【絵本の紹介】「あめのひのおるすばん」【373冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

春めいてきたというのに、COVID−19のおかげで週末もどこにも出かけられない状態が続いてます。

皆さんはどうお過ごしでしょうか。

 

入学式もなくなって、小学生になった気がしない我が家の息子も、ここのところずっと家遊びです。

ちょっと運動不足が心配。

また夜更かしするようになってきたし。

 

以前は平日はずっと家遊びで、週末に私が外へ連れて行くというパターンが多かったんですけど、ずーっと家で遊んでるのは息子はどうか知らないけど、こっちが精神的にしんどいです。

いまだにトイレまでついてくるし。

 

息子が何をして遊んでるかというと、ピタゴラ装置を作ったり、ブロックでなんか作ったり、芝居のようなことをしたり、漫画を描いたり、奇声を発してたり。

もちろん本も読むけど、それほど長い時間ではありません。

ちゃんと読んでるのかってくらい早いんですけど、意外にちゃんと読んでます。

 

私も妻もテレビはまったく見ません(妻は息子が寝てから録画を見てますけど)し、息子にもテレビは一日1時間だけしか見せません。

最近は「デザインあ」がお気に入り。

やっぱりテレビや動画を見せてる間はこっちが楽ですので、ついつい長時間見せてしまう親の気持ちはよくわかります。

けど、何度も書いてるように幼い子どもに動画は刺激が強すぎますし、受動的すぎます。

 

先日読んでた本の中に、雨の日にずーっと窓の外を見ている子どもの描写がありまして、何とはなしにため息がもれました。

私もテレビ世代ですけど、それでもそんなふうに雨を見た記憶は残っています。

窓に付着して流れ落ちる水滴をじっと目で追ったり。

そういう時間って、無駄なようでいて実はとても大切なのかもしれないと、今になって思うのです。

もちろん、当の子どもは雨が降って外に行けないと他にすることがないからそうしてただけなんでしょうけど。

 

前置きが長くなりましたが、今回紹介するのは「あめのひのおるすばん」です。

作・絵:岩崎ちひろ

案:武市八十雄

出版社:至光社

発行日:1968年

 

武市八十雄さんが「絵本でなければできない表現」「考えるよりも感じる絵本」を目指していわさきちひろさんとタッグを組んで制作された至光社シリーズの第一作。

以前にシリーズ最終作である「ぽちのきたうみ」を取り上げました。

 

≫絵本の紹介「ぽちのきたうみ」

 

童画家・いわさきさんの人物・生涯については下の記事をどうぞ。

 

≫【いわさきちひろ特別展】「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」に行ってきました。

 

シリーズ通しての特徴である短い独白で構成されたテキスト。

内容は雨の日に一人で母の帰りを待つ少女の心情を描いたもの。

昔懐かし黒電話。

電話に怯えてカーテンに隠れてしまう女の子。

 

すぐって いったのに まだかしら

 

おもちゃのピアノを弾いてみたり、窓の外を眺めたり。

あっ おかあさん あのね あのね

でんわ なってよ もう いちど

おるすばんだって できたんですもの

 

★      ★      ★

 

これ、凄いのは少女の心情を水彩の色合いによって表現しているところ。

帰ってきた母親に飛びつくラストシーンですけど、母親の姿はまったく描かれてなくて、ただ温かい黄色に包み込まれる少女の顔を描いてるだけ。

でも、ちゃんと母親の姿が見えるし、光景が見える。

 

それはそれまでのカットで青や紫といった寒色を基調として不安な気持ちを演出しているところから繋がっています。

窓の外の滲んだ景色、雨だれの音、「見えないけど見える」「聞こえないけど聞こえる」、まさに感じる絵本です。

 

これを読んでから最近の他の(どれとは言いませんけど)絵本を手に取ってみると、表現力の差を歴然と感じることがあります。

こういう手法はもちろん作家や作品に応じたもので、様々な作品があって当然なんですけど、しかし中にはそれ以前の問題として、あまりにも冗長なテキストにすべてを説明させているような絵本も稀に見かけます。

 

「長い」のが問題なのではありません。

単純な文と絵の比率の問題でもありません。

心情や光景など、それらをすべてテキストに語らせてしまって、絵はくっつけただけ、というのでは「絵本」である必然性が失われてしまうことが問題なのです。

 

どうしてそういう説明過剰な絵本ができてしまうかというと、結局は子どもの感受性を見くびっているからだと思うのです。

「子どもなんだから、説明しないとわからないだろう」という作り手の想像力不足と、「絵に語らせる」ことを怠る能力不足が、絵本の質を低下させるのです。

 

つい偉そうに批評的なことを書いてしまいましたけど、この至光社シリーズを手掛けた武市八十雄さんの情熱や信念を考えると、絵本に関わるということについて襟を正される思いがするのです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

滲み効果度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「あめのひのおるすばん

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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