絵本の紹介「ティッチ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介する絵本は「ティッチ」です。

作・絵:パット・ハッチンス

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:1975年4月25日

 

ハッチンスさんはイギリス出身で、ニューヨーク滞在中に発表した「ロージーのおさんぽ」で絵本界デビューしました。

明るい色彩と、多くを語らない文章で、子どもを引き付ける展開の作品が特徴。

 

この「ティッチ」は、兄弟のおはなしです。

ティッチは小さな末っ子。

兄さんと姉さんはいろいろと大きくていいものを持っていますが、ティッチが持っているのは小さなものばかり。

 

おもちゃも、自転車も、楽器も……。

 

そのたびにティッチの不満そうな顔と、兄さんたちの得意げな顔が描かれます。

セリフはありませんが、心情は十分に伝わってきます。

最後に、兄さんが大きなショベルで、姉さんの大きな植木鉢に土を入れ、ティッチが小さな種を植えると……。

その種は芽を出し、ぐんぐん大きく育ちます。

小さな種と、成長途上にある小さな末っ子を重ね合わせたラストシーンです。

 

★      ★      ★

 

時代とともに家族の在り方が変われば、当然兄弟関係も変化します。

ティッチのように、兄弟間での劣等意識を持つ末っ子は、現在でもたくさんいるのでしょうか。

 

例えば父親が力を持ち、子どもが父親に恐怖を感じるような家庭は、今ではずいぶん減ったでしょう。

もっとも、その代わりに、別の歪みが家庭を支配しているケースが増えたように感じますが。

 

なんにせよ、「劣等感」というものは非常に厄介で、できれば子どもに植え付けたくない感情です。

下手をすると人生の長きに渡って悪影響を及ぼし続けますから。

 

でも、この絵本に描かれているように、子どもにそういう負の感情を抱かせる要因は、家庭にこそ充満しているのです。

 

あんたはまだ小さいんだから

お母さんが代わりにやってあげる

危ないから、やめなさい

そんな何気ないひとつひとつの言葉が、子どもの心に刺さってはいないでしょうか。

 

子どもの自尊心を損なわないことは、とても難しいですが、非常に重要なことだと思います。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

兄さんたちのドヤ顔が過ぎる度:☆☆☆

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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