【絵本の紹介】「あおくんときいろちゃん」【377冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

今回紹介するのは絵本界の哲学者、レオ・レオニさんの処女作「あおくんときいろちゃん」です。

作・絵:レオ・レオニ

訳:藤田圭雄

出版社:至光社

発行日:1967年

 

レオニさんに関してはもう何度もここで取り上げています。

彼の流浪と波乱の生涯や、弾圧と攻撃の中で培われた思想については、過去記事を併せてお読みください。

 

≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫絵本の紹介「さかなはさかな」

≫絵本の紹介「アレクサンダとぜんまいねずみ」

≫「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました。【伊丹市立美術館】

≫文化芸術の危機を「フレデリック」から考える

 

さて、レオニさんの処女作とは書きましたが、この「あおくんときいろちゃん」が出版された1959年には、レオニさんはすでにアメリカでデザイン界の第一人者として認められていました。

有名な話ですが、彼が孫のために雑誌の広告ページを切り抜いて即席で作ったおはなしが「あおくんときいろちゃん」の原型であり、出版関係の友人がこれを絵本化したことで、レオニさんは初めて絵本の道へ入ったのです。

 

「あおくんときいろちゃん」はレオニさんの最初の絵本であり、彼の作品の中でもシンプルの極致というべき構成であり、圧倒的なデザインセンスと独特の物語性を併せ持つ傑作です。

その後の素晴らしい絵本作品を生み出した作者の創造力は、この時点ですでに限りなく高いレベルで完成されていたことがわかります。

 

ことにそのエッセンスが凝縮されているのが、最初のページだと思います。

丸くちぎった青い紙のコラージュと、「あおくんです」のテキスト。

 

絵だけを見ればただの青い模様が中心に描かれているようにしか感じられません。

この青い模様こそが作品の主人公であり、生き生きとしたキャラクターであり、物語の中心であることを、レオニさんはたったひとこと「あおくんです」という削りに削った一文のみで読者に納得させてしまうのです。

 

レオニさん自身が、このページこそが自分のさまざまな作品のなかで最高の出来だと語っています。

 

あおくんはやはり色紙のコラージュで描かれた家に両親と住み、学校に通い、他の様々な色のお友だちと遊びます。

そして印象的な「きいろちゃん」との抱擁シーン。

あおくんときいろちゃんが一つになることで色が混ざり合い、「とうとう みどりに なりました」。

 

みどりになった二人はたくさん遊んでから家に帰りますが、あおくんの両親もきいろちゃんの両親も、みどりの子を見てうちの子じゃないと思います。

あおくんときいろちゃんは悲しくなって青と黄色の涙をこぼします。

するとふたりはもとの青と黄色に別れ、両親もやっとわけを理解します。

その後、互いの両親も抱き合うと嬉しくて「みどりになる」ことに気づくのです。

 

★      ★      ★

 

この絵本が出版された当初、多くの批評家たちはその優れたセンスを高く評価しましたが、同時に子どもには受け入れられないであろうとも評しました。

あまりにも抽象的すぎるというのがその理由でした。

 

ところが、実際には子どもたちはすぐにこの絵本を理解し、大いに喜び、好意的に受け入れたのです。

子どもたちに対する大人の目の不確かさ、当てにならなさというものを再認識させることにもなった「あおくんときいろちゃん」は、その後の絵本に少なくない影響を与えたランドマーク的作品となりました。

 

前述したように、この絵本が生まれたのはいわば偶然の要素が強いのですが、にもかかわらず、そこには後のレオニ作品に通じる深い思想を認めることができます。

「あおくん」と「きいろちゃん」が「色の違い」、それはつまり人種や文化の違いを超えてひとつに結ばれる喜びと素晴らしさが、「みどり」の部分に込められています。

 

子どもたちの「遊び」を出発点として、あおくんたちの両親もまた、「みどりになる」喜びと嬉しさに気づきます。

その感情を通して世界に平和が広がっていくイメージが読者に到来します。

 

そこがこの作品の魅力ですが、一方でそうした思想的部分が作品に入り込むことを煙たがる人々もいます。

特に現代の日本ではそういう面が強いかもしれません。

 

しかし思想とはその人間が生きてきた中で必然的に構築される要素であり、作品を作るとは作り手の思想を形にする行為でもあります。

レオニさんのような人生を歩んできた芸術家が作るものには、それがたとえ偶然生まれたものであったとしても、そこに自然と彼の魂が注入され、結晶化されるのでしょう。

 

また、そこに何の思想もメッセージも読み取れない作品ですら、「私は作品に何らの思想やメッセージを持たせない」という作者の思想が投影されているとも言えます。

創作者は作品にどんどん自分の魂を入れて構わないし、鑑賞者はそこにどんなメッセージを読み取っても自由です。

その当たり前のことを、「あおくんときいろちゃん」を読むたびに再確認させられます。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

完璧な無駄のなさ度:☆☆☆☆☆

 

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