【絵本の紹介】「ボタンのくに」【367冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

新型コロナウイルス感染症問題が混迷を深める中、混乱と不安のままに突然の休校が宣言され、困惑している子どもたちや保護者の方々も多いことでしょう。

休みだからといって人の多いところには行けないし、どうやって過ごせばいいのか。

 

今こそ読書しましょう。

私は幼稚園にも行かずきょうだいもいない息子と6年間遊んできましたが、やっぱり絵本や他の本に随分助けられました。

テレビもつけないし、ゲームもしませんので。

 

こんな時に……とも思いましたが、こんな時だからこそ絵本の紹介をしていきたいとも思います。

今回は西巻茅子さんのデビュー作「ボタンのくに」を紹介します。

作:中村成夫・西巻茅子

絵:西巻茅子

出版社:こぐま社

発行日:1967年8月30日

 

ぬいぐるみのうさぎから取れた「あかいボタン」の冒険を描いたファンタジー絵本。

丸と三角を組み合わせたシンプルな造形で擬人化されたボタンたち。

 

西巻さん独特の子どもの落書き帳のような楽しい画面に惹きつけられます。

そして実際、子どもたちはこの絵本に言い知れぬ親近感と共感を覚えるようなのです。

 

1966年、こぐま社を設立した佐藤英和さんは、安易な流行を追った絵本作りに警鐘を鳴らし、日本の子どもたちのために本当に後世に残る良い絵本を世に出すため、熱意をもって仕事をされていました。

そして当時まったく無名だった西巻さんの絵に可能性を感じ、「絵本を作りませんか」と持ち掛けます。

 

それから3か月ばかりで描き上げた絵に、中村成夫さんが文章を付け、たちまち「ボタンのくに」が完成します。

無我夢中で作ったこの作品に対し、気恥ずかしさを覚えていたという西巻さんですが、発行されて2年ほどしたとき、佐藤さんのもとへ読者の母親から手紙が届きます。

 

その内容は「絵本に魅せられて」(佐藤英和・こぐま社)の中に詳しいですが、この絵本がいかに子どもの心を捉えて離さないか、そして大人目線では見逃してしまう魅力が存在することが綴られていました。

 

本当にこの作品は、一読しただけではなかなかその魅力のすべてに気づくことは難しいです。

ただ、子どもは実に的確な評価を下します。

 

あかいボタン」は「あこちゃん」のぬいぐるみのうさぎの「ぴょん」の片目に使われていたものですが、取れて草むらに落ちてしまいます。

転がって行った先は「ボタンのくに」。

黄色いボタンの女の子たちに遊園地へ案内されます。

はりやまの スキーじょう」で遊び、黒いボタンにぶつかって追い回され。

リボンのかわ」を渡り、「いとくずの ジャングル」を抜け……。

逃げ込んだボタンのお城には、いろんな形、いろんな大きさのボタンがいっぱい。

赤いボタンは王さまに呼び出され、そこでぴょんからきた手紙を読んでもらいます。

 

片目を失くしたぴょんが困っていることを知り、赤いボタンは「ぱちんこロケット」で帰って行きます。

あこちゃんの家の庭に落ちた赤いボタンは、無事に発見され、ぴょんの目に戻ります。

 

★      ★      ★

 

針山や裁縫道具も子どもたちの生活から離れたものになりつつありますけど、この絵本の魅力は衰えません。

「子どもの落書き」と評しましたけど、当然「崩して描く」ためには基本的画力がしっかりしていないとできません。

単に「子どもみたいな絵」を描いたら子どもが喜ぶ、と考えたら見誤ります。

 

ボタンのくにの遊園地のカット、はっきりした線や色はありませんが、どうしても見入ってしまいます。

裁縫道具で作られたひとつひとつの遊具、ボタンたちひとりひとりの行動をずっと追って行くうちに、自然とこの空想世界へ引き込まれていくのを感じます。

 

一枚の紙にいっぱいにお絵描きすることの楽しさ、そして描き込んでいくにつれ、絵に命が吹き込まれていくのを感じた時の純粋な歓びがここにあります。

 

私も息子のために何百枚となく絵を描いてきましたけど、「子どもが喜ぶ絵」というのは単純な「上手下手」とはさほど関係ないのですね。

私ははっきりと下手ですけど、描きながら「あ、これは息子がぜったい喜ぶな」という絵はわかります。

 

絵本の絵というものは、やはり「どう描けば子どもが喜ぶか」を突き詰めた先にあるものだと思います。

「子どもが喜ぶ絵」は大人にも喜びを与えるものです。

大人の方が鈍感ですけどね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

不思議の国のアリス感度:☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ボタンのくに

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