【絵本の紹介】「ルピナスさん」【370冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「ルピナスさんー小さなおばあさんのお話ー」です。

作・絵:バーバラ・クーニー

訳:掛川恭子

出版社:ほるぷ出版

発行日:1987年10月15日

 

バーバラ・クーニーさんの作品をここで紹介するのは初めてですね。

どちらかというと玄人好みっぽい絵本作家さんで、派手さはないけど抜きん出た画力を持ち、繊細で美しい作品を数多く残されています。

絵本の絵を単純に二分することは適切ではありませんが、「動と静」に分けるとするならば「静」の絵と言えるでしょう。

 

大人のファンも多い作家ですが、この「ルピナスさん」は特に大人の女性から支持されている絵本です。

世の中を、もっと美しくするために」何かをするという祖父との約束を胸に人生を生きたひとりの女性を描いた物語。

 

少女時代、青春時代、晩年をダイジェストのように展開します。

文章は簡潔で抑制的であり、静謐な絵も相まって、淡々と進んでいくイメージがあります。

けれども、その一枚一枚のカットと行間からは、様々な想像を刺激されます。

 

ルピナスさん」というおばあさんについて、姪っ子が語る形式で物語は進みます。

「ルピナスさん」の子どもの頃の名は「アリス」。

アリスは海辺の町で「船首像」や看板や絵を描く仕事をするおじいさんの手伝いをして子ども時代を過ごします。

 

おじいさんから遠い国々のお話を聞かされ、アリスは将来は遠くへ行き、おばあさんになったら海の傍に住もうと考えます。

おじいさんはアリスにもう一つの約束をさせます。

世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたいのだよ」。

何をするべきかわからないまま、アリスはその約束をします。

成長したアリスは図書館で働き、「ミス・ランフィアス」と呼ばれるようになります。

その後ミス・ランフィアスは南の島へ行ったり、雪山登山をしたり、砂漠をラクダで横断したり、世界中を旅して回ります。

それらの国々で忘れられない人々との出会いを経験します。

しかし、事故で身体を痛めてしまい、ミス・ランフィアスは子どもの頃夢見たように、海の傍の家に引っ越します。

そこで静養しながら、おじいさんとの約束に思いを馳せます。

 

ある春の日、散歩に出たミス・ランフィアスは、丘の向こうでルピナスの花が咲いているのを見つけます。

それは、自分が庭に撒いた種が風に乗って運ばれてきたものでした。

その時、彼女は自分にできることに気づきます。

ミス・ランフィアスは村中にルピナスの種を撒いて歩きます。

変人扱いされることもありましたが、やがて村は青や紫やピンクのルピナスの花で埋め尽くされます。

 

ミス・ランフィアスは今では「ルピナスさん」と呼ばれています。

年取ったルピナスさんの家には、たくさんの子どもたちが集まってきます。

ルピナスさんの姪っ子(彼女の名前も「アリス」)は、ルピナスさんに約束します。

世の中を、もっとうつくしくするために」なにかをすることを。

 

★      ★      ★

 

主体的に人生を生きる一人の女性の姿と、すっくと立つ美しいルピナスの花が重なります。

この絵本にはどのページも青、紫、ピンク、白などのルピナスのパステルカラーが象徴的に使われています。

 

作者のクーニーさんは1917年にアメリカで生まれ、美術を学び、結婚・出産・離婚・再婚、そしてその間に戦争を経験し、40歳を過ぎてから世界中を旅行し、100冊以上の絵本を残し、2000年に83歳でその生涯を閉じました。

それを踏まえて読むと、「ルピナスさん」は多分に作者の自伝的作品と言えそうです。

 

アリスは美しいルピナスの花を。

クーニーさんは美しい絵本を、世界に咲かせました。

 

若い頃に旅をすることは大事だと言われます。

しかしただ旅行をすればいいと考えるのは誤解です。

 

「自分探しの旅」という言葉がもてはやされた時期がありました。

私自身も、若い頃には旅行をしたし、子どもの頃は家族で海外にも行きました。

けれど振り返った時、そこから人生に有意義なものを学んだという実感は極めて希薄です。

 

それは私の旅行が全然主体的なものではなかったからです。

ただ親に連れられて、何の知識もない国へ漫然とついて行き、ホテルに泊まり、バスで移動し、観光地を巡り、お土産を買う。

もちろん思い出は残りますけど、「学び」は全然ない。

 

見知らぬ土地へ旅することが大切なのは、そこで自分の狭隘な常識や固定観念を壊してもらえるからです。

「世界はこんなものだろう」という幼稚な認識の枠を外してもらえるからです。

そのためには、やはり主体的に旅をしなければならないと思います。

 

そういう経験はルピナスさんのように若い頃にしておいた方がいいのはもちろんですが、上で触れたようにクーニーさん自身は中年期になってから世界各国を旅したそうです。

今になってから猛烈に旅をしたくなっている私にとっては、励まされるようなエピソードです。

 

仕事や家庭(あとお金)、いくらでも言い訳はできますけど、人生のどの時期からでも「主体的に生きる」ことができるなら、旅をするのに遅すぎるということはないと思います。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

ルピナスさんの部屋が人生を物語っている度:☆☆☆☆☆

 

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