して怒ります。

でも内心では、自分だって同じように手を放して乗れるはずだ、とロッタは考えているのでした。

 

★      ★      ★

 

花びらが舞う絵が印象的です。

「ピッピ」も「ロッタ」もリンドグレーンさんの描く主人公は、子どもでありながら大人の世界に堂々と立ち向かい、自己主張をし、思うままに行動します。

 

もちろん子どもですから、彼女らの行動と主張は大いに自己中心的です。

理屈や道徳ではなく、子どもたちは自分の中にある何かを守ろうと抵抗します。

禁止し、矯正し、従わせ、コントロールしようとするすべての大人たちに対し、子どもたちは抵抗します。

 

リンドグレーンさんはそんな子どもたちを、一人の人間として認め、その幼い自尊心を傷つけないように心を配ります。

大人にとって都合のいい「いい子」しか出てこないような物語を、子どもたちはその鋭い感性ではねのけます。

 

ロッタの行動は、良識的な大人が見れば眉をひそめるようなところもあります。

それでも、今すぐにその行動の道徳的良否を教え込むことが必要なのではありません。

何故なら、子どもたちは平気でこれまでの自分を超えていけるからです。

 

これでも おまえは、きょうは いやな たんじょうびだって、おもうかい?

という兄の質問に、ロッタはあっさりと、

あら そんなこと、あたい おもったこと ないわよ

と言い返せるのです。

 

過去の行いに罪悪感を抱かせることで子どもたちを「教育」することは意味がありません。

彼らはいつでも「今、ここ」を生きているからです。

 

「ロッタちゃん」シリーズは映像化されています。

ロッタ役の女の子がめちゃくちゃに可愛いので、必見です。

特にふくれっ面が。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

庭のブランコ羨ましい度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「時計つくりのジョニー」【307冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

息子がもっと小さかった頃、ほとんど毎日のように何かを「作って!」と言われ続けていました。

何かとは、たいてい電車などの乗り物のおもちゃでしたが、中には変なリクエストもたくさんありました。

 

もともとはブロック遊びから始まったんですが、妻が紙工作で新幹線を作ったのがきっかけになり、鉄道図鑑を前にして何十種類となく作るようになりました。

私はあまり工作が得手ではなかったんですが、だんだんと凝るようになってきて、磁石で連結させたり、合体させてロボにしたり、自分でも割と楽しむようになりました(すぐ壊されることもあるけど)。

 

そうするうちに、日常生活や仕事においても、何かが必要になった時、まず「自分で作れんかな」と考えるようになってきました。

今までは出来合いの製品を買うのが当たり前だったけど、自分で作った方が細部まで自分好みに設定できます。

 

もちろん手間暇はかかりますし、色々と考える必要もあります。

しかし、考えてみれば今まで私が「何かを作ること」が苦手だったのは、手先の器用さ以前に「面倒だから」と考えることそのものを放棄していたせいかもしれません。

 

頭の中だけの知識ではなく、実際に行動して見ると様々な気づきがあり、失敗があり、その過程で実にたくさんの学びがあります。

知識、計算力、想像力などを総動員しなければ、もの一つ作るだけでも、なかなか上手くはいきません。

子どもの調和的な発達のためには、何でも作らせることは非常に有用だと思います。

 

さて、今回紹介するのは私など足元にも及ばない天才DIY少年の物語「時計つくりのジョニー」です。

作・絵:エドワード・アーディゾーニ

訳:阿部公子

出版社:こぐま社

発行日:1998年7月1日

 

エドワード・アーディゾーニさんは、こぐま社の創業者である佐藤英和さんがこよなく愛する絵本作家です。

少し長めのお話ですが、展開が気になってぐいぐい読めます。

 

基本的に引いたアングルの構図を多用し、人物の表情をはっきりとは描かないアーディゾーニさんのいつもの手法。

テキストの流れとは別にフキダシによるセリフが用いられているのも特徴です。

漫画的と言うよりも、映画のワンシーンを切り取ったような印象を受けます。

 

手先が器用で、暇さえあれば何か作っているという少年・ジョニー。

お気に入りの本は「大時計のつくりかた」。

話の筋から逸れますが、私はここのカットが大好きです。

本を読む子どもの姿が好きなんですが、椅子が体に合っていないのを、分厚い本を敷くことで調節してるリアリティ。

本を座布団にしてもいいのは本好きの子どもだけ。

 

さて、ジョニーは自分で大時計を作ろうと思いつきますが、両親も学校の先生もまるで本気にしてくれないばかりか、心無い言葉を浴びせて子どものやる気の芽を摘もうとします。

 

しかし、唯一の理解者である友達のスザンナに励まされ、ジョニーは大時計作りに着手します。

材料をそろえるだけでも一苦労。

鍛冶屋のジョーの仕事を手伝ったりして、どうにか必要なものを集めます。

 

けれどもいじめっ子に材料を取り上げられ、スザンナの助けでそれを取り戻しても、家で仕事を始めると父親に邪魔されそうになったり、試練が続きます。

 

それでもジョニーはへこたれず、ついに大時計を完成させます。

その見事な出来栄えに、両親も先生も、そしていじめっ子たちまでもがジョニーを見直します。

周囲の理解と尊敬を得たジョニーは、ジョーとスザンナと一緒に時計製造業を始めることになるのです。

 

★      ★      ★

 

小さな主人公が苦難を乗り越え、華やかに成功を収め、周りから一目置かれる存在になる。

絵本の王道といえば王道ストーリーなんですが、ジョー以外の大人が酷すぎて、吐き気を催すレベルです。

 

好きなことに夢中になる子どもをつかまえて、大勢の前で「おばかさん」呼ばわりする先生とか、「ばかなこと」をやめて家の手伝いをしなさい、という親とか。

最後は大団円とは言うものの、よくこんな大人に囲まれた環境でジョニーのような優秀な子どもが育ったなと感心します。

 

まあ、こういう大人が当たり前の時代もあったのかもしれません。

だから、現代を生きる私たちも、「あんなひどい親ばかりの時代もあった」と回想される時代が来るかもしれませんね。

 

ちなみにこの絵本の献辞は「まごのスザンナに」ですから、ジョニーを支えるスザンナは、作者の孫娘がモデルになっているのでしょう。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

親と教師の教育力度:☆

 

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