2017.02.14 Tuesday
絵本の紹介「おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今日はバレンタインデーということで、やっぱりチョコレートの出てくる絵本を紹介しようと思います。
アニメも大人気のロングセラー・シリーズより、「おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく」です。
原作:M&H.A.レイ
訳:福本友美子
出版社:岩波書店
発行日:1999年10月25日
好奇心いっぱいで、知りたがりやのおさるの「ジョージ」の引き起こす事件の数々を、優しさとユーモアたっぷりに描いた傑作シリーズ。
このブログで取り上げるのは初めてですね。
有名な作品ですが、刊行されている絵本の全体を把握しようと思うと、少々ややこしいところがあります。
本文に入る前に、せっかくなのでちょっと整理します。
まず、そもそもこのシリーズは新旧に分かれています。
ハンス・アウグスト・レイとマーガレット・レイ夫妻による、邦題「ひとまねこざる」シリーズと、ハンスさんの死後、ヴァイパー・インタラクティヴが制作した(挿し絵はヴァイパーやマーサ・ウェストンが担当)した「おさるのジョージ」シリーズです。
元祖「ひとまねこざる」シリーズは全6冊。
ところが、日本で刊行されているものは、原著の発行順と違っているんですね。
だから、本当に一番最初から「ジョージ」を読もうと思ったら、「ひとまねこざる」ではなく、「ひとまねこざるときいろいぼうし」から読まないと話が繋がらないんです。
まあ、そこまで順序にこだわる必要もありませんが……。
というわけで、この「おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく」は、後期のシリーズであり、レイ夫妻の作品ではありません。
しかし、絵柄もキャラクターも、そして「ジョージ」の芯となる部分(後述します)も、わりと忠実に再現していると思います。
仲良しの「きいろいぼうしのおじさん」に連れられてチョコレート工場へ来たおさるのジョージ。
おじさんがチョコレートの代金を払っている間に、工場の中の様子が気になり、中に入って行ってしまいます。
工場では、大きな機械からベルトコンベアに乗って大量生産されるチョコレートを、職員さんたちが流れ作業で箱詰めしています。
機械の中がどうなっているのか、ジョージは好奇心を抑えきれず、さらに近づいて覗き込みます。
その時、知らずに足でレバーを踏んでしまい、ベルトコンベアのスピードをMAXにしてしまいます。
作業が追い付かなくなり、慌てる職員さんたち。
そんなことはお構いなしに、大好きなバナナクリームのチョコレートを追いかけるジョージ。
そのついでに、他のチョコレートを箱詰めします。
その手際の良さに、工場の混乱は収まり、結局のところジョージはお咎めなしで、おまけにおみやげまで渡されます。
でも、ジョージはおみやげを断って、黄色い帽子のおじさんと帰ります。
実は、どさくさに紛れてチョコレートをお腹いっぱい食べてたんですね。
★ ★ ★
前述したこのシリーズの芯とは、ジョージのいたずらが咎められないことです。
ジョージは悪意はないものの、毎回好奇心から事件を起こしてしまいます。
結構な騒動になることもしばしばですが、黄色い帽子のおじさんを始め、周りの大人たちは基本的にジョージに対して寛大です。
「おさるのジョージ」の人気の源は、実はここにあるのかもしれません。
何度失敗しても、好奇心からの行動を抑えられないジョージは、まさに子どもの化身です。
子どもたちは知りたい気持ち、やってみたい気持ちを存分に発散させるジョージと自分自身を重ね合わせ、痛快さを感じます。
そして、どんなに騒ぎを起こしても、説教や罰を与えられることなく、最後には赦してもらえる。
子どもにとって、これは理想の世界なのです。
ことに、保護者である黄色い帽子のおじさんのジョージに対する理解の深さと寛容さは素晴らしいです。
『上司にしたい絵本のキャラクターランキング』(そのうちやってみようかな)でも、おそらく上位間違いなし。
「責任は私が取る。好きにやってみなさい」的な。
エンドレスな子どものいたずらを、笑って許せる広い心が欲しい時には、黄色い帽子のおじさんを思い出しましょう。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
おじさんのファッションが最先端すぎる度:☆☆☆☆☆
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