2017.01.25 Wednesday
絵本の紹介「しろくまちゃんのほっとけーき」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
みなさん、今日が何の日かご存知ですか?
今日、1月25日は「ホットケーキの日」なんです(何にでも記念日があるものですね)!
というわけで、必然的に(?)今回取り上げるのは「しろくまちゃんのほっとけーき」です。
絵:わかやま けん
出版社:こぐま社
発行日:1972年10月15日
「こぐまちゃん」シリーズのスピンオフ的作品でありながら、シリーズ中最も人気が高いというこの作品。
まさに「ホットケーキばかりか主役を食ってしまった」名脇役として絵本界に名高いしろくまちゃん。
内容は至ってシンプルで、しろくまちゃんがお母さんとホットケーキを焼き、友達のこぐまちゃんと一緒に食す、というストーリー。
卵を落として割ってしまったり、ボウルの中身をはね散らかしたりといった描写に、子どもが真似をすると苦情も寄せられたとか。
いいじゃないですか、割ったって汚したって、それも子どもにとっては必要なんだから。
単純化された造形、太い線の輪郭、いくつかの色の組み合わせによる鮮やかな色彩は、シリーズ通しての特徴であり、「ちいさなうさこちゃん」シリーズの生みの親・ディック・ブルーナの影響を受けていることは以前の記事で触れました。
「こむぎこ おさとう ふくらしこ こなは ふわふわ ぼーるは ごとごと だれか ぼーるを おさえてて」
このあたりのリズム感は本当に素晴らしいと思います。
このシーンでは見ている子どもが、無意識に絵の中のボウルに向かって手を指し伸ばすしぐさを見せることがあります。
画面に、手伝ってくれるはずのお母さんがいないことも計算のうちでしょう。
しかし、この絵本の最大の見どころは、やはり見開きでホットケーキを焼くシーン。
「ぽたあん」「どろどろ」「ぴちぴちぴち」「ぷつぷつ」「やけたかな」「まあだまだ」「しゅっ」「ぺたん」「ふくふく」「くんくん」「ぽいっ」「はい できあがり」
こんな単純化された線と色と言葉で、これほど雄弁にホットケーキの焼けるさまを説明した絵が、他にあるでしょうか。
子どもたちはこのページを食い入るように、いつまでも見つめます。
私もいつまでも見ていられます。
本当に美しいです。
さあ、今日はみんなでホットケーキを焼きましょう。
けれども、この大ロングセラーを手掛けたこぐま社の佐藤英和さんは、どうしてこの絵本がそこまで子どもに人気なのか、本当のところはわからないと言っておられます。
子どもの絵本を見る目は確かですが、その法則を大人が発見しようとするのは至難です。
子どもは批評をしませんからね(読むか、読まないかという行動で示すだけで)。
実際、似たような絵で似たような作品を作ったとて、必ずしもロングセラーになるわけではないでしょう。
私は、上で述べたような要素がいくつも重なり合って、絵本が唯一無二の芸術作品となったとき、子どもの心を掴むのだと思っています。
それは本当に難しく、磨かれた感性と、注意深さと、根気とを必要とされる作業です。
しかし何よりも重要なのは、子どもに対する誠実さであり、敬意だと思います。
流行を追いかけることに慣れた大人が、気安く作ったような絵本が、たとえ一時は子どもの気を引いたとしても、長い間選ばれ続けるということは、けっしてありえないのです。
推奨年齢:2歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
ホットケーキ食べたい度:☆☆☆☆☆
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