【絵本の紹介】「みみずのオッサン」【347冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「ナンセンスの神様」の異名を取る長新太さんによる「みみずのオッサン」です。

作・絵:長新太

出版社:童心社

発行日:2003年9月10日

 

ピンク色(ミミズ色?)を基調としたド派手でサイケな色彩。

タイトルのインパクトも長さん一流。

 

みみずのおじさん、なら絵本らしいのですが、そこを「オッサン」。

ちょっと乱暴で馴れ馴れしい呼び方……ではなく、このみみずの名前が「オッサン」なのですね。

もうこの時点で読者は長さんワールドに足を踏み入れているのです。

武道的に言えば「先を取られている」わけです。

あとはもう、長さんの掌の上。

 

長さん絵本は常に人を食ったような、悪ふざけのような作品が多いのですが、深読みしようと思えばどこまでも深読みを許してくれる懐の深さ・読者の認識の在り方を根本から問いかけるような哲学的側面を有してもいます。

この絵本も、ハチャメチャな展開の後に主人公の活躍があり、大団円へ向かうのかしら……と思いきや、予想を裏切るクライマックスが。

 

オッサン」が散歩に出かけると、「こんなもの」が「ドシーン!」と落ちてきます。

こんなもの」は「ヌルヌル ベトベト ベタベタベタ〜」の色の塊。

ペンキ工場が爆発したのです。

さらには絵の具とクレヨンの工場も爆発して、町はベトベトに固まって車も生き物も動かなくなります。

一体どうなるのかと思っていると、オッサンが「もぐもぐもぐもぐ」「ムシャムシャムシャ」と絵の具やペンキを食べ始めます。

凄い勢いで食べて行き、食べたものは「きれいなどろになって」排泄されていきます。

その泥はどこまでも広がって行き、(長さんの大好きな)地平線を描きます。

 

で、ここで終わらないのが長さん。

なんとオッサンの排泄した泥は「みどりのだいちになり、ずうっとむかしにもどってしまった」のです。

そこで歩き回る恐竜を見て、オッサンは恐竜になりたいなあと思うのですが、お月さんが「みみずのオッサンは、そのままでいいよ」と言います。

 

そしてオッサンは地面の下に戻って行きます。

しずかなよるです」。

 

★      ★      ★

 

「シュール」の一言で片づけるのは簡単ですが、一体ここには何が描かれているのでしょうか。

絵の具やペンキやクレヨンに呑み込まれていく人々は妙に呑気で、「きれいだねえ」などと口にします。

けれど、結局は彼らは絵の具ごとオッサンに取り込まれ、そして土に戻されてしまうわけですから、考えてみると怖いようなお話です。

 

ミミズが豊沃な土壌を作るのは本当で、私が子どもの頃にはまだグラウンドを掘ればミミズが出てくるのも珍しくなかったのですが、最近はどうでしょうね。

土を掘ることがなくなったのでわかりませんが。

ミミズってまじまじ観察すると本当に気持ち悪くて不思議な生き物です。

 

これを文明社会への警鐘・自然の偉大さを謳った絵本と捉えるのは適切でしょうか。

私にはなんとなく、長さんが描きたいものを描いたらこうなっただけ、という気がします。

 

これは色の絵本です。

どぎついほどの色・色・色。

子どもが絵の具遊びを楽しんでいるような、輪郭線すらない色の世界。

 

町も世界も全部塗りつぶしてしまう壮大な「お絵描き」からの「地平線」、そして「緑の大地」。

長さんの「お絵描き欲」を思い切り吐き出したような、「お絵描き創世絵本」です。

 

もし長さんにそんなことを言ったとしたら、何と答えが返ってくるでしょうか。

あのとぼけたような顔で、難しいこと言わないで絵を見てよ、と言うでしょうか。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

「オッサン」のアクセントに悩む度:☆☆☆

 

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