絵本の紹介「ゆずちゃん」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

阪神・淡路大震災から、今日で22年も経つのですね。

 

「あの日」を描いた絵本、「ゆずちゃん」を紹介しましょう。

作:肥田美代子

絵:石倉欣二

出版社:ポプラ社

発行日:1995年5月

 

小学生の男の子・たいち少年の目線で、震災で亡くなったゆずちゃんという女の子(あとがきからすると実在したようです)のことが語られています。

 

隣の席のゆずちゃんは、かけっこは早いけど、跳び箱は苦手。

歌はうまいけど、算数は嫌い。

将来の夢は、風船屋さん。

 

よく笑うゆずちゃんに、たいちは時々意地悪をしてしまうけれど、内心では好感を抱いています。

 

しかし、震災の日、ゆずちゃんは倒壊した家の下敷きになって死んでしまいます。

ゆずちゃんの死を、受け入れられないたいち少年。

ゆずちゃんとのお別れの日、みんなが、ゆずちゃんの好きだった風船を空に飛ばします。

ゆずちゃん、―――ふうせん、みえるか

 

★    ★    ★

 

親しい人間との、突然の、永久の別れ。

正直、子どもに読み聞かせるのは辛い絵本です。

 

震災の日、中学生だった私は大阪市内の自宅で寝ていました。

生まれて初めての大きな揺れを経験しましたが、家の中がめちゃめちゃになった程度で、家族の誰にも怪我一つありませんでした。

 

そのせいか、あまり事の重大さを認識していませんでした。

怖いとも何とも思わず、ちょっとした非日常体験をした程度に感じていたのです。

本当に精神年齢の幼い、想像力も乏しい子どもだったんですね。

 

ですが、ほんの近くにある神戸では、比較にならないほどの甚大な被害が出ており、私と同じくらいの年齢の子どもたちも大勢亡くなっていたのです。

同級生の中にも、親類を亡くした子がいました。

 

当然のように生きていること。

それ自体が、実はとてつもない確率の幸運であることを、私たちは忘れがちです。

 

明日起きるかもしれない地震、災害、事故。

私がそれらを本当に怖いと感じたのは、子どもが生まれてからでした。

最悪の光景を、想像せずにはいられないからです。

そしてその度に、今してやれるだけのことをしてやっているか―――と自問するのです。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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