【絵本の紹介】「どこいったん」【375冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのはジョン・クラッセンさんの衝撃作「どこいったん」です。

作・絵:ジョン・クラッセン

訳:長谷川義史

出版社:クレヨンハウス

発行日:2011年12月5日

 

結構話題になった作品ですので、聞いたことのある人も多いでしょう。

現代的に洗練されたデザインととぼけたタッチ。

大阪弁丸出しのタイトルに、なんだかホンワカしたぬくもりを感じて手に取った大人たちを次々に奈落へ落した問題作です。

 

あ、先に言っときますけど、私は絵本に関してはネタバレを気にしませんのであしからず。

絵本というのはネタが割れようが関係なく、何度も繰り返して読むものです。

子どもたちの読み方がその規範です。

 

じゃあ内容を読みましょうか。

テキストはいたってシンプルですが、長谷川義史さんによる大阪弁翻訳が非常にマッチしてて、いい味を出しています。

長谷川さんは「いいからいいから」などで人気の絵本作家さん。

翻訳はこれが初挑戦だそうですが、いい仕事されてます。

 

表紙のくまが自分のぼうしを探しています。

ぼくのぼうし どこいったん?

と他の動物たちに聞いて回るのですが、みんな知らない、もしくは頓珍漢な答え。

でもその中に、明らかに怪しいうさぎが混じってるのですね。

赤くてとんがったぼうしをかぶり、くまにぼうしのことを尋ねられると動揺して「し、しらんよ」「ぼうしなんか とってへんで」「ぼくに きくのん やめてえな」と挙動不審全開。

 

それを「さよか」で得心するくまの抜けっぷりが笑いを誘います。

結局ぼうしを見つけられず、落胆するくま。

しかし、シカに「どんな ぼうし?」と尋ねられ、「あこうて とんがってて……」と答えかけ、はっと思い当たります。

ここでバックにはどきっとするような赤が使われます。

くまは急いでうさぎのところへ駆け戻り、「ぼくの ぼうし とったやろ」。

そしてテキストのないカット。

この間……。

 

次のページではくまは無事にぼうしを取り戻していますが、うさぎの姿はありません。

そこでりすが「うさぎ どこいったん?」と質問すると、今度はくまが挙動不審となり、「し、しらんよ」「うさぎなんか しらんで」「うさぎなんか さわったことも ないで」とオドオド答えるのです。

 

しかしよく見るとくまが座っているのはさっきまでうさぎがいた場所。

草は折れ、葉が散らばり……。

 

★      ★      ★

 

ああー、なるほどね」とうなずくものの、はっきり言って怖い。

絵本では割と珍しいブラックジョークです。

面白いし絵も素敵だけど、やっぱり子どもに見せるのを躊躇してしまう人もいるでしょう。

 

翻訳出版するにあたって出版社側もそこのところで悩んだのでしょう、その結果として長谷川さんの大阪弁訳を選んだのはうまい案だと思います。

絵本原文はかなりシンプルなテキストのようで、長谷川さんはそれを意訳し、ユーモラスに仕立てています。

くまのキャラクターもよりすっとぼけた親しみやすいものとなり、おかげでラストの怖さがだいぶ緩和されています。

 

……もっとも、人によっては「余計にじわじわ怖い」かもしれませんが。

 

原文はシンプル、と言いましたが、ラストシーンでははっきりと「EAT」という単語を使ってまして、うさぎがくまに食べられたことは明白なんですね。

翻訳版ではそこをぼかしている分、かえって小さい子どもが「うさぎ、どこいったん?」と不思議に思って質問してくるかもしれません。

 

もっとも、子どもはうさぎがどこに行ったかを知っても、大人が危惧するほどに衝撃を受けないでしょう。

「なるほど」という納得感のほうが勝つからです。

もちろん子どもによっては怖くなってしまうかもしれませんが、直接的な残虐描写があるわけではないので、さほど心配することはないと思います(もっと有害なものは現代にあふれています)。

 

この絵本はニューヨークタイムズ2011年絵本ベスト10に選ばれ、続編的作品の「ちがうねん」(This Is Not My Hat)は2013年のコールデコット賞に輝きました。

絵本の自由度、可能性というものは時代とともに広がっていくものです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆(ネイティブ関西弁話者有利)

実際に嘘がばれた時にこんな感じになる奴はいる度:☆☆☆☆☆

 

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