こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
ちょっと息子が体調を崩しまして、やっと治ってきたと思ったら妻が熱を出し、色々と私生活がバタついております。
まだまだコロナには油断できませんし、小学校などではインフルエンザも流行しているようですので、皆様もどうぞお体に気を付けてお過ごしください。
さて、今回は以前から紹介してみたかった「ルンバさんのたまご」を読みましょうか。
作・絵:モカ子
出版社:ひかりのくに
発行日:2013年4月
10年以上前の作品ですが、絵本界では10年はまだ新作(言い過ぎかな)。
作者のモカ子さんはこの作品でデビューということで、やっぱりまだまだフレッシュな作家さん。
現代風のいかにも可愛らしい絵柄や細部の描きこみ、ほのぼのとしていながらどこかシュールさも漂う世界。
独特のユーモアが効いています。
まず、主人公の「ルンバさん」ですが、正体が不明。
たまごとにわとりのお話なんだろうと思って読むと、どうもそうではない。
にわとりの被り物や羽を身に付けていますが、脱いでしまうと何やら斬新なヘアスタイルの謎の生き物なんですね。
このルンバさん、ひよこが大好き。
その「好き」の方向が見ようによっては偏執的で、いわばひよこマニア。
「げっかん ひよこ」のプレゼント企画に応募し、それが当選。
巨大なたまごが届きます。
さあルンバさんは大喜び。
一生懸命たまごを温めるとたまごはずんずん大きくなって…
「105つご」のひよこちゃんが孵化します。
ひよこたちはルンバさんをおかあさんと認識。
ルンバさんはひよこたちにご飯を用意したり、一緒に遊んだり、お風呂に入ったり。
思う存分愛情を放出し、幸せな気持ちでひよこたちと眠りにつきます。
★ ★ ★
ひよこちゃんたち可愛い。
ちゃんと105ひき描きこまれていますし、一匹一匹見ていくだけでずっと楽しめます。
その上で、これはむしろ褒めているんですけど、やっぱりどこかに狂気を孕んだ絵本だと思うんですね。
上記したようにルンバさんはにわとりではなく、ひよこが好きで好きでたまらないけど自分ではひよこたちの母親にはなれない。
いわばひよこたちの里親となるわけです。
105つごワンオペなんて子育て経験のある親からしてみれば想像しただけで頭がおかしくなりそうな状況ですけど、ひよこ愛MAXなルンバさんは幸せいっぱいで世話に励みます。
考えてみればこれを単純に母子の物語にしてしまうと、旧態依然とした「母性幻想の押し付け」となりかねませんが、ルンバさんが100%自分で望んだ環境という設定のおかげでそこは回避されていると言えるでしょう。
前述したマニア的な偏愛も、現代的な愛情の在り方を肯定的に捉えた多様性の尊重と読むこともできます。
しっかり人気作になって続編も出ていますので、この世界が好きな方は是非に。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
ひよこ愛度:☆☆☆☆☆
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今回は日本神話より「やまたのおろち」を紹介します。
文は映画監督の羽仁進さん、絵は安定の赤羽末吉さん。
文:羽仁進
絵:赤羽末吉
出版社:岩崎書店
発行日:1967年
知らない人はいないほど有名な神話のひとつだと思っていますが、最近の若い人はどうなのでしょうね。
その存在くらいは知っていても、細かいエピソードについては何も知らない人も多そうです。
そういう私も別にさほど詳しいわけではありませんが。
しかしながらこのやまたのおろちの伝説を幼い頃に絵本で読んだ時の興奮とインパクトは忘れることができず、ずっと心に残っていました(その当時読んだ絵本の絵は覚えているのですが、残念ながら見つけることはできていません)。
何と言ってもやはりやまたのおろちの造形とスケールが怪獣好きの子ども心に刺さります。
かっこよすぎません?
キングギドラもびっくりの八つの頭を持ち、その巨大さたるや八つの谷、八つの峰にまたがるほど。
表面に苔や杉を生やし、生贄に女を要求し、酒も飲む。
女好きの酒好き怪獣ですね。
口から炎を吐くところも実に怪獣らしくていい。
この怪物と戦う主人公はスサノオノミコト。
神話によくある暴れ者タイプの神で、乱暴が過ぎて姉である天照大神の不興を買い、下界に追放されます。
人間臭いですね。
追放者スサノオは川を上って村へたどり着きます。
そこで泣いている村人に事情を聞くと、やまたのおろちという怪物が娘を食べにやってくるのだといいます。
その娘はクシナダヒメといい、すでに七人の姉がおろちに食われたといいます。
スサノオは自分がそのおろちを退治してやろうと引き受けます。
スサノオは乱暴者ですが兵法も心得た知恵者で、八つの瓶に毒を混ぜた強力な酒を用意しておろちを待ち構えます。
やがてその恐ろしい姿を現したやまたのおろちはあっさりとこのトラップに引っ掛かり、酒を飲み始めます。
知能のようなものはほとんどないらしい。
けれどもその生命力は半端なく、毒をもってしても死なず、ただ眠りこけてしまいます。
スサノオはそこへ襲い掛かりますが、おろちは目を覚まし、炎を吐いて応戦します。
絵本によってはここの戦闘シーンをあっさり終わらせているものもあり(眠ったおろちを切り殺すだけとか)ますが、この作品では実に6ページにわたって苛烈な戦いが描かれます。
映画監督らしい臨場感ある場面と、赤羽さんの生き生きとした絵筆が見どころです。
ついに勝利するスサノオですが全身に八十八もの傷を受けます。
八という数字にこだわるあたりも神話あるある。
クシナダヒメの賢明な看護で傷は癒え、二人は結婚します。
やがて子どもも生まれ、彼らは山の奥で鉄を見つけて道具を作り、蚕を飼って絹糸を作り、出雲の国に村を興します。
★ ★ ★
おろちの体内から発見される草薙の剣は別名雨の叢雲、有名な伝説ですね。
これについては様々な解釈がありますが、物語最後にも描かれる通り製鉄技術の発展や鉄文化との関りを指摘されています。
神話や民話は全てが象徴的ですから、八という数字や蛇、櫛、酒といったワードにも何かしらの意味があるのだと考えられます。
そうしたことも含め、想像力をかき立てられる物語です。
そして海外にも悪役としての蛇の怪物の登場する伝説は見られます。
酒を飲ませて退治する神話もあります。
こうした類似点は単純に海を渡って物語が伝わったというより、人間に共通する根源的なイメージや心魂的に通じる象徴なのだと考えられます。
などとあれこれ考察する楽しみもありますけど、やっぱりやまたのおろちの怪獣っぷりが単純に魅力的ですねえ。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
戦闘シーンの濃密さ度:☆☆☆☆☆
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今回紹介するのはカレル・チャペックさんの童話原作絵本「郵便屋さんの話」です。
作:カレル・チャペック
訳:関沢明子
画:藤本将
出版社:フェリシモ出版
発行日:2008年3月21日
カレル・チャペックさんはチェコを代表する劇作家・小説家で、画家・評論家の兄ヨゼフさんと共にチャペック兄弟として広く親しまれています。
「ロボット」という単語の創始者であるともされています。
SFから童話まで様々な作品を残しましたが、彼らが生きた時代は大戦の最中で、チャペックさんは作品内でナチズムを痛烈に批判し、そのためにゲシュタポから敵認定され、狙われたこともあります。
この「郵便屋さんの話」は1932年に発表された童話集の中の一篇に、イラストレーターの藤本将さんが新たに挿絵を書き下ろして出版された絵本です。
主人公のコルババさんは郵便配達人。
このところ自分の仕事にうんざりし始めております。
「毎日、二万九千七百三十五歩も歩かなければならないし」「そのうちの八千二百四十九歩は階段をのぼったり、おりたり」と、具体的な数字を持ち出して嘆くユーモアのあるおじさん。
ある時郵便局で居眠りしてしまい、仲間たちが帰ってしまった夜更けに目を覚ますと、何やら気配がします。
様子を窺うと、そこには郵便局に住む妖精の小人たちが忙しく働いていたのです。
小人たちは仕事が一段落するとカードゲームを始めます。
カードとして用いられるのは郵便局にある手紙。
不思議な遊びに思わずコルババさんは小人たちに話しかけますが、小人たちは悪びれもせずコルババさんをゲームに誘います。
手紙には何の数字も書いてませんが、小人たちは中にある手紙の種類によって札の強さを決めているのです。
一番強いエースは愛情のこもった手紙という風に。
そして小人たちは封を切らなくても中の手紙の内容を温度で知ることができるというのです。
そんなことがあってしばらく後、郵便局に宛名のない手紙が届きます。
差出人も不明で、配達もできないけれど、コルババさんはなんとなくその手紙が温かく感じられ、きっと心のこもった手紙のはずだと思います。
かといって勝手に中を開けることは郵便局員としてやってはならないこと。
そこでコルババさんは小人の助力を頼みます。
小人は封を切らずして中の手紙を読みます。
それは若者が恋人にあてた手紙でした。
若者の名はフランチーク、職業は運転手。恋人の名はマジェンカ。
ただそれだけの手がかりをもとに、コルババさんはこの手紙をマジェンカのもとに届けてあげようと決意します。
長い長い旅を続け、探し回りますが見つかりません。
一年以上も探し回って、疲れ果てたコルババさんが座り込んでいると、立派な紳士が車を止めてコルババさんを送ってあげようと声をかけます。
コルババさんはありがたくその車に乗ります。
そして話をするうち、車の運転手の素性がわかります。
彼こそ探し求めていたフランチークだったのです。
彼は愛する恋人から手紙の返事がこない悲しみに沈んでいました。
そこでコルババさんは手紙を預かっていることを打ち明け、自動車は一路マジェンカの家を目指して走り出します…。
★ ★ ★
冒頭ではいわゆる靴屋の小人的な童話かと思いますが、そうではない。
人生や仕事の喜びについて、人の想いについて、色々なことを考えさせてくれるハートフルなお話です。
コルババさんは実に粋でチャーミングなおじさんですが、そこは藤本さんのイラストの力も大いに作用しています。
センスがあって人物が本当に可愛い。
異国情緒もあり、チェコで描かれた絵本だと言われても違和感がありません。
チェコと言えば絵本大国としても知られており、なおかつチャペックさんのような童話作家も生み出した素晴らしい国です。
まだまだ翻訳されてない名作はありそうですね。
推奨年齢:7歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
一年がかりの配達の報酬が切手代だけのコルババさん男前度:☆☆☆☆☆
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少し前にうちの息子が病院でWISK-?という知能検査を受けまして(後述します)、その結果や、そこから新たに色々と考えたことや、読んだ本などについてここに書いていこうと思います。
まず、息子が今回検査を受けることになったのは学校側との話し合いの中で、病院への相談を提案されたのがきっかけです。
少しずつ成長を見せているとはいえ、まだ息子は他の子と同じように授業を問題なく受けられるとは言えません。
時々は机を離れてしまうし、ノートは取らない、休み時間に触るタブレットPCからなかなか離れられない、特定のクラスメイトとトラブルになる、といった問題を抱えています。
学校では通常学級と支援学級の掛け持ちという形式を取っています。
これについてはいわゆる発達障害と自閉症スペクトラムの傾向が濃厚ですが、これまで正式に専門的な受診や検査を受けたことはなく(簡易な検査はしたことがありますが、そこで正式な診断が出るわけではありません)、従って療育手帳などもありませんでした。
現在発達障害の検査を希望する人は増加しており、検査まで何か月も前から予約が必要だったりするのです。
そういう事情と、別に私としては診断名や手帳が欲しいということはなかったので(息子をどう導くべきかの指標が欲しいだけなので)、正式な検査はこれまで受けてこなかったわけです。
しかしながら学校でも息子の扱いに何かヒントが欲しいという様子で、病院を紹介されたこともあり、上記したWISK-?という知能検査を受けることにしたという経緯です。
結果としては、息子の能力は全体に非常に高いらしいです。
といっても数値が記された紙を渡されても私にはちんぷんかんぷんですが。
言語理解とか流動性推理とか、ごちゃごちゃ項目があるけども、要するにFSIQというのがいわゆるIQに該当するらしいです。
確かになかなか高い。
ただ、「で、学校でどうすればいいの?」というこちらの質問に対しては明確な答えは得られませんでした。
そして息子の場合は「発達障害の傾向は見られるけども能力の高さからいわゆる障害という診断は下せない」というのが担当医の見解のようでした。
学校での扱いについては、息子を学校に合わせるのではなくむしろ学校側が息子に合わせた教育を工夫すべきでは…という、わりと全面的に息子側に立った意見でした。
もっともそれは現場に責任のない立場だから言えることかもしれないですね。
学校としても結局どうすればよいのかという個別具体的なアドバイスを期待していたと思うのですが、その点は特に収穫はなかったという結果です。
その後、私がネットでWISK-?について色々調べていると「ギフティッド」という単語が目に留まりました。
気になってとりあえず集英社から出ている「ギフティッドの子どもたち」(角谷詩織)という一冊を読んでみたのですが、驚くほど息子に当てはまることが多く書かれていました。
ギフティッドというのは非常に判別が難しく、私も勉強中であまり軽々しく内容を語れないのですが、とりあえず知能が高いこと、そして感情の振れ幅が大きく、興奮しやすく、自責的になったり、エネルギッシュさと繊細さを併せ持つような傾向の子どもを指すようです。
本文中にある「周囲を振り回すほど」「猛烈に生きる」という表現はまるで息子の特徴をそのまま表しているようにさえ思われます。
「なんでそんなことで?」「もっと気軽に考えれば」「そこまで完璧主義にならなくても」「なぜそんなに自分を責めるの?」「どうしてこれがそんなに痛いの?」というこれまで息子に対して感じてきたことも、すべてギフティッド児によくみられる性質のようです。
そしてこれらは発達障害や自閉症スペクトラムの傾向と酷似しています。
どちらも小学校時点でだんだんと違和感や困難に直面することが増えていきます。
ただ、例えば「教室でじっとしていられない」という傾向を取ってみても、発達障害児が自分でも何故動き回ってしまうのかわからず制御も難しいのに対し、ギフティッド児のそれは「授業がつまらない」といったその子なりの理由があり、自分に興味があり、面白いと感じる内容ならじっと座っていることができるという違いがあります。
しかし難しいのは、だからといってギフティッド児に発達障害児が含まれないわけではないという点です。
発達障害や自閉症を伴うギフティッド児もいます(『2E』と言われます)。
息子に関してはそこに分類されるのではないかなと思います。
例えばギフティッド児に見られる特質のひとつに身体能力の高さも挙げられているのですが、息子ははっきり言って運動音痴だと思います(身体の頑健さはありますが)。
ギフティッド児かどうかの判断基準は基本的に知的優秀さしかありません。
こう書くとまるで天才児集団のように思われそうですし、実際言葉の響きからそう感じる人は多いようです。
海外ではすでにギフティッド児を集めた教育機関も存在し、それらは不平等なエリート教育と非難される向きもあるらしいです。
けれどもそうではなく、ギフティッド児は別に天才ではなく、並外れた才能はあってもそれを活かす機会もないまま、ただその特性ゆえの違和感や生きづらさだけを抱えて大人になる人もいますし、逆に環境に恵まれ、何の困難もなく普通に社会に溶け込んでいるギフティッドもいます。
どちらも別に目覚ましい活躍をするというわけではなく、ギフティッドかどうかはそこに関係しません。
彼らは「平均から外れた能力の高さ」ゆえに、均質的な教育機関に合わせるのが難しいという点で共通しています。
それは逆に学習障害などで平均から外れているゆえに、均質的な教育に合わせるのに困難を要する子どもと、質は違っても不平等さという点では同じと言える気がします。
何故なら能力の高さから授業がつまらない、そのつまらない授業を延々と週5日繰り返させられる苦痛から、本当に学力が下がり始めるギフティッド児もいるからです。
幸いなことに息子は学校嫌いではあっても登校拒否までは行ってないし、周囲の支援もあり、どうにか学校生活は送れています。
しかし、私たちがこれまで単に息子のわがままのように感じていた様々なことは、息子にとっては真実の心の叫びであったという認識は忘れてはならないと思います。
我々から見れば大袈裟にしか思えない息子の言動や態度、それらは息子にとっては真実なのです。
息子が学校で落ち着きを見せて授業をじっと受けてくれれば、親としては安心するけれども、その陰で息子がどれほどの忍耐力を要しているのか、何を削ってそこに座っているのか、それを見落としてはならないと思います。
検査の結果を受けて、学校側とどういう話をしていくかはまだわかりません。
今後息子が中学、高校と進むにつれて考えることも増えてくると思います。
ギフティッドにしろ、発達障害や自閉症にしろ、子どもを何かにカテゴライズすることはどうでもいいのです。
それは理解を深めるための一助でしかありません。
子どもを理解すること、余計な手出しはせず、必要な助けは滞りなく行うこと。
大人がなすべきことはただただそれだけなのです。
そういう意味では、結局のところ息子に対する接し方や方針は特にこれまでと変わりないでしょう。
長くなりましたので簡単ですが今回はここで終わります。
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お店HPのお知らせにも記載しておりますが、配送方法を一部変更しました。
これまで絵本の重さ総計が1kg以内の場合は【ゆうメール】で発送していましたが、今後は【ゆうパケット】での発送になります。
これまで利用していた【ゆうメール】が土日祝の配達を止めてしまった事情により、連休を挟んだ場合には到着が大幅に遅れたり、心配されたお客様から問い合わせメールが届いたりといったことが増えたため、今回の改定となりました。
【ゆうパケット】は基本的には【ゆうメール】と変わらず、ポスト投函、受領印不要ですが、配達追跡ができますし、土日祝の配達も休まず行っています。
なお、送料に関しましては従来通り一律500円、5000円以上お買い上げで送料無料です。
よろしくご承知願います。
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今回紹介するのは「うたいましょうおどりましょう」です。
作・絵:ベラ・B・ウィリアムズ
訳:佐野洋子
出版社:あかね書房
発行日:1999年12月1日
かなり前にこのブログで取り上げた「かあさんのいす」から繋がるお話です。
(たぶん)カリフォルニアに住む主人公、母、祖母の女ばかりの家族。
下町の人情や逞しい暮らしぶりなどが伝わる物語の雰囲気は健在。
この「うたいましょうおどりましょう」の前に「ほんとにほんとにほしいもの」という作品があり、「かあさんのいす」三部作ということになっています。
家に父親はおらず、母親の稼ぎが一家を支えています。
火事に遭って焼け出されたり、なかなか辛い経験をしてきた一家ですが、嘆いたり悲しんだりせず、日々明るく一生懸命。
しかし生活は決して楽ではない。
みんなで貯めたお金で買った素敵な「かあさんのいす」は最近では空っぽ。
母さんは以前よりもっと働かなくてはならず、それなのにあのお金を貯めていた瓶も空っぽという状況です。
その理由はおばあちゃんが病気で寝ているから。
いつも優しく明るいおばあちゃんは主人公の少女だけでなく、その友達からも慕われる人気者。
そんなおばあちゃんが病気とあって少女たちは寂しそうにしています。
主人公は前作で買ったアコーディオンの練習を続けています。
その時彼女に名案が浮かびます。
仲間たちと音楽バンドを結成してお金を稼ごうというのです。
おばあちゃんに考えを伝えると、「あんたたちならできると思うね」と励ましてくれます。
そこで主人公は仲良し四人組で猛練習を始めます。
音楽の先生やおばさんに演奏を見てもらいながら。
そしてついに初めての仕事がやってきます。
友だちのレオラのお母さんから、お店の五十周年パーティーで音楽を演奏してほしいという依頼です。
近所の人たちもみんな集まったパーティーの日、緊張しながらも少女たちは演奏を始めます。
みんなは浮き浮きして踊り出します。
演奏は大成功。
レオラの曽祖父母からも感謝され、レオラは母親からお金の入った封筒を受け取ります。
みんなはお金を4等分し、主人公はあの大きな瓶にお金を入れるのでした。
★ ★ ★
実を言うと私はこの手の話を見ると悲しくなってしまうんです。
上記した通り、作品そのものはとても明るく力強く、惨めさや辛さを微塵も感じさせませんけど、貧しさから働きづめに働かなくてはならない母親とか、そんな家庭の事情を知っているから健気に貯金したり、自分でもお手伝いやお金を稼ぐ手段を考える娘とか、無性に泣きそうな気持になってしまうんですね。
どうかこの家族がお金に困らず、幸せに暮らしてほしい。
娘はアルバイトしたお金を自分の好きなように使って欲しい。
主人公がアコーディオンを買う経緯は前作「ほんとにほんとにほしいもの」で描かれていますが、それもまた泣ける。
もちろんそれは私の個人的な感傷で、こうした暮らしの中で深まる家族の絆や、町の人々の温かさなど、勇気づけられる物語であることは言うまでもありません。
決して暗い雰囲気にならないのは、鮮やかな水彩画の楽しさによるところも大きいでしょう。
人々の表情も実に豊か。
暮らしぶりは現代日本とは違う部分も多いけど、家族や町の人々といった共同体の温かさ、絆といったものはしっかりと読者の心に届くでしょう。
絵柄は三部作通してほぼ変化しませんが、一作目に比べると主人公がずいぶんと美人になった気が。
心身ともに成長しているってことでしょうかね。
推奨年齢:6歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
一作目からの主人公の成長度:☆☆☆☆☆
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今回は「昆虫語」で描かれた前衛的絵本「なずずこのっぺ?」を紹介しましょう。
作・絵:カーソン・エリス
訳:アーサー・ビナード
出版社:フレーベル館
発行日:2017年11月
「なずずこのっぺ?」ってなに?
しかし次の瞬間ムクジャランカは鳥に捕食され、「フンクレガ」は再び子どもたちの遊び場に。
そしてだんだんと成長した芽は綺麗な花を咲かせます。
昆虫たちは集まって「ルンバボン!」「みりご めりご ルンバボン!」。
やがては花も枯れ、子どもたちも秘密基地に「じゃじゃこん」(おそらく別れの言葉)。
そして季節は巡り…。
★ ★ ★
絵を読むことによって物語を想像する「テキストなし」の絵本は色々とあるんですが、「昆虫語」のみで語るというのはなかなか実験的。
しかも全くのでたらめというわけではなく、同じフレーズが別の場面で使われていることによって、ちゃんと意味を想像できるように構成されているところがポイント高い。
もう一つ翻訳版で感心するのは訳者の言語センスです。
「フクレンガ」は「隠れ家」を想起できるし、「わっぱど がららん」は「わからない」、「ぽしゃり」が「潰れる、駄目になる」といった意味を伴っていることは語感にも合う感じがします。
訳者はアーサー・ビナードさん。
日本人ではないのに日本人より日本語センスあるんじゃないかと思ってしまいます。
実際日本で様々な絵本の翻訳や詩作を発表しており、「ドームがたり」というアメリカ人の立場で原爆について語るという難しい絵本も手掛けています。
以前このブログでも取り上げました。
ちなみに原題は「Du Iz Tak?」。
英語話者にはまた違った語感で伝わるんでしょうね。
これを翻訳(?)するというのはとても難しいながらも面白い作業だと思います。
カーソン・エリスさんのイラストも素敵で、昆虫たちの擬人化は可愛いし、ちゃんとそれぞれの生態に従って動いています。
冒頭に蛹となった幼虫が最後に羽化するシーンなど、絵の隅々まで読む醍醐味もあります。
さらにちなみにですが、邦訳版のタイトルデザインは森枝雄司さん。
こちらもなかなかのセンスあるレタリングをされてます。
細部にわたって何度も新しい発見がある、楽しい作品です。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
オリジナル言語を考えたくなる度:☆☆☆☆☆
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正月明けからの三連休も終わり、本格的に仕事と日常が始まった感じですか。
もっとも新年そうそうの地震災害で日常どころではない地域もあるでしょう。
本当に大変なことになっているようで、被災された方々の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
今年は辰年ということで、最初の絵本紹介は浜田廣介さんの名作童話「りゅうのめのなみだ」を読みましょう。
作:浜田廣介
絵:植田真
出版社:集英社
発行日:2005年11月30日
1000篇に及ぶ童話を創作し、日本のアンデルセンとも称された浜田さん。
この「りゅうのめのなみだ」は1923年の作品です。
挿絵を描いているのは植田真さん。
現代的で繊細なタッチによって古典名作が一気にモダンなテイストに仕上がっています。
絵の力というのは本当に大きいのですが、例えば主人公の少年が黒髪でないことや、街並みの描写によって、時代や場所の設定が自由に想像できるようになった印象です。
必ずしも日本の話でも、「むかしむかし」のお話でもないというような。
もとより原文でも「南のほうの国」と表記されているので(国家という意味合いは薄そうですが)その辺りはぼかされています。
この国の山の中には「大きなりゅう」が棲んでおり、近づいた人間は飲み込まれてしまうと噂され、人々の恐怖の対象となっていました。
けれどある町にちょっと変わった男の子がいて、りゅうを怖がらず、りゅうに興味を持って、自分からりゅうの話を聞きたがるのです。
少年は夜中にりゅうのことを考えて涙を見せます。
母親は息子がりゅうを怖がって泣いているのかと思ったのですが、さにあらず、少年は「りゅうがかわいそう」と泣いていたのでした。
皆が恐れ、誰にも優しくしてもらえないりゅうを哀れむ少年を、母親ですらおかしな子だと不審がります。
あまつさえ少年は自分の誕生日にりゅうを招待したいと言い出します。
母親は馬鹿なことと相手にしませんが、少年はとうとう一人で山の中に入り、りゅうに会いに行こうとします。
自分を呼ぶ少年の声に、大きなりゅうはいかめしい姿を現します。
何の用かと不思議に思って質すと、少年は自分の誕生会にりゅうを招きたいと言います。
それを聞いたりゅうに気持ちに変化が起こり、温かい涙があふれだします。
今まで一度も優しい言葉をかけてこられなかったりゅうの心は閉ざされて、人間を脅したりしていたのですが、本当は悪いりゅうではなかったのです。
りゅうは涙を流し続け、涙が川となります。
りゅうは少年を背に乗せて涙の川を下って少年を町へ送ります。
「わたしは このまま ふねに なろう」
「そうして やさしい 子どもたちを たくさん たくさん のせて やろう」
「あたらしい よい 世の 中に して やろう」
その言葉通り流は黒い船に姿を変え、町に辿り着きます。
最終カットでは、りゅうの船に乗って遊ぶ子どもたちの姿が描かれます。
★ ★ ★
皮肉や教訓や説教じみたところは微塵もなく、ただ人の善性や清純を無条件に信じる素直な童話です。
やさしさの連鎖によってよい世界を作ろうという単純で率直な理想を描いています。
現代では負の連鎖は簡単に起こりますが、正の連鎖はほとんど見られなくなってしまった気がします。
例えば今まさに被災地に対して何かをしようという善意の輪が動いていますが、それですら様々な配慮をしなければ、逆に迷惑行為とすら言われかねない世の中です。
本人が本当に善意で動いているのかもわかりませんしね。
もはや現代はこの絵本のような単純な善が通用しない時代になったのかもしれません。
ですが、私はそれをどうこう言うつもりはありません。
何度も書いていますが、時代は戻らないし、戻す必要もないです。
我々は時代から逃げられないし、どんな名作絵本や童話も時代の影響を受けています。
例えばこの作品中にも「女の子のようにやさしくて」「すぐに涙を見せました」といった表現が使われていますが、これも現代ではもう古すぎる感覚でしょう。
かといってそれがこの作品の価値を減じるものではありません。
時代は変わりますが、作品の本質や核は変わりません。
私が思うこの作品の核とは、それぞれの時代において、我々がこの物語での少年であるか、それともその他の町の人々であるかという問いかけです。
すなわち世の中の噂、外的な情報、先入観、思い込みによって物事を見ていないか、自分の本当の心に従って動いているのかという点です。
「りゅうは悪いもの」という常識を鵜呑みにせず、自分の心によってりゅうに会いに行った少年なら、今の時代において何がまやかしの善で何が真実の善なのか、きちんと見定めることができると思うのです。
推奨年齢:6歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
イラストの流麗さ度:☆☆☆☆☆
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■絵本の買取依頼もお待ちしております。
〒578−0981
大阪府東大阪市島之内2−12−43
E-Mail:book@ehonizm.com
]]>謹んで新春の慶びを申し上げます。絵本専門店・えほにずむの店主です。
本年もよろしくお願いいたします。
私も息子も元気に新年を迎えました。
なんというか息子が生まれてから一番ゆっくり休めたお正月だった気がしますね。
眠らない息子を連れて初日の出を拝みに行ったりした年もありましたね…。
息子もすっかり生活のリズムがついてくれて感謝です。
いわゆる自閉症スペクトラムや発達障害の傾向を持つ息子ですが、そういえば先日初めて正式に病院で検査を受けまして、現在結果待ちですが、結果に関わらず、私としては今の息子を見る限り単にそういう性格で生まれただけという印象です。
特に問題ないんじゃないかなと。
少しずつ成長して、以前ほど感情に振り回されることは確実に減っています。
もちろんまだ学校では様々な問題も抱えていますし、先生方とも折に付け相談して様子を見る毎日ですが。
このままでは中学校以降さらに苦労するのではという妻の心配もわかりますけど、それは別にどんな子どもでもありうるべき心配だとも思いますので。
特徴の一つだった偏食についても、今年は少ないながらもおせち料理のいくつかに挑戦してくれましたし、食べられたのはわずかですけど、ともかく箸をつけるようになっただけでも成長したと思います。
お餅は相変わらず食べませんけど、まあ食べなくても何ら問題ないですしね。
勉強に関しては学校からの報告による限り、まったく遅れはないみたいです。
勉強嫌い、というか課題嫌いは変わらないけど、冬休みの宿題は年内に全部片づけました。
一度やると決めたらその予定は変えたくないという彼の性質がいい方に向かった例だと思います。
本を読み、公園で遊び、PCでゲーム、レゴ作成、漫画を描く。
やることは毎日同じです。
家庭の事情としては、今年からは妻の仕事環境が変わるので、息子が学校から帰る時間に家に誰もいないという日ができます。
1時間くらいの留守番はどうということはない年齢だと思うし、鍵を持たせてはと考えるのですが、妻はまだまだ注意力散漫な息子に鍵を持たせたり家で一人にするのは不安みたいです。
以前利用していた学童にまた戻るかという話になってます。
前は学童の職員さんとか周りの子とうまく行かなくて利用を止めてたんですけどね。
帰らないとか騒いじゃうし。
まあ今ならそんなこともないだろうし、大丈夫だと思います。
変化の苦手な息子なので、その時にならないとわからないですけど。
それでは皆様、今年も何卒宜しくお願い致します。
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こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今年もはや過ぎますね。
寒くなりますが体調には気を付けて、つつがなく新年を迎えられるようにしたいです。
皆様もご自愛ください。
当店は12月29日から新年1月5日までの間をお休みさせていただきます。
注文は随意受け付けておりますが、出荷作業等の対応は遅れますのでご了承ください。
世の中の動きは相変わらず不安定で、物価や送料は上がり続けるし、古本屋通販という仕事もこのままで続けられるのかな…と考えたりもしますけど、私も家族も元気に一年過ごせたことにはただ感謝です。
また年が明けましたら、息子の成長などを綴っていこうと思います。
絵本の紹介も、来年こそは500冊めまで伸ばしたいですね。
それでは皆様、良いお年を。
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]]>こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今年もはや師走。
何かとバタバタしておりますが、家族そろって大きな怪我も病気もなく、無事に年を越せそうです.
去年も今頃の時期に児童書の感想文を書いたのですが、この一年で息子に読んだ児童書をざっと挙げてみましょう。
息子ももう小学校4年生で、そうそう絵本を読んであげる機会もなくなりました。
ゲームで忙しいですしね。
そうは言っても本から離れてしまったわけではなく、本を読む習慣は身についているし、最近では米朝師匠の落語本などを一人で読んでいます(息子は落語好きです)。
そして毎日寝る前に30分くらい児童書を読んであげる習慣もずっと続いています。
もちろん息子は自分でも読めるのですが、そこはルーティンとして、この本を読み聞かせる時間というものは私にとっても息子にとっても大切なものとなっています。
今読んでいるのは吉川英治の「三国志」ですね。
前から機会を窺っていたのですが、そろそろいいかなと思って全8巻読破に向けて読み始めました。
もちろん難しい言葉はたくさん出てくるけど、いちいち説明してると流れを切ってしまうので、そこは雰囲気で流してもらってます。
私も読み方に詰まる単語も多いので勉強になりますね。
あと、三国志と言えば登場人物の多さですが、特に耳で聞いていると各人物の判別が難しいだろうなと思います。
ただでさえ耳慣れない中国名に、似た響きの名前が多いので、やはり漢字で視覚的に捉えないと誰が誰だっけとなってしまいます。
今董卓編の佳境ですが、実際息子は再登場した人物などは「誰だっけ?」となっています。
それでもやっぱり三国志、一度読み始めると面白くてやめられない。
吉川三国志は名文ですしね。
成長のどこかで必ずハマるでしょうし、これを機に歴史に興味を持ってくれたら嬉しい。
ミヒャエル・エンデの「モモ」。
これは別に今年初めて読んだわけではなく、覚えてないけど去年にはすでに読んでいた気がします。
でも息子は非常にこの話を気に入ってくれて、すでに3回は繰り返して読みました。
児童向けでありつつ、わりと心理的にキツい描写もあり、非常に作者の思想的な部分も盛り込まれており、大人でも理解がすぐには追いつかないような難解さもあります。
特にマイスター・ホラの家でモモが見た「時間の花」の箇所ですかね。
ただ教訓臭さはなく、エンターテインメントとしてぐいぐい読ませる力に満ちています。
灰色の男たちの不気味さ、生気を奪われていく人々の哀れさ、その中にあって未来を知る亀のカシオペイアの愛らしさが救いとなっていますね。
昔映画版も見た覚えがありますが、とにかくモモ役の女の子がめちゃくちゃ可愛かった記憶。
同じくミヒャエル・エンデの「ジム・ボタンの機関車大旅行」。
これはかなり前に買ったけど読ませてくれなったのですが、やっと読了、そして続編の「ジム・ボタンと13人の海賊」も続けて読みました。
めちゃくちゃ面白い。
登場人物や国の設定がいちいちエキセントリックで想像力を刺激してくれます。
意志を持つ機関車エマは改造されて海も渡れば空まで飛んでしまう。
住人数名の小国、中華風の大国、竜の国、砂漠の巨人、海の人魚。
そしてやはりどこかにミヒャエル・エンデ流の神秘的思想が感じられます。
個人的には読み物としてはモモよりもこっちの方が面白いのですが、知名度的には今一つなんでしょうか。
かなりおすすめです。
そういえばアニメにもなってましたね。小さい頃見た記憶がありますけど、内容はまるで違ってたようです。
エーリッヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」。
寄宿舎暮らしの多感な少年5人組の友情と成長の物語。
大人の目線で読むと、この時期の子どもたちの周囲に、見上げるように尊敬できる大人がいることの重要性を痛感します。
また、ケストナーの洒脱な文章は読むだけでも精神が賦活される気がします。
息子は5人組の中で最も臆病でそれを気に病んでいる「ウーリ」というキャラクターに自分を投影していました。
そうやって自己投影ができるようになったというのは息子にとっては大きな進歩だと思っています。
同じくケストナーの「エーミールと探偵たち」。
ケストナーは不良少年を書くのが上手いですね。
旅先で母親に託された大切なお金を盗まれ、それを取り戻すために奔走する主人公と、自然と協力関係になっていく街の子どもたち。
タイトルからミステリーものかと思いましたが、内容は明るい友情と、みんなで何かを成し遂げる精神の昂揚を描いた上質のジュブナイルです。
今江祥智の「星をかぞえよう」。
これはもう古書の類でして、ご存じない方の方が多そうですけど、私が小学校の頃に図書室で読んで、なんだかすごく印象に残っていたので探し出してきて読みました。
挿絵は長新太さん。
時代設定も古く、田舎で育った主人公の女の子が東京に転校し、そこで男顔負けの活躍をするという…まあ、今読むと男女観の古さが際立ちますが、当時は少女が活躍する作品がどんどん発表されていた頃なんじゃないでしょうか。
今では当たり前ですけどね。
ただ、主人公が立ち向かう相手がバリバリの極道なのが児童書としては異色なんですよね。
主人公は女子中学生ですよ?
それを傷めつけようとする先輩柔道部と、それに手を貸す極道一家。
逆に現代だと出版できないかも。
私は上記のケストナー作品を読んだ後、何故か突然この作品を思い出して読みたくなったのですが、今江さんの別作品のあとがきに、児童小説を書き始めた時、どう書けばいいか悩んでいたら福音館の松居さんが「ケストナーの書き方をものにしなさい」というアドバイスをくれたというエピソードがあって驚きました。
やっぱりどこかで通じるものを感じたんでしょうね。
他にも色々と読んだのですが、切りがないのでまた次の機会に紹介しましょう。
何度も書いたことですが、読書には旬があります。
小学校4年生なら4年生の時期に読んでおくべき本というものがあります。
大人になってから読んでも面白いのは間違いないとしても、その時期の精神にしか響かない本というものもあり、長い時間をかけて熟成すべき内容の本もあるのです。
この先、息子が小学校高学年〜中学生になれば、読むべき本のリストは一気に膨れ上がります。
とても私が読み聞かせていては間に合わないくらいの量になるはずです。
今は習慣として私が本を選び、読んでいますが(後で一人で読み返したりはもちろんしていますが)、いつ息子が自分で本を選び、次々と読む時期がくるのかを注意深く、そして心から楽しみに見守っています。
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今回はエズラ・ジャック・キーツさんの「ピーター」シリーズを取り上げましょう。
回を重ねるごとに少しずつ成長していく主人公の黒人少年。
久しぶりに会うピーターはどのくらい大きくなったでしょうか。
「ピーターのめがね」です。
作・絵:エズラ・ジャック・キーツ
訳:きじまはじめ
出版社:偕成社
発行日:1975年11月
これまでに紹介したシリーズ作品は以下の通り。
「ゆきのひ」で初登場した純粋であどけないピーターも、今作ではすっかり逞しいニューヨークの少年に。
いい感じの親友アーチ―も登場し、愛犬ウィリーも一緒に土管が埋まった空き地の隠れ家で遊んでいます。
アーチ―もこれまた可愛らしい黒人の少年ですが、眼鏡をかけ、ピーターより小柄で大人しいキャラクター。
ピーターは隠れ家の近くでバイク用のゴーグルを拾います。
素敵な宝物に二人は喜び、アーチ―の家へ移動しようとします。
が、そこに大きな子どもたちが現れ、ゴーグルを横取りしようと絡んできます。
ニューヨークこわい。
しかしピーターははっきりと拒否し、両手のげんこつを固めて大きな子たちに立ち向かう姿勢を見せます。
強くなったね…。
けれども一瞬の隙を衝かれ、ピーターは殴り倒されてしまいます。
道に転がったゴーグルをウィリーが咥えて逃走します。
大きな子たちはウィリーを追いかけ、ピーターはアーチ―と隠れ家で落ち合おうと約束してばらばらに逃げ出します。
ウィリーは必ず隠れ家に戻ってくると信じて。
二人は無事に隠れ家に辿り着き、息を殺して土管から様子を伺います。
ウィリーはいましたが、いじめっ子たちの姿も見えます。
そこでアーチ―が機転を利かせ、土管を伝声管にしてウィリーを呼び込みます。
ウィリーはゴーグルを咥えたまま、土管を通って来ます。
さらにピーターは土管をうまく利用して追手を陽動し、無事にアーチ―の家へと逃げ切ります。
二人は小さな勝利に笑い合うのでした。
★ ★ ★
キーツさんの作品から伝わる温かさは、どう言ったらいいのでしょう。
陳腐な言い回しでしかないけど、やっぱり深い愛情、でしょうか。
デビュー前から温めていた主人公ピーターに対してはもちろん、キャラクターのひとりひとり、舞台となるニューヨークの街並み、作品の隅から隅まで、そしてそれを読む読者に対しての愛情も感じずにはいられません。
あの小さかったピーターが、自分のプライドをかけて大きないじめっ子たちに立ち向かうまでに成長したのだと思うと感慨深いものがあります。
実際、作者の育ったニューヨークではこんな光景はよくあったのでしょう。
小さい子どもたちが自分で自分の身を守り、機転を利かせて危機を脱するシーンには共感しますし、そうした経験がさらに子どもたちを成長させるのだという気もします。
とはいえ、現代では殴ったら大問題ですよね。
今でも喧嘩くらいはあるのかもしれないけど、表立っての殴り合いよりももっと陰湿な攻撃から身を護る術も必要な世の中になってきているのを感じます。
どちらがいいとは言えませんけど。
推奨年齢:6歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
ピーターとアーチ―の名コンビ度:☆☆☆☆☆
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今回はレイモンド・ブリッグズさんの「くまさん」を紹介しましょう。
作・絵:レイモンド・ブリッグズ
訳:角野栄子
出版社:小学館
発行日:1994年12月20日
追悼記事は書けませんでしたが、ブリッグズさんは昨年8月に鬼籍に入られています。
テキストのない絵本「ゆきだるま」(スノーマン)が良く知られていますが、コマ割りと吹き出しセリフによるコミック形式の「さむがりやのサンタ」「風が吹くとき」といった作品も傑作ぞろいです。
少年とゆきだるまの切ない友情を描いたり、人間臭いサンタの生活と仕事を描いたり、強烈な風刺とブラックユーモアで反戦と反核を訴えたりと、幅広い作風の作家さん。
この「くまさん」はいわば「ゆきだるま」の姉妹作のような作品ですね。
主人公は少年から少女に、友情を結ぶ相手はゆきだるまから大きなくまに。
対象に向かう心情も、冒険に連れ出してくれるゆきだるまと、世話をしてあげるくまという風に、どこかに男の子と女の子の描き分けのような傾向が伺えます。
もちろん古いジェンダー観だと指摘されればその通りかもしれませんけど、そこは時代なので。
しかしながら今回私が特筆したいのは内容よりも本のサイズです。
邦訳版は37cm×27cmという大型絵本で出版されていますが、それによって伝わるくまさんの迫力が半端ない。
窓から少女の寝室に侵入してくるシロクマ。
このでかさ。
可愛さと怖さを併せ持つ動物ナンバーワンじゃないでしょうか。
目を覚ました少女ティリーはまったく驚かず怖がらず、くまさんといっしょに夜を明かします。
次の日、両親にくまさんのことを話しますが、両親はティリーの空想だとして呆れたり笑ったり。
こんな大きなくまがいるのですから両親が気が付かないわけはないのですが、そこは描き方の妙味でして、両親の視線は常にくまを捉えていません。
ですのでくまさんが必ずしもティリーの空想にだけ存在するとは断言できないような構造になっています。
ティリーはくまさんをお風呂で洗ったり、ミルクを飲ませたり、うんちやおしっこの片づけをしたりと世話を焼きます。
時には怒ってお説教。
おそらくは普段自分が母親あたりに言われているお説教をそのまま向けているのでしょう。
お人形遊びあるあるですね。
ティリーはくまさんにずっと一緒にいて欲しいと望みますが、くまさんはそっと部屋を後にし、北極へと帰っていきます。
すべてはティリーの空想の世界だったのか、それとも…。
★ ★ ★
絵本という芸術が、テキストや絵のみでできているわけではなく、そのサイズや製本含めた表現であるということがよくわかります。
大型版絵本の中には子どもが開いたページの上に乗れるほどの大きさのものもありますが、この大きさあってこその「くまさん」だと思います。
だからこそ、教科書などで知った絵本作品でも、原作に触れるとまるで別の印象や発見があるのです。
怖くもあり、可愛くもあり、寄り添った時の安心感もあり、面倒をみたくなる対象でもあるくまさん。
どこか「おちゃのじかんにきたとら」を彷彿とさせるところもありますね。
空想上の友だちという点では「アルド」に通じるでしょうか。
絵本の一つの型ともいうべき構成ですが、やはり最大の特徴はくまさんの巨大さかもしれません。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
くまさん登場時のインパクト度:☆☆☆☆☆
■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「くまさん」
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たまには毛色の違った絵本も紹介していこうということで、今回は写真絵本。
「月刊かがくのとも」より、「せんたくばさみがあつまって…」。
作:さとうゆみか
撮影:ピーター・ルービン
出版社:福音館書店
発行日:2011年8月1日
単行本化されてなくて少々入手困難なのですが、月刊絵本かがくのともにはこうした隠れた名作が多いですね。
個人的に大好きなので取り上げました。
洗濯ばさみアート写真集とでもいうべき内容ですが、想像力を刺激される素敵な物語性も有した絵本です。
使う洗濯ばさみはオーソドックスな「A」の形のみですが、鮮やかな色を繋げていくとこんなにも美しい。
鳥?馬?魚?ヤマアラシ?
洗濯ばさみの表現力ってすごい。
本当に洗濯ばさみに命と意思があるように見えてきます。
ページをめくるたびに楽しい。
そして圧巻のラストは…。
なんと巨大な竜を作ってしまいます。
夕日をバックに空を飛ぶ洗濯ばさみ竜。
ため息が出るほど素晴らしい。
★ ★ ★
子どもの頃を思い出しますね。
家の洗濯ばさみで遊びましたねえ。
もちろん繋げたりして。
ひたすら同じように繋げていくと形状的にカーブしていって、いつかは切れちゃうんですけど、そこを工夫すると長くなったり円になったり。
この絵本ではさらに複雑な繋げ方をして動物や竜を表現しています。
色使いも見事。
子どもは何でも遊びの道具にすると言いますけど、洗濯ばさみはシンプルでありながら「挟む」という性能と独特のフォルムによって無限の想像力を働かせてくれるんですね。
うちの息子も洗濯ばさみでよく遊んでました。
思い切り遊ばせてやりたくてそのために大量の洗濯ばさみを用意したりしましたが、さすがに竜までは辿り着かなかったです。
途中で外れちゃう。
写真の竜はたぶん糸で吊ってるんでしょうけど、洗濯ばさみのピンチ力だけでは重量で外れそうな気がしますね。
接着剤も使ってるんでしょうか。
いずれにしても圧巻ですよね。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆
洗濯ばさみの可能性度:☆☆☆☆☆
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古典絵本といえば昔話や民話。
昔話や民話のいいところは数々ありますが、著作権が無いこともその一つに数えられると思います。
王道と言われる昔話絵本でも、時代時代の要請に応えて微妙にその形を変えていますし、そうやって変化し続ける性質があるからこそ、長久の時を超えて昔話が生き残り続けられるのだと言えます。
そしてまた、著作権がなく、なおかつ誰でも内容を知っているからこそ様々なパロディを楽しめるのも昔話の特徴です。
今回は大人から子どもまで楽しめる極上のパロディ絵本「3びきのかわいいオオカミ」を紹介します。
文:ユージーン・トリビザス
絵:ヘレン・オクセンバリー
訳:こだまともこ
出版社:冨山房
発行日:1994年5月18日
元ネタは言わずもがな、「3びきのこぶた」です。
このブログでは過去何作かこの王道絵本のユニークなパロディを取り上げています。
上記2作品いずれも作者の独創性や遊び心が満載の傑作ですが、今作はお話の筋そのものに関してはいわゆる逆転ものでして、オオカミとこぶたの役割を入れ替えた内容になっています。
こう書くとさほど特徴的ではないように見えますけど、そのインパクトは他パロディに勝るとも劣らず。
お母さんから独り立ちを促された3びきのかわいいオオカミたちは、レンガで家を作ります。
最初からレンガ。そしてバラバラではなく3びき一緒に暮らします。
そこへ「わるいおおブタ」が通りかかります。
いや、顔。これは悪い。
おおブタはオオカミたちの住居に侵入しようとしますが、レンガ造りの家は息を吹いたくらいでは壊れません。
するとおおブタはハンマーを持ってきて家を叩き壊してしまいます。
この力業。
オオカミたちは逃げ出し、次はコンクリートでさらに頑丈な家を建てます。
おおブタの悪事はさらにエスカレートし、今度は電動ドリルで家を破壊。
次にはオオカミたちは鉄条網や南京錠を使い、さらに厳重なセキュリティハウスを建築。
もはや家と言うより要塞。
それでも諦めないおおブタは、とうとうダイナマイトを持ち出して家を吹き飛ばしてしまいます。
もうめちゃくちゃ。
いくら頑丈な素材で家を作っても、それを超える兵器とのイタチごっこが繰り返されるだけだという現実に、オオカミたちは発想を改め、今度は花で家を作ってみます。
すると今度もやってきたおおブタは、花のいい香りを吸い込んで気分が良くなり、だんだん優しい心になっていき、ついには踊り出します。
改心したおおブタはオオカミたちと仲良くなり、4ひきで幸せに暮らすようになるのでした。
★ ★ ★
おおブタの突き抜けたワルっぷりと破壊行動が面白過ぎる。
ヘレン・オクセンバリーさんによる絵の力も大きいです。
おおブタの表情や躍動感も見事だし、クロッケーやバドミントンに興じるオオカミたちの描写もおしゃれ。
あれだけ極悪非道のワルだったおおブタがあっさり改悛してしまうラストを含めてユーモラスですが、ここには社会から犯罪を減らすためにはセキュリティよりも花々に象徴される人の心の余裕こそが有効なのだというメッセージが見られます。
作者のユージーン・トリビザスさんは作家であると同時に著名な犯罪学者でもあるそうで、なるほどと納得。
それにしてもやっぱりおおブタのインパクトがほとんど持って行ってますけどね。
それもまたよし。
面白ければメッセージは後から伝わります。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆☆
おおブタの迫力度:☆☆☆☆☆
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