絵本の紹介「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年の日本列島大寒波は、数年に一度のレベルだとか。

寒いはずですね。

 

積雪や路面凍結などの被害に遭われた地域の方々、本当に大変だったろうと思います。

大阪に住んでいると、いくら寒いと言ったって、大雪被害なんてものには滅多と遭遇しません。

たまに積もるとテンション上がったりして。

雪の怖さを知らないんですね。

 

ですから、大雪の時に活躍する除雪車なども、私はテレビや図鑑でしかお目にかかったことがありません。

 

今回紹介するのは、巨匠・バージニア・リー・バートンさんの「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」です。

文・絵:バージニア・リー・バートン

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:1978年3月20日(新版)

 

バートンさんに関する詳しい記述は、過去記事を参照してください。

 

≫絵本の紹介「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」

 

バートンさんは作品ごとに様々な技術を駆使しますが、この絵本ではカラーセパレーションという版画的な手法を試みています。

特筆すべきは、その細部に至るまでのこだわりの描写。

絵本の舞台は「じぇおぽりす」という町ですが、見開きでその地図を描き、番号を打って、役所、駅、学校、病院などの施設がどこに位置するかまで紹介するという丁寧さ。

 

その「じぇおぽりす」の道路管理部で働く、赤い大きなトラクターの「けいてぃー」が主人公です。

けいてぃーは力が強く、いろいろな部分品を装着することによって、幅広い仕事をこなすことができました。

 

冬が来て、けいてぃーはブルドーザーを外して除雪機を装着し、大雪に備えて待機していました。

やがて雪が降り、どんどん積もり、町が白く覆われていく中で、けいてぃーはじっと出番を待ち続けます。

 

この、「真打ち登場」までの演出が実に憎い。

雪に包まれた、ほとんど絵のない見開きを使って、淡々と語られる文。

30せんち………60せんち………1めーとる………

みちは とおれなくなり………くるまは はしれなくなり………

けいさつは まちを まもれなくなり………でんわせんや でんとうせんは きれ………

けれども そのとき ただひとり………

 

と来て、ページをめくると、真っ白な雪の中を、ただ一台で突き進むけいてぃーの姿が。

けいてぃーは うごいていました

そしてけいてぃーは、助けを求める人々の声に応じて、次々と道を付けて行きます。

郵便局を助け、お医者さんを助け、消防車を助け、飛行機を助け……。

くたびれてきても、けいてぃーは決して仕事を途中でやめたりしません。

むしろ溢れる情熱と喜びをもって自分の仕事に邁進します。

読んでいる子どもも、きっとけいてぃーの胸のうちの誇らしさを共有するでしょう。

 

★    ★    ★

 

ちょっと文が多く、話も長めですので、読み聞かせには時間がかかります。

前述の地図のページに戻れば、けいてぃーの通った道筋を確認することもできるし、細かな絵を拾いながら、子どもと一緒にじっくりと楽しんでください。

 

ちなみに、冒頭の献辞が書かれたページをよく見ると、けいてぃーの他に、「ちいさいおうち」や「マイク・マリガンとスチーム・ショベル」「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」などの、バートンさんの他の作品に登場したキャラクター(全部人間じゃないけど)が出演しています。

 

献辞は「ジョン・フロム・ジニー」。

どうやら、バートンさんは子どもたちにではなく、夫のジョージ・ディミトリオスさんに向けてこの絵本を捧げたようです。

 

そうだとすると、これは仕事熱心なあまりなかなか家に帰ってこない夫に対する、からかい半分、感謝半分、それにちょっぴり不満を込めた作品なのかもしれませんね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

仕事一徹度:☆☆☆☆☆

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

絵本専門の古本屋 えほにずむ

〒578-0981

大阪府東大阪市島之内2-12-43

URL:http://ehonizm.com

E-Mail:book@ehonizm.com

コメント