【絵本の紹介】「チーロの歌」【390冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「チーロの歌」です。

作:アリ・バーク

絵:ローレン・ロング

訳:管啓次郎

出版社:クレヨンハウス

発行日:2013年12月5日

 

原題は「NIGHT SONG

発表は2012年。

 

私はローレン・ロングさんの作品はこれで初めて知りましたが、動物の毛並み感・立体感が強調されたぬいぐるみ的イラストがとっても可愛い。

なおかつ、作品テーマに従って全体を黒く塗りつぶした画面が多いのですが、その夜の闇の中に様々な実験的表現が試みられています。

 

主人公のチーロはこうもりの子ども。

太陽が沈み、洞窟の壁に張り付いていた母親とともに活動を開始します。

 

母さんはチーロに、今日からは一人で外の世界を飛ぶことを伝えます。

何も見えない真っ暗闇を怖がるチーロに、母親は「目をつかわないで見る」能力について教えます。

それは「」をうたうこと。

こうもりが歌えば、世界は歌を返してくれ、それによって暗闇を見ることができるようになるのだと母親は言います。

そしてチーロは一人で飛び立ちます。

初めは何も見えない暗闇が広がるばかり。

チーロは怖くなりますが、母さんの言った通り歌を歌ってみると、確かに世界が歌を返してくれ、視界が照らされるのを感じます。

 

だんだん見えるようになってきたチーロは森を抜け、渡り鳥の群れに歌いかけ、そしてついに食べ物がたくさんある湖までたどり着きます。

お腹がいっぱいになった後、チーロは湖のさらに先にある世界を見てみたいと思い、母さんの言いつけに背いて湖の向こうへと翼を広げて飛びます。

夜明けの美しい海の上を飛びながら、チーロはさらに大きな声で世界に歌いかけます。

やがて母親の温かい翼を思い出し、チーロは洞窟に引き返します。

 

初めての一人での飛行も、世界が返してくれる歌のおかげで迷うこともなく、チーロは無事に洞窟に帰り着き、母親に抱かれるのでした。

 

★      ★      ★

 

物語の前半はほぼ黒く塗りつぶされた画面が続くのですが、完全な闇というわけではなく、よくよく見ると黒い画面の中にうごめくものを確認できます。

それらはチーロの歌によって照らし出されます。

 

こうもりは実際に口から超音波を出し、それが周囲にあたって反射する音を聞いて獲物や障害物の位置を把握する能力を持っています。

哺乳類の中では唯一翼で空を飛ぶことができる、考えてみれば不思議な生き物です。

 

子どもたちにそうした生物の不思議さ・面白さ・神秘を伝えるとき、「厳密な科学的事実」に従うことを重視するあまり、無機質な言葉ばかり選んで説明しようとする大人がいます。

その一方で、詩的表現を選んだ結果、科学的矛盾のある説明の仕方をしてしまう大人もいるでしょう。

 

けれどもそのどちらにも偏るべきではないと思います。

科学的であるということは詩的であることと共存できます。

 

この絵本に描かれたこうもりの生態にはなにも論理的破綻はありません。

こうもりは確かに歌を歌うし、それによって見えないものを見ます。

 

自然の音を「音楽」と表現することは何も間違ってはいません。

頭の固い大人たちはそうした説明を受け付けませんが、子どもにとって大事なのは論理的矛盾がないことです。

想像力の翼はしっかりとした現実的土台があって初めて自由にはばたかせることができるのです。

 

「チーロの歌」は物語の形式としては王道の「行きて帰りし物語」です。

幼い主人公が母親の庇護下を離れ、一人で冒険し、世界を見聞し、また帰ってくる。

よく似た作品では「こすずめのぼうけん」や「ちいさなねこ」が挙げられます。

 

≫絵本の紹介「こすずめのぼうけん」

≫絵本の紹介「ちいさなねこ」

 

2012年になっても、技術が進み、世界が変わってもなお、こうした古典的物語の形は変化せずに通用するのです。

が、上記2作品がいずれも最後は絶対的存在である母親に助けられるハッピーエンドなのに対し、チーロは(母親の忠告を無視したのにもかかわらず)自力で帰還します。

そこが現代的と言えば現代的かもしれませんね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

こうもりに興味が湧く度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「チーロの歌

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