2017.01.17 Tuesday
絵本の紹介「ゆずちゃん」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
阪神・淡路大震災から、今日で22年も経つのですね。
「あの日」を描いた絵本、「ゆずちゃん」を紹介しましょう。
作:肥田美代子
絵:石倉欣二
出版社:ポプラ社
発行日:1995年5月
小学生の男の子・たいち少年の目線で、震災で亡くなったゆずちゃんという女の子(あとがきからすると実在したようです)のことが語られています。
隣の席のゆずちゃんは、かけっこは早いけど、跳び箱は苦手。
歌はうまいけど、算数は嫌い。
将来の夢は、風船屋さん。
よく笑うゆずちゃんに、たいちは時々意地悪をしてしまうけれど、内心では好感を抱いています。
しかし、震災の日、ゆずちゃんは倒壊した家の下敷きになって死んでしまいます。
ゆずちゃんの死を、受け入れられないたいち少年。
ゆずちゃんとのお別れの日、みんなが、ゆずちゃんの好きだった風船を空に飛ばします。
「ゆずちゃん、―――ふうせん、みえるか」
★ ★ ★
親しい人間との、突然の、永久の別れ。
正直、子どもに読み聞かせるのは辛い絵本です。
震災の日、中学生だった私は大阪市内の自宅で寝ていました。
生まれて初めての大きな揺れを経験しましたが、家の中がめちゃめちゃになった程度で、家族の誰にも怪我一つありませんでした。
そのせいか、あまり事の重大さを認識していませんでした。
怖いとも何とも思わず、ちょっとした非日常体験をした程度に感じていたのです。
本当に精神年齢の幼い、想像力も乏しい子どもだったんですね。
ですが、ほんの近くにある神戸では、比較にならないほどの甚大な被害が出ており、私と同じくらいの年齢の子どもたちも大勢亡くなっていたのです。
同級生の中にも、親類を亡くした子がいました。
当然のように生きていること。
それ自体が、実はとてつもない確率の幸運であることを、私たちは忘れがちです。
明日起きるかもしれない地震、災害、事故。
私がそれらを本当に怖いと感じたのは、子どもが生まれてからでした。
最悪の光景を、想像せずにはいられないからです。
そしてその度に、今してやれるだけのことをしてやっているか―――と自問するのです。
推奨年齢:6歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆☆
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