【絵本の紹介】「クリスマスまであと九日」【354冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

師走真っ只中。

年々巡りは早くなるけれど、忙しさは増えて行くように感じます。

やることが多いのは幸せでもあるんですけどね。

 

さて、いよいよクリスマスが近づいてまいりました。

今日は16日、「クリスマスまであと九日」ですね。

作:マリー・ホール・エッツ&アウロラ・ラバスティダ

絵:マリー・ホール・エッツ

訳:田辺五十鈴

出版社:冨山房

発行日:1974年12月5日

 

エッツさん、しばらくぶりのご登場です。

これは1960年のコールデコット賞受賞作品で、メキシコのクリスマス習慣を描いた内容になっています。

 

代表作「もりのなか」をはじめ、エッツさんの作品は派手な色調を抑えたものが多いですが、この「クリスマスまであと九日」では、色鉛筆によるピンクや赤、黄色などの彩色が目を引きます。

もっとも、それでも全体としては落ち着いた画面にまとまっており、現代作品と比較すると地味な印象を持たれるかもしれません。

 

が、これは時代と言うよりも作者のスタイルでしょう。

淡いグレーの背景色は「ジルベルトとかぜ」に共通するものです。

物語後半ではこのグレーの濃淡の変化によって夜の時間を演出しています。

 

≫絵本の紹介「もりのなか」

≫絵本の紹介「ジルベルトとかぜ」

 

「クリスマスまであと九日」、副題は「セシのポサダの日」。

多くの人にとって聞いたことのない単語でしょうけど、「セシ」は主人公の少女の名前で、「ポサダ」とはメキシコのクリスマス行事です。

長ったらしい説明は後回しにして、とにかく読んでみましょう。

読み進めるうちにだんだんとメキシコの文化・生活・人情などが理解できるようになっています。

幼稚園に通うセシは、今年は自分のポサダをしてもらえるというので喜びます。

ポサダはクリスマスまでの九日間、毎晩続けて行われる特別な行事です。

 

セシは自分用の「ピニャタ」を買ってもらえるのかとそわそわしますが、母親は「いまに わかるわ」と教えてくれません。

「ピニャタ」というのは粘土の壺を中に入れた装飾品で、くす玉人形のようなもの。

この中にキャンディなどを入れておいて、お祭りのクライマックスで子どもたちが叩き割るのです。

 

セシは待ちきれない思いで毎日を過ごします。

ある日、ついに母親がピニャタを買いに「むかしからの メキシコのマーケット」にセシを連れて行きます。

色とりどりの素敵なピニャタにセシは目を奪われます。

ピニャタはセシに話しかけ、自分を選んでくれるよう頼みます。

小さな女の子の最初のポサダに選ばれたピニャタには素晴らしいことが起こるからです。

 

セシは綺麗な星をかたどったピニャタを選びます。

これは赤ん坊のイエス様の居場所を三賢者に教えたとされる星というわけです。

 

いよいよセシのポサダの日が来て、セシは星のピニャタの中にキャンディやレモン、オレンジなどを詰め込みます。

それをお父さんとお兄さんが庭の木に吊るしてくれます。

 

お祭りの最後に、子どもたちが目隠しをして棒でこれを叩き割るのです(スイカ割りと同じ要領ですね)が、セシはせっかくのピニャタを割られたくありません。

暗くなるとお客さんが集まり、メキシコの晴れ着に着替えたセシや子どもたちが行列を作り、歌いながら中庭を回ります。

最後にいよいよピニャタが割られる時が来ます。

セシは見てられなくて目を閉じます。

 

セシのピニャタが割られた時、空から本当の星がセシに話しかけます。

見てごらん!

わたしは いま、ほんとうの星に なったのよ!

 

セシはその輝く星を見上げ、「もう だれも、あの星をわることは できないわ!」「あの星は いつも あたしのものなのよ」と思うのでした。

 

★      ★      ★

 

メキシコのクリスマスは12月上旬から新年1月6日(主の公現日)にかけてほぼ一月通して行われる長いイベントです。

ポサダのみならず、物語の要所要所で描かれるメキシコの街並み、人々の暮らしや風俗人情も非常に興味深いものです。

もちろんここに描かれているのは60年くらい前のメキシコですが、ポサダは今でもちゃんと行われているようです。

 

また、セシの子どもらしい感情や行動もうまく捉えており、これはエッツさん一流の観察眼によるものでしょう。

エッツさんはこの絵本を描くにあたり、実際にメキシコまで足を運び、人々や街並みをスケッチしたそうです。

 

そうすることで、「頭の中でイメージしていたメキシコ」と「現実のメキシコ」との隙間を埋めることに成功し、現地メキシコからも高く評価される絵本が完成したのです。

というのは、当時アメリカで発行される子どもの本に描かれるメキシコは、アメリカ人の無知や偏見によって歪められた「メキシコ」であることが多く、メキシコの人々はそれに対し不満を抱いていたからです。

 

エッツさんが正しいメキシコの姿を伝えることに対し使命感を持っていたかどうかはわかりません。

ただ絵本作家として丁寧な仕事をした結果とも言えるかもしれません。

 

食べ物や音楽、ファッション、映画、アニメ、漫画、それに絵本。

他国への興味と理解、尊重心はそのほとんどが文化交流から始まります。

 

その影響力は政治的なプロパガンダよりも深く、遥かに根強い力を持っています。

独裁的な権力者が多様な文化を嫌うのは、それを心の底から恐れているからです。

 

昔の話をしているのではありません。

遠い国の話をしているのでもありません。

 

幼い頃から豊かな芸術体験をしておくことが重要なのは、何も文化資本を獲得するためだけではなく、偏見に曇らされない「物を見る目」を培うためです。

美術館やクラシック・コンサートに頻繁に足を運ぶことは大変でも、「毎日絵本を読む」ことくらいは何とかなるのではないでしょうか。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

クリスマスを大切に思う気持ち度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「クリスマスまであと九日

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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