2016.12.08 Thursday
絵本の紹介「しんかんくんのクリスマス」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
クリスマス絵本特集第4回目は、「しんかんくんのクリスマス」(作・絵:のぶみ、あかね書房)を紹介します。
気鋭の絵本作家・のぶみさんの「しんかんくんシリーズ」第6作にあたります。
男の子は鉄道が大好き。
よって、電車や新幹線の登場する絵本は数多くありますが、この「しんかんくん」のシリーズは、いわゆる「乗り物絵本」ではありません(個人の見解)。
子どもが新幹線に魅かれる要素の中には、複雑なメカや、パワーやスピード、見た目のかっこよさへの憧憬が多分に含まれると思います(そのあたりは大人の男性もあんまり変わりませんけど)。
けれど、このしんかんくんは、ちっともかっこよくないんですね。
むしろ、かんたろう少年のほうがしっかり者で、しんかんくんは子どもっぽく、感情的で、利己的で、あまり考えずに行動し、失敗ばかりします。
そんな人間味あふれるしんかんくんが、かんたろうとの交流の中で成長するという、ある種の逆転発想の絵本なのです。
もうすぐクリスマス。
しんかんくんはサンタさんからのプレゼントを楽しみにしています。
「かんたろうは なに たのむの?」
と尋ねると、かんたろうは自分の欲しいものではなく、誰かの欲しがっているものをプレゼントに頼むといいます。
びっくりするしんかんくんに、
「だって、だれかが よろこぶと、ぼくが いっちばん うれしいんだもん」
と、かんたろう。
なんなんでしょう、この完成された人格の幼児は。
でも、しんかんくんは「自分もそうする」とはどうしても言えません。
だって、子どもですから。
自分が欲しいものが欲しいに決まってます。
しかし、かんたろうの言葉の意味を知りたくて、しんかんくんはまず、誰かを喜ばせることをやってみようと思います。
そして徹夜で作業して……
自らが巨大なクリスマスツリーになります。
町のみんなが大喜びする姿を見て、
「うわあ、ほんとだ、うれしい。すっごい うれしいな。おいら しらなかった」
と、しんかんくんは、他者の喜びを自分の喜びとする気持ちに気づきます。
そして、クリスマス当日には……という、ぬくもりと幸せな気持ちの溢れるラスト。
子どもは利己的なものです。
そして、それでいいと思います。
他者への愛は、自己愛から出発します。
まずは、自分を100%愛することから始まるのです。
子どもが自己愛を他者への愛へと成長させるには時間がかかります。
それは、大人が外部から強制するものではありません。
しんかんくんのように、自分で自分の心に気づくことが大切です。
大人の役目は、子どもの心の土地にいい芽が育つよう、じっくりと手間ひまをかけて、耕し、種をまき、水をやることだと思います。
子どもに絵本を読んであげることも、そうした行為のひとつでしょう。
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