【絵本の紹介】「キャベツくんのにちようび」【383冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

熊本ではまた豪雨災害で大変なことになっているようですね。

大阪でも今日は朝から雨です。

今年は梅雨が長い気がしますが、この湿度で気温まで上がってきたら、マスク必須な今の生活がきついものになりそうです。

学校での熱中症も心配だし。

 

さて、なんとなく重苦しい空気を吹き払うような楽しい絵本を紹介しましょう。

久々登場「キャベツくん」シリーズより「キャベツくんのにちようび」。

作・絵:長新太

出版社:文研出版

発行日:1992年5月20日

 

このブログで「キャベツくん」を紹介したのは3年以上も前ですね。

いやあ、ほんとに久々。

 

≫絵本の紹介「キャベツくん」

 

ナンセンスの神様・長新太さんの真骨頂ともいうべきシュールなシリーズですが、なんだか意味は分からなくても読むと心が晴れやかになります。

キャベツを擬人化した「キャベツくん」と、ことあるごとに彼を食べようとする困ったちゃんの「ブタヤマさん」の掛け合いはここにしかない独特の味わい。

 

キャベツと豚といえばトンカツを連想しますが、ここではキャベツが主役。

そして「ブタヤマさん」というこのネーミングセンスね。

長さんらしい。

 

二人が広々とした原っぱで遭遇するなり、ブタヤマさんは「キャベツ、おまえを たべる!」。

そこへ後ろの草むらから大きな手が出てきて、「いらっしゃい いらっしゃい おいしいものが ありますよー」と手招き。

現れたのは三匹の巨大な招き猫。

ブタヤマさんはキャベツくんを食べようとしていたのも忘れて、

キャベツくん はやく はやく」なんて言いながら猫についていきます。

そこに出現したのは見渡す限りの広大なキャベツ畑。

ブキャッ」と驚くブタヤマさんですが、キャベツ畑は一瞬で消えてしまいます。

 

猫たちはさらに二人を手招きします。

おそるおそるブタヤマさんたちがついていくと、今度は……。

画面を埋め尽くす招き猫たち。

わけわかりません。

 

これまたすぐ消えて、さらに誘導が続き、最後は豚の大集団が出現します。

キャベツくんが「ブタヤマさんは ブタを たべるの?

ブタヤマさんは「ブタは たべない。トンカツだって たべない」。

 

三匹の魔法使い?の猫たちは去っていきます。

どうもからかわれただけのようです。

 

キャベツくんはブタヤマさんの手を引き、「ぼくのうちで おいしいものを ごちそうしてあげるよ」。

 

★      ★      ★

 

とにかく憎めないブタヤマさんのキャラクター。

今回もストーリーは意味不明ながら、「ページをめくるたびに画面いっぱいに何かが出現する」という長さんが好んで使う手法は第一作「キャベツくん」と共通します。

 

長さんは空と地平線の絵が大好きで、この絵本はつまりその「どこまでも広がっていく」絵を描きたかったんじゃないかなと思います。

長さんは絵を主体にする作家さんです。

シュールなストーリーを読解しようとばかり頭をひねっていると、一番重要な絵を見逃します。

 

全カットうんと引いたアングルで、空と地平線と山、そしてどこまでもどこまでも続くキャベツ畑。猫と豚の大群。

いい眺めじゃないですか。

とっても心が満たされるような開放的な光景じゃないですか。

まあ、猫はちょっと不気味ですが。

 

あと、両手を前に突き出して、へっぴり腰で並んで猫についていくブタヤマさんとキャベツくんのポーズがコント劇っぽくて愉快です。

読者も一緒に、心の中でこんな姿勢になってちょっぴりドキドキ、ワクワクしながら次のページへ案内されます。

してみると、あのすっとぼけた顔の猫の正体は長さん自身なのかもしれませんね。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

夢に出そう度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「キャベツくんのにちようび

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「ブレーメンのおんがくたい」【382冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

7月に入って、今年も上半期が終わりましたね。

だんだん早くなると感じるのは毎年のことですが、この半年でCOVID-19の脅威が世界中を席捲したことについては「まだたった半年?」とも思えます。

生活の変容に、自分で思っている以上に疲れている方が多いのではないでしょうか。

 

さて、今回の絵本紹介はグリム童話から。

ハンス・フィッシャーさんによる「ブレーメンのおんがくたい」を読んでみたいと思います。

原作:グリム童話

絵:ハンス・フィッシャー

訳:瀬田貞二

出版社:福音館書店

発行日:1964年4月15日

 

スイスきってのデザイナー・フィッシャーさんの作品は以前「たんじょうび」を取り上げています。

 

≫絵本の紹介「たんじょうび」

 

彼の絵本はすべて我が子のために描かれたプライベートなもので、この「ブレーメンのおんがくたい」も長女へのクリスマスプレゼントギフトとしての作品です。

流麗な線と絶妙な動物たちのデフォルメが素晴らしい。

個人的にはロバの耳と、おんどりのプロモーションと色彩が大好きです。

 

お話は原作に忠実で誰もがよく知る内容です。

勤勉に働いてきたのに、老いて衰えたことで主人に冷遇され始めたろばは、家を出てブレーメンの町を目指して旅をします。

そこで太鼓を叩いて音楽隊に雇ってもらおうと考えたのです。

 

途中、いぬ、ねこ、おんどりが仲間に加わります。

彼らもまた様々な事情により飼い主から切られつつあったのです。

日が暮れる頃、森に差し掛かった四人組は、一軒の家を見つけて近寄っていきます。

するとそこは泥棒たちのアジトであり、ちょうど豪勢な宴の真っ最中だったのです。

 

四人組は一計を案じ、ろばの上にいぬ、いぬの上にねこ、ねこの上におんどりが乗って一斉に鳴きたてます。

化け物の声だと思った泥棒たちは泡を食って逃げ出し、四人組はご馳走にありつき、安心して眠りにつきます。

その夜、様子を見に泥棒が戻ってきます。

しかしうっかりねこの光る眼を燃えている石炭と勘違いし、手ひどい逆襲に遭います。

泥棒はほうほうのていで仲間のところへ駆け戻り、泥棒たちは二度とこの家に近づきませんでした。

四人組はすっかりこの住処が気に入り、永住することにしたのでした。

 

★      ★      ★

 

絵本化物語としては見せ場がはっきりとしており、定番のカットをどう描くかが作家の腕の見せ所。

キャラクターの躍動感という点では、フィッシャーさんは他の作家を寄せ付けません。

瀬田さんの訳も安定。

 

さて、物語の内容としましては、これは私は子どものころから妙に思っていたことなのですが、「ブレーメンのおんがくたい」というタイトルにもかかわらず、四人組は結局ブレーメンには辿り着かず、音楽隊にも入らずに終わってしまうのですね。

泥棒たちを驚かすのにそれぞれの楽器を使うわけでもなく(鳴き声を音楽ととることは可能ですが)、二度目の対決では肉弾戦でボコボコにしてますし。

 

ですから子ども心に「ブレーメン」という単語が謎を含んだ響きとして、かえって印象深かった記憶が残ってます。

で、実際のブレーメンを調べてみました。

ブレーメンはドイツの大都市で自由ハンザ都市ブレーメンの州都(ウィキ)。

 

オペラやミュージカルの劇場があり、時代背景的には生まれ育ちに関係なく能力次第で仕事を得ることのできる夢のある町として知られていたようです。

だからろばたちは人生の再スタートの地としてブレーメンを目指したわけですね。

 

前述のとおり「ブレーメン」も「音楽隊」も物語には登場しないことを考えると、この物語の核はそこではなく、四人組が人生をやり直そうと旅をして安息の地を得ることそのものにあると言えます。

 

四人組に共通するのは「失業者」である点です。

それも加齢や主人の横暴という自分ではどうすることもできない要素によって職を奪われ、生命までも脅かされている環境にあるのです。

 

「生産性がない」と切り捨てられ、生活が困窮しても見捨てられている社会的弱者。

これは現代日本でも、今まさに眼前にある光景とは言えないでしょうか。

ことにコロナ禍の中、職を失い、追い詰められている人々に対し、「自己責任論」で片づけてしまおうとする社会の在り方に、この絵本は重なって見えるのです。

 

そう考えると、グリムの時代から現代まで、こうした社会的弱者への救済はいまだに達成されていないと言えます。

四人組が「ブレーメン」に辿り着くことが大切なのではないのです。

私たちの社会を(物語的な意味においての)「ブレーメン」にするにはどうすればいいのか。

それを考える仕事を放棄しないことが私たちに託された使命なのではないでしょうか。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

こんなプレゼント羨ましすぎる度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ブレーメンのおんがくたい

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小学校デビュー

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

一斉休校+様子見の自主休校で一回も小学校に行ってなかった我が家の息子ですが、今週から登校開始してます。

報告がてら、色々思うところを綴ります。

レゴブロックに結束バンドを組み合わせてロボットを作る息子。

回転して進む足っぽくなるそうです。

 

息子が学校に行かない間、週一回は私が学校に行ってプリントや課題を受け取ったりしてました。

学校再開から20日ほど様子を見てましたが、現時点で息子の小学校に欠席者はひとりもいないということで、最大限の注意をしながら登校させてみることにしました。

 

もちろん不安です。

実際、北九州や関東地方などで学校感染がちょくちょく出ています。

こういうことを書くと「脅かし屋」みたいに思われるかもしれないのですが、どうしてそれほど世間が騒いでないんだろうという気もします。

感染経路も追い切れないだろうし、どこでどう無症状感染が拡がっているかもわからないです。

しかし、かと言って3〜4月ごろに私が恐れていたほどに悲惨な状況にもなってなさそうです(私が知らないだけかもしれませんが)。

正直な感想を言えば「よくわからない」なのです。

 

完全に収束したわけでもなく、今後の不安に十分な対策がされているわけでもなく、かと言って爆発的に感染が拡がって周囲でひとがばたばた倒れていくわけでもなく、しかし感染者はじわじわと増えている。

不安から自主休校させてる親御さんたちも多いでしょうが、これでは一体いつまで休校させていればいいのか判断が難しすぎると思います。

 

一応政府・教育委員会・学校側の判断としては学校再開ということになっているわけですが、少なくとも十分な説得力はありません。

その中で休校を続けるのは保護者の責任だけに委ねられており、悩んだり負担を感じている親御さんは大勢います。

私も引き続き経過を見ながら、何かあればまた休校させるつもりでいます。

しんどいですね。

 

さて、本当に初めて学校へ行くことになった息子ですが、思ったよりは問題ないみたいです。

何しろ集団生活経験ゼロ、きょうだいゼロ、協調性なんかあるのかないのか不明な息子。

授業中に立ち上がってどっか行っちゃうようなことはないかと心配だったのですけど、そういうことはしてないようです。

ただ、先生の話もあまり聞いてはなさそうです。

 

母親が送っていくと、別に寂しがりもせずに教室に入り、物珍しそうに色々見たり触ったり。

先生の机も平気で漁って止められたり。

 

授業そのものは「ひらがなの書き方」「数字の数え方」レベルなので難しくはないものの、「同じ字を何回も練習する」こと自体が嫌な息子は真面目にやろうとしません。

勝手にレタリング文字とかにしてしまいます。

ノートは「書き直し」の赤ペンだらけです。

そんなことは私も気にしませんが。

 

心配だったのは給食ですが(偏食なので)、今どきは無理に子どもに食べさせたりしないようなので、息子は食べたいものだけ食べてるようです。

私が子どものころは全部食べないとダメ、というわけのわからないルールがまかり通ってました。

大人だって嫌いなものは食べないでしょ……。

量は足りてないと思うのですが、今のところは学校でお腹がすいて困るという話はしてません。

珍しい体験ばかりなので空腹を感じてないのでしょう。

 

何よりも嬉しいことに、すぐに友だちはできたようです。

向こうから積極的に話しかけてくれて、帰り道も一緒。

一人は道順が違うのに、うちの息子が「心配だから」と途中までついてきてくれます。

同い年に心配されている息子。

 

幼稚園などの経験の差なのか、成長速度の差なのか、周りはみんなしっかりして見えますね。

息子は赤ちゃんみたいです。

図体だけは大きいけど。

他の子より後から通学しだしたので、友だちから見れば後輩感があるのかもしれません。

 

息子にとっては初めてできた友だちですから、叶うならばもっともっと一緒に遊んでほしいし、家も行き来してほしい。

それができない時代であることが本当にもったいないし残念です。

こういう状況が続くことが子どもたちの成長にどう影響するのか、それが懸念されます。

願わくは、しなやかに順応して、感染症など問題にせず健全に育ってほしいものです。

 

 

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