【絵本の紹介】「どろぼうがっこう」【384冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

長い梅雨がやっと明けて、一気に暑くなりましたね。

今回は加古里子(かこさとし)さんがセツルメント運動時代に子どもたちのために描いた紙芝居をもとにした絵本「どろぼうがっこう」を紹介しましょう。

作・絵:加古里子

出版社:偕成社

発行日:1973年3月

 

歌舞伎役者みたいな「くまさか とらえもん せんせい」の指導の下、生徒たちは立派な悪い泥棒になるために「どろぼうがっこう」で勉強しています。

見た目は完全におっさんなのに、行儀に並んで先生の言うことに「はーい」と返事をする「かわいい せいとたち」。

どろぼうがっこうですから、授業内容も宿題も盗みに関することばかりです。

でも、顔は怖いけどどこか抜けている生徒たちはおかしなものばかり盗んできて、先生を怒らせてしまいます。

 

さて、そんなどろぼうがっこうにもちゃんと遠足があります。

どろぼうがっこうの遠足は夜、「かねもちむら」へ泥棒に繰り出すのです。

♬ぬきあし さしあし しのびあし」……のワクワクするリズムに乗って、くまさか先生と生徒たちは一番大きな屋敷へ忍び込みます。

そこで頑丈な鍵のかかった部屋を見つけ、鍵を破って侵入しますが、中はまっくら。

右も左もコンクリの壁。

一体この部屋は……?

その時、ぱっと電気がつくと、なんとそこは牢屋の中。

この建物は刑務所だったのです。

どろぼうがっこうの面々は、間抜けにも自分から牢屋の中へ入ってしまったというわけでした。

 

★      ★      ★

 

絵本界の大御所、加古さんについては過去記事で何度となく紹介してきました。

若いころに敗戦を経験し、それからの人生をひたすら子どもの支援に捧げることを決意した加古さん。

 

上記した通り、この作品はセツルメントの子ども会で演じた自作の紙芝居が原型になっています。

加古さんはそれまでも何度かその会で紙芝居を披露したのですが、これがあまり受けない。

面白くないものには見向きもしない正直な子どもたちの反応にショックを受けた加古さんは、子どもたちの遊びの中に入っていき、そこで子どもというものをとことん観察します。

 

そうして生まれたのが「どろぼうがっこう」というわけですが、加古さんにとってはまるで自信のない出来だったようで、時間のない中で作った乱暴な絵(紙芝居時はほぼ単色に近い絵だったのです)によるお笑い劇を子どもに見せることに躊躇いすら覚えていたといいます。

ところがこれが加古さんの予想を遥かに裏切って、子どもたちから大絶賛。

ことあるごとにアンコールを受ける大人気作品となったのですから、加古さんは改めて大人と子どもの作品を見る目の乖離を感じたようです。

この経験が加古さんの絵本作りに大きな影響を与えたことは言うまでもないでしょう。

 

キャラクターデザイン通りに、劇中での「くまさか せんせい」は常に歌舞伎役者のような独特のポージングを決めています。

しかし、歌舞伎狂言になじみの薄い現代の子どもたちにはこういう細部は伝わらないかもしれません。

大泥棒が子どもたちにとって一種のヒーローであった時代、お芝居が盛んであった時代はすでに遠くなりました。

 

それでもなお、「どろぼうがっこう」は今の子どもたちにも変わらず支持され、読まれ続けています。

目まぐるしく流行が移り変わる世の中にあって、絵本というものは本当に息の長いメディアです。

後の世代に残したい文化、芸術、そうしたものを絵本に盛り込んでおくことは、だから非常に意味のあることといえるかもしれません。

 

そしてもし子どもがそうした文化に興味を示したとしたら、旬を逃さず様々な芸術文化に触れさせてやれるよう、大人の自分も勉強を怠ってはならないと感じます。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

憎めない泥棒度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「どろぼうがっこう

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コメント

前記事では返信ありがとうございます!!

あれから自分なりに調べ、元保育士の祖母に聞き……判明しました💦ネパール民謡が元の、プンク・マインチャという絵本でした。


初版が1979年でしたので、えほにずむ店主さまでもお心当たりのないのも無理ない物でした💦
ご迷惑おかけしましたが、交流できて嬉しかったです。

また影ながらブログ愛読させて頂きます!

  • のむら
  • 2020/08/04 19:22

改めて、情報量少なすぎ&突然の質問ですみませんでした…。

  • のむら
  • 2020/08/04 19:59

>のむら様

秋野亥左牟さんの作品だったんですね!
プンクマインチャ、「こどものとも」図録でタイトルと概要だけ読んだ覚えがあります。
秋野さんの絵が異国情緒たっぷりで素晴らしいですよね。
私もぜひ読んでみようと思います。
わざわざご報告感謝いたします。私も胸のつかえが取れましたw
これからもよろしくお願いします。

  • えほにずむ店主
  • 2020/08/05 08:06