2016.12.12 Monday
絵本の紹介「ぐりとぐらのおきゃくさま」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
クリスマス絵本特集第5回は、おなじみ超ロングセラーシリーズより、「ぐりとぐらのおきゃくさま」(文:中川李枝子、絵:山脇百合子、福音館書店)を紹介します。
マント姿がかわいいぐり&ぐら。
「ぐりとぐら」シリーズについての考察は過去記事をお読みください。
シリーズ屈指の人気を誇るこの作品ですが、ミステリー絵本仕立てになっているのが特徴です。
そう、子どもにとって、これは初めての「推理探偵」物語になるかもしれません。
事件は謎の足跡から。
「これは おとしあなじゃない。 あしあとだぞ」
「うん、たしかに ながぐつの あとだ」
「きつねかな」
「きつねより おおきいよ」
と、ちゃんと論理的推理を進めるぐりとぐら。
足跡を追跡していくと、なぜか自分たちの家にたどり着きます。
謎が謎を呼ぶ展開。
玄関には巨大な長靴が、そして部屋に入ると、真っ赤なオーバー、真っ白な襟巻、真っ赤な帽子が次々に見つかります。
ヒントが小出しされるところも、ミステリーの王道です。
お客様は寝室にもいない、お風呂にもいない。
その時、カステラを焼くいい匂いがしてきて、2ひきが台所へ飛んでいくと、真っ赤なズボンのおじいさんが、でっかいクリスマスケーキを焼いていたのでした。
もちろん、お客様の正体はあのお方なわけですが、このおじいさん、妙に顔が若々しく、最後に衣装をフル装備するまで、一目で「サンタさん」と判別するのは難しくなっています。
そして結局最後まで「サンタクロース」という単語は出てきません。
もちろん、これらはすべて作者の二人による計算です。
状況証拠を積み重ねて真実に近づいていく「謎解き」の楽しみを、丁寧に構築しているのです。
もう一度表紙に戻ってください。
タイトルは「ぐりとぐらのおきゃくさま」。
モミの木の絵はあるけれども、飾りつけがあるわけでもなく、これが「クリスマスの絵本」であることは、初見ではわかりません。
ちゃんとネタバレにも気を使っているんですね。
そして、最後まで文中で明らかにされないおじいさんの正体は、子どもに「自分だけが解き明かした真実」という歓びを与えます(単なる不法侵入者のおじいさんかもしれないじゃないか、という大人の突っ込みは無視)。
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