2017.01.10 Tuesday
絵本の紹介「ピヨピヨスーパーマーケット」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今年は酉年。
ということで、新年最初の絵本紹介は、「ピヨピヨスーパーマーケット」を取り上げます。
作・絵:工藤ノリコ
出版社:佼成出版社
発行日:2003年12月
「ノラネコぐんだん」シリーズ、「ペンギンきょうだい」シリーズなど、次々とヒット作を生み出し、今、最も人気の絵本作家の一人、工藤ノリコさん。
私も大好きです。
はまっちゃいました。
はっきり言って、この人の絵本は子どものためよりも、自分のために集めてます。
工藤さんの絵本はそのくらい、大人にも面白いのです。
この「ピヨピヨ」シリーズは、現在6作品出版されています。
ヒヨコ5兄弟と、にわとり両親の、あったか家族の日常を描いた内容で、これはその一作目。
スーパーマーケットへお買い物に来たお母さんとピヨピヨたち。
お母さんが牛乳のタイムセールに飛びついている隙に、自分たちの欲しいものを次々とカートに入れて行きます。
この陳列棚のリアリティがいい。
「これ、絶対あの商品だ!」というパッケージがずらり。
ピヨピヨたちはお菓子ばかりを選んでレジへ向かいますが、すんでのところでお母さんに阻止されます。
手元に残されたのは30円のアメ(みんな知ってるアレですよね)だけ。
不満いっぱいのピヨピヨ。
でも、家に帰って、お父さんとお風呂に入り、出てみると……
用意されていたのは、大好きなミートソーススパゲッティで、みんな大喜び!
★ ★ ★
まずなんと言っても、ピヨピヨたちがキュートすぎる。
初めて見た時は「なんだこのブサイク」と思ったのですが、読んでいるうちにもう、表情も行動も可愛くて可愛くて。
そして、画面に無駄なものがない。
陳列棚と同様、描写のひとつひとつにリアリティと必然性があります。
例えば、お母さんがスーパーで買ったものは全部確認できますが、それらはちゃんと食卓に並ぶ料理に必要なものばかりです(翌朝の朝食に至るまで)。
お父さんが持って帰ってきたお花は花瓶に生けられています。
また、本編と関係なくとも、スーパーの他の客たちも、それぞれ個性豊かに行動しています。
「買って買って」と駄々をこねる子どもたちとか。
うさぎのお母さんはちゃんとタイムセールの牛乳を買っていますし。
読むたびにそうした発見の楽しみがあります。
これらの特徴は、他の工藤さんの作品にも共通するものです。
また、シリーズを通して読むと、どこかに前回の作品からの繋がりが見えたりして、ますます面白いです。
さて、ちょっとファンとして好意的に語りすぎました。
もう少し冷静に見てみましょう。
子どもへの読み聞かせ、という視点からはどうでしょうか。
この絵本には(他の工藤さんの作品も多くはそうですが)地の文がありません。
セリフのみで、あとは絵を見て想像するしかないので、実は結構読み聞かせが難しい。
子どもが幼ければ、どうしても説明を入れてしまいます。
工藤さんは漫画家出身ということもあり、漫画的な表現も目立ちます。
今は親たちのハートを掴むことで人気を博していますが、果たして彼女の作品は後世に残るロングセラーとなりうるでしょうか。
しかし、別に絵本は地の文がなければダメ、というものでもありません。
かの有名な「じごくのそうべえ」なども、セリフのみで構成されてます。
絵柄は漫画的でも、前述のように描写はリアリティがありますし、テーマもオーソドックスです。
そもそも、絵本の重要条件である「絵で物語る」という点に関しては、絵本は漫画とも相通じるものがあります。
もちろん、漫画と絵本は大きく違います。
しかし、日本が世界に誇る文化にまで成長した「漫画」の技法を、古典文化である「絵本」の世界に取り入れるという試みは、日本の現代絵本作家にしかできない実験とも言えます。
そして工藤さんは、絵本の基盤を破壊しないよう、細心の注意を払いながら、そうした作業を行っているように思えます。
それが成功か失敗かを判断するのは、われわれではなく、子どもたちの目に委ねられるべきですが。
推奨年齢:3・4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
ピヨピヨの愛らしさ度:☆☆☆☆☆
■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。
■絵本の買取依頼もお待ちしております。
絵本専門の古本屋 えほにずむ
〒578-0981
大阪府東大阪市島之内2-12-43
E-Mail:book@ehonizm.com