【絵本の紹介】「くろうまブランキ―」【355冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するクリスマス絵本は堀内誠一さんの絵本デビュー作でもある「くろうまブランキ―」です。

再話:伊東三郎

絵:堀内誠一

出版社:福音館書店

発行日:1967年11月1日(こどものとも傑作集)

 

再話者が伊東三郎さん、ということはこれは海外の民話か何かかと思ったら、フランスの学校の子どもたちが作ったお話だそうです。

そう言われると納得の、いい意味でのシンプルなストーリーです。

無駄が一切なく、しかし必要な要素はすべて描かれています。

 

真っ黒な仔馬のブランキー。

主人のお百姓はとても意地悪。

それでもブランキーは一生懸命に働きます。

重い荷物を引かされ、しかし自分のための小屋さえ作ってもらえない哀れなブランキー。

ひとりぼっちで、星を見上げるブランキー。

年を取り、大きな荷物を運ぶ力がなくなったブランキーを、主人が打擲します。

道の上で倒れ、放置され、死にそうになります。

その夜はちょうどクリスマスの夜でした。

空からサンタクロースが降りてきて、ブランキーを助け起こしてくれます。

 

ブランキーはサンタクロースの銀のそりを引く仕事を任されます。

もう叩かれる心配もなく、優しく扱われ、餌もたっぷり与えられ、ブランキーは幸せな眠りにつくのです。

 

★      ★      ★

 

「マッチ売りの少女」を思わせる展開ですね。

でも、これはちゃんとハッピーエンド。

 

大人が読み飛ばすと、単純すぎて物足りないという感想を抱くかもしれませんが、感受性の豊かな子どもたちは、この短い物語から「自分あてのメッセージ」を過たず読み取ります。

それは即ち「この世界は美しく、素晴らしいところである」という福音です。

 

これは幼い子どもに対し、何度も何度も伝えるべきメッセージであり、エールです。

いや、大人に対しても。

 

現代社会を生きる人間は、豊かな文明を享受する一方、常に痛めつけられています。

「生産性」という言葉に代表される価値観は、ただ素朴に実直に生きているだけのブランキーのような存在が幸せになる物語を歓迎しません。

 

困難や障壁を乗り越え、努力し、何らかの能力を示して、初めて「幸せ」に辿り着くという物語のほうが、現代的には受け入れられるのです。

実はもう大人も(子どもも)、そういう物語に疲れているのではないでしょうか。

全ての人は、ただ生きているだけで幸せになってもいいのだと、なるべきなのだと、心の奥ではそういう言葉を求めているのではないでしょうか。

 

最初に触れたように、この「くろうまブランキ―」は堀内さんの絵本作家としてのデビュー作品です。

絵本を描きたくてもなかなか苦労していた堀内さんは、この話によって開眼したと語っています(「こどものとも」1969年6月号折り込み付録)。

 

ところで、物語冒頭、広い野原に生まれたばかりのブランキーが横たわるカットがあります。

堀内さんの大ロングセラー「ぐるんぱのようちえん」が好きな方はすぐに気がつくかもしれませんが、上記の絵はぐるんぱが野原に横たわる最初のカットと酷似しています。

お持ちの方はぜひ見比べてください。

 

堀内さんが何を考えていたかはわかりませんが、これはきっと意図的なものだと思います。

何故なら、作者の他作品を読めばわかるとおり、あれほど多彩な絵柄を描き分ける才能を持ったイラストレーターが、わざわざ同じ構図のカットを二度も使うことは偶然とは考えにくいからです。

 

≫絵本の紹介「ぐるんぱのようちえん」

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

夢オチでないことを祈る度:☆☆☆☆☆

 

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