2016.11.25 Friday
絵本の紹介「ぐるんぱのようちえん」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は「ぐるんぱのようちえん」(作:西内ミナミ、絵:堀内誠一、福音館書店)を紹介します。
作者の西内さんにとっては、これが最初の絵本で、いきなりのヒットでした。
絵を担当している堀内さんは、グラフィックデザイナーとしてカメラ雑誌、ファッション雑誌などの編集美術に携わり、一時代を画した人。
子どものための本も多く手掛けています。
ひとりぼっちの大きなぞうのぐるんぱは、およそ生きる気概というものを持っていません。
「すごく きたなくて くさーい においもします」という、妙に生々しい存在感。
見かねたジャングルのぞうたちが、ぐるんぱをきれいに洗って、働きに出すことにします。
最初ははりきって出かけたぐるんぱでしたが、ビスケット屋さん、お皿屋さん、靴屋さん、ピアノ工場、自動車工場と、行く先々で毎回大きすぎるものばかり作ってしまい、「もう けっこう」と解雇されてしまいます。
意気消沈して、昔のように泣きそうになっているぐるんぱに、12人もの子どもの世話に大忙しのお母さんが声をかけます。
「ちょっと すみませんがね、こどもと あそんでやってくださいな」
そこで、ぐるんぱがピアノを弾いて歌うと、子どもたちは大喜び。
ぐるんぱはついに天職を見出し、幼稚園を開くのでした……というお話。
すごいと思いませんか?
この絵本ができたのって、1965年ですよ?
まさに、現在の「引きこもり」や「ニート」問題に斬り込んだ、あまりにも時代を先取りし過ぎた内容です。
いや、冗談抜きで、この絵本には「社会に出ること」「働くこと」について、重要な示唆が含まれてます。
天職とは、「誰かに必要とされる」ということです。
自分に何が向いてるかは、自分ではなかなかわからないものなんです。
だからこそ、ただ引きこもっていたのでは、いつまでたっても仕事を頼まれたりしません。
ぐるんぱは自ら懸命に動き回り、失敗を重ねたからこそ、最後に子どもたちに巡り合えたのです。
そして、その時初めて、今までやってきたことを生かすことができたのです(大きなお皿はプールに、大きな靴は遊具に、大きなビスケットは子どもたちのおやつになります)。
面倒でも、傷ついても、見知らぬ人々のところへ出て行って、社会とつながりなさい。
現代の子どもたちにこそ、こんな「ぐるんぱ」のメッセージを伝えてほしいと思います。
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