2017.02.02 Thursday
絵本の紹介「ティッチ」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介する絵本は「ティッチ」です。
作・絵:パット・ハッチンス
訳:石井桃子
出版社:福音館書店
発行日:1975年4月25日
ハッチンスさんはイギリス出身で、ニューヨーク滞在中に発表した「ロージーのおさんぽ」で絵本界デビューしました。
明るい色彩と、多くを語らない文章で、子どもを引き付ける展開の作品が特徴。
この「ティッチ」は、兄弟のおはなしです。
ティッチは小さな末っ子。
兄さんと姉さんはいろいろと大きくていいものを持っていますが、ティッチが持っているのは小さなものばかり。
おもちゃも、自転車も、楽器も……。
そのたびにティッチの不満そうな顔と、兄さんたちの得意げな顔が描かれます。
セリフはありませんが、心情は十分に伝わってきます。
最後に、兄さんが大きなショベルで、姉さんの大きな植木鉢に土を入れ、ティッチが小さな種を植えると……。
その種は芽を出し、ぐんぐん大きく育ちます。
小さな種と、成長途上にある小さな末っ子を重ね合わせたラストシーンです。
★ ★ ★
時代とともに家族の在り方が変われば、当然兄弟関係も変化します。
ティッチのように、兄弟間での劣等意識を持つ末っ子は、現在でもたくさんいるのでしょうか。
例えば父親が力を持ち、子どもが父親に恐怖を感じるような家庭は、今ではずいぶん減ったでしょう。
もっとも、その代わりに、別の歪みが家庭を支配しているケースが増えたように感じますが。
なんにせよ、「劣等感」というものは非常に厄介で、できれば子どもに植え付けたくない感情です。
下手をすると人生の長きに渡って悪影響を及ぼし続けますから。
でも、この絵本に描かれているように、子どもにそういう負の感情を抱かせる要因は、家庭にこそ充満しているのです。
「あんたはまだ小さいんだから」
「お母さんが代わりにやってあげる」
「危ないから、やめなさい」
そんな何気ないひとつひとつの言葉が、子どもの心に刺さってはいないでしょうか。
子どもの自尊心を損なわないことは、とても難しいですが、非常に重要なことだと思います。
推奨年齢:3歳〜
読み聞かせ難易度:☆
兄さんたちのドヤ顔が過ぎる度:☆☆☆
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