絵本の紹介 ホフマン「おおかみと七ひきのこやぎ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介する絵本は、フェリクス・ホフマン作画、瀬田貞二訳のグリム童話「おおかみと七ひきのこやぎ」です。

 

誰もが知っているお話ですが、それだけに絵本も様々な形で出版されています。

その中でもこのホフマンさんの作品は、完成度が高く、国際的にも最も評価されています。

 

全体を通して言えることは、作者が「子どもをなめていない」という点です。

 

登場する動物たちはもちろん擬人化されているものの、必要以上に単純化されたり、可愛らしくキャラクター化されてはいません。

このバランス感覚が見事で、メルヘンとは本来こういうものではないかと思います。

ホフマンさんは構図の使い方が群を抜いて素晴らしい作家で、何気ない空白や登場人物の立ち位置まで、物語を盛り上げるために効果的に計算されています。

おおかみが侵入してくる最重要シーンにおいても、画面左側におおかみを配置し、真っ先に視線をそこへ誘導しておいて、右へと絵を追っていくと、子やぎ達が次々に隠れる様子が、臨場感たっぷりに伝わる仕掛けになっています。

そしてストーリーは原作に忠実です。

おおかみはきっちり殺されます。

 

この、おなかに石を詰め込まれて溺死するという結末は、「子どもには残酷である」として、よく改竄されがちです。

しかし、残酷なものを読めば残酷になる、というのはあまりにも短絡思考ですし、子どもというものを理解しようという気が見られない意見です。

 

子どものための物語のルールのひとつとして、わかりやすく、納得のいく形のハッピーエンドである、ということが挙げられます。

絵本の最大の存在価値は、この世界を生きることが素晴らしいことだ、という力強いメッセージを子どもに伝えることにあります。

子どもに生きる力を与えない絵本など、読んで聞かせたいと思いますか?

 

おおかみに次々とこやぎが食べられるシーンは、こやぎに自己を投影する子どもにとって、非常に恐ろしいものです。

その恐怖を心に残さずに物語を終えるためには、絶対的存在であるおかあさんやぎの活躍によって、完全におおかみが退治される必要があるのです。

 

とはいうものの、やっぱり小さな子どもに読み聞かせるには抵抗がある方もいると思います。

そういう方は、「でも、いいものだから……」といって、無理に読み聞かせる必要はありません。

 

絵本は楽しむものです。

読み聞かせは読む側と読んでもらう側の双方に楽しみと安心感がなくてはならないと思います。

 

ですから、読み聞かせる自分が、自信を持ってクライマックスの「おおかみしんだ! おおかみしんだ!」を叫べるようになるまで、子どもの成長をよく観察しながら時を待ちましょう。

 

他のマイルドな「おおかみと7ひきのこやぎ」の絵本も、けっして悪いとは思いません。

「ほんものだけを与えなければ……」と気負うことはないと思います。

 

 

最後に、この絵本に隠されたちょっとした楽しみを。

こやぎたちのお父さんはどこにいるのでしょうか?

 

答えは、上のおおかみ侵入シーンの画像にあります。

わかりますか?

 

ちなみに、裏表紙にもいますよ。

 

 

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