2017.01.18 Wednesday
絵本の紹介「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今年の日本列島大寒波は、数年に一度のレベルだとか。
寒いはずですね。
積雪や路面凍結などの被害に遭われた地域の方々、本当に大変だったろうと思います。
大阪に住んでいると、いくら寒いと言ったって、大雪被害なんてものには滅多と遭遇しません。
たまに積もるとテンション上がったりして。
雪の怖さを知らないんですね。
ですから、大雪の時に活躍する除雪車なども、私はテレビや図鑑でしかお目にかかったことがありません。
今回紹介するのは、巨匠・バージニア・リー・バートンさんの「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」です。
文・絵:バージニア・リー・バートン
訳:石井桃子
出版社:福音館書店
発行日:1978年3月20日(新版)
バートンさんに関する詳しい記述は、過去記事を参照してください。
バートンさんは作品ごとに様々な技術を駆使しますが、この絵本ではカラーセパレーションという版画的な手法を試みています。
特筆すべきは、その細部に至るまでのこだわりの描写。
絵本の舞台は「じぇおぽりす」という町ですが、見開きでその地図を描き、番号を打って、役所、駅、学校、病院などの施設がどこに位置するかまで紹介するという丁寧さ。
その「じぇおぽりす」の道路管理部で働く、赤い大きなトラクターの「けいてぃー」が主人公です。
けいてぃーは力が強く、いろいろな部分品を装着することによって、幅広い仕事をこなすことができました。
冬が来て、けいてぃーはブルドーザーを外して除雪機を装着し、大雪に備えて待機していました。
やがて雪が降り、どんどん積もり、町が白く覆われていく中で、けいてぃーはじっと出番を待ち続けます。
この、「真打ち登場」までの演出が実に憎い。
雪に包まれた、ほとんど絵のない見開きを使って、淡々と語られる文。
「30せんち………60せんち………1めーとる………」
「みちは とおれなくなり………くるまは はしれなくなり………」
「けいさつは まちを まもれなくなり………でんわせんや でんとうせんは きれ………」
「けれども そのとき ただひとり………」
と来て、ページをめくると、真っ白な雪の中を、ただ一台で突き進むけいてぃーの姿が。
「けいてぃーは うごいていました」
そしてけいてぃーは、助けを求める人々の声に応じて、次々と道を付けて行きます。
郵便局を助け、お医者さんを助け、消防車を助け、飛行機を助け……。
くたびれてきても、けいてぃーは決して仕事を途中でやめたりしません。
むしろ溢れる情熱と喜びをもって自分の仕事に邁進します。
読んでいる子どもも、きっとけいてぃーの胸のうちの誇らしさを共有するでしょう。
★ ★ ★
ちょっと文が多く、話も長めですので、読み聞かせには時間がかかります。
前述の地図のページに戻れば、けいてぃーの通った道筋を確認することもできるし、細かな絵を拾いながら、子どもと一緒にじっくりと楽しんでください。
ちなみに、冒頭の献辞が書かれたページをよく見ると、けいてぃーの他に、「ちいさいおうち」や「マイク・マリガンとスチーム・ショベル」「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」などの、バートンさんの他の作品に登場したキャラクター(全部人間じゃないけど)が出演しています。
献辞は「ジョン・フロム・ジニー」。
どうやら、バートンさんは子どもたちにではなく、夫のジョージ・ディミトリオスさんに向けてこの絵本を捧げたようです。
そうだとすると、これは仕事熱心なあまりなかなか家に帰ってこない夫に対する、からかい半分、感謝半分、それにちょっぴり不満を込めた作品なのかもしれませんね。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
仕事一徹度:☆☆☆☆☆
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