【絵本の紹介】「ぼくはおこった」【336冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

もうすぐ我が家の息子は6歳になり、同時にこのお店も3周年を迎えます。

息子の成長については時々綴っていますけど、そうやって振り返ってみると冷静に考えれるのに、普段は本当に手を焼かされています。

 

絵本の読み聞かせが情緒の安定に有効、という説についてはいささか怪しんでいる自分がいます。

我が家ではすでに多分一万冊以上の絵本を読み聞かせてきましたが、むしろ成長と共に息子の感情は激しさを増している気さえします。

 

それは自然な感情の発育とも考えられるし、単なる個人差とも考えられます。

ま、あとは親の心根の問題でしょうね。

 

息子が一度怒ると手が付けられません。

怒りのツボはこっちには理解不可能なことがほとんどです。

そしてたぶん、息子自身にも怒りの原因はわかっていません(わかってたらあんなに怒らないでしょう)。

 

あれだけ言葉が達者なのに、大人の理屈は一切通じません。

下手になだめようとすれば火に油。

実力行使はしない方針なので打つ手なし。

とにかく時間が過ぎてクールダウンするまで待つしかありません。

 

今回はそんな子どもだけが持つ凄まじい怒りのエネルギー「だけ」を描いた絵本を紹介します。

ぼくはおこった」。

作:ハーウィン・オラム

訳・絵:きたむらさとし

出版社:評論社

発行日:1996年11月20日

 

計算された線の歪みが特徴的なイラストはきたむらさとしさん。

作者は南アフリカ出身でロンドン在住のハーウィン・オラムさん。

 

翻訳者の名前がないなと思ったら、きたむらさんが訳文も担当されているんですね。

それもそのはず、きたむらさんは若い頃からロンドンに渡り、そこで絵本作品を発表されているのです。

ポップなイラストがどことなく海外っぽいです。

 

さて、主人公はアーサー少年。

ある晩彼は「テレビのせいぶげき」に夢中になっていたのだけれど、お母さんの「もうおそいから ねなさい」の一言に怒りが爆発。

キレる若者。

 

その怒りが半端じゃない。

アーサーが おこると かみなりがなって いなずまがはしり ひょうがふった」。

家の中はめちゃめちゃで、お母さんは呆れて「もう じゅうぶん」と言うのですが、そんなものではアーサーの怒りは鎮まりません。

 

アーサーは怒ったまま家の外へ出て行き、嵐を起こして津波を呼び、町を海の中にひっくり返してしまいます。

お父さん、おじいさん、おばあさんが「もう じゅうぶん」となだめますが、余計にアーサーは猛り狂います。

 

もう、怒ってる自分がさらに怒りを増進させる状態。

アラレちゃんみたいに地球にバリバリ亀裂を走らせます。

それでも怒りのエネルギーは収まらず、ついには

ちきゅうも つきも ほしも わくせいも

アーサーのくにも アーサーのまちも どうろも いえも にわも へやも

こっぱみじんに くだいて」しまいます。

感情を吐きつくし、すべてを破壊しつくした後、アーサーは「かせいの かけら」に座って考えます。

ぼく どうしてこんなに おこったんだろう

でもさっぱり思い出せず、アーサーはベッドにもぐりこんで寝てしまうのでした。

 

★      ★      ★

 

ここまでやるかと笑えもしますし痛快でもありますが、一方で「これでいいの?」と不安にもなります。

子どもも同様で、このお話をただただ笑って聞く子は少数派ではないでしょうか。

 

自分の家族も家も地球までも破壊してしまって、アーサーは今後どうやって生きて行くのかと、子どもは心配します。

もっとも、そうした怖さはきたむらさんの絵によって相当緩和されています(特に、あの猫の存在によるところが大きいです)。

だからこの絵本は決して説教臭くないし、ここから何を読み取るかは完全に読者の自由に委ねられています。

 

大人になっても怒りの衝動はなかなか克服しがたいものです。

特に子どもに対してついつい怒ってしまい、後で反省する……というパターンはとても多いでしょう。

 

私は怒りには種類があると思っています。

衝動的・爆発的な怒りと持続的な怒り(恨み)は明らかに性質が違います。

 

子ども的な怒りというものは自分自身の気持ちを上手く吐き出せないことが大きな原因のひとつでしょう。

そして、無力で他人を説得することもできない子どもが、自分の言うことを聞いてもらう手段として怒りを爆発させることもあるでしょう。

 

あるいは同じ理由で、ムスっと不機嫌になることもあるでしょう。

不機嫌というのは、周囲の人間に「私は不機嫌だ」とアピールすることで、「なんとかしろ」と言っているのに等しい態度です。

 

正当な怒りというものは確かにあると思いますが、それはおよそ上記のような「子どもの怒り」とは別種のものです。

「子どもの怒り」は子どもの間に卒業しなければなりません。

 

そのための方策は、アーサーのような「子どもの怒り」に対し、周囲の大人が決して「子どもの怒り」で対抗しないことだと思います。

子どもの成長を信じ、そして待つことができれば、いずれ必ず子どもは自分の気持ちを言葉にして語ることを覚え、安易な破壊に向かうことを抑制するようになります。

 

とりあえず、私は今後一切怒らないことを改めて宣言しておきます。

いつまで続くかわかりませんけど、ね。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

絵本界の破壊神度:☆☆☆☆☆

 

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