【絵本の紹介】「びゅんびゅんごまがまわったら」【327冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は自然豊かな田舎の小学校風景と昔ながらの遊びの描写がノスタルジーを刺激する傑作絵本を紹介します。

びゅんびゅんごまがまわったら」。

作:宮川ひろ

絵:林明子

出版社:童心社

発行日:1982年7月20日

 

挿絵はお馴染みの林明子さん。

初期のころの初々しい絵柄ですが、子どもたちの体の動きなどの的確さは流石です。

また、この作品では地面に映る木漏れ日の描写など、陰影が印象的です。

 

絵は当然のこととして物語、キャラクター、小道具、魅力を上げればきりがない作品ですが、まずは内容から入りましょうか。

舞台は「かえでしょうがっこう」。

二階建ての小学校に、広々とした校庭。

そして、通称「あそびば」と呼ばれている林。

 

そこには倒れた木の「いっぽんばし」があり、1年生の「こうすけ」は、そこで調子に乗って足を滑らせ、骨折してしまいます。

その事件来、遊び場には金網で遮られ、鍵をかけられてしまいます。

 

春になり、こうすけも2年生になりましたが、遊び場は依然封鎖状態です。

ここが大好きな生徒たちは残念でなりません。

責任を感じたこうすけは、新しい校長先生に直談判し、遊び場を開放してくれるよう懇願します。

が、この校長先生がなかなかの曲者。

せんせいは あまのじゃくだからね、たのまれると あけてやりたくなくなるのさ

と意地悪な返事をします。

 

そして机から取り出したびゅんびゅんごまをこうすけたちに分け、これを回せるようになったら頼みをきこうと言うのです。

さあ、こうすけたちは猛練習を始めます。

 

ところが、できたと思って校長室へ行くと、校長先生は2つ、3つと回すこまの数を次々増やしていきます。

その度にこうすけたちは練習を繰り返しますが、とうとう4年生の「くによ」はこまを投げて諦めてしまいます。

面白くない気分のくによは、おばあちゃんに教えてもらった柿の実で作った首飾りを、校長先生の机にそっと置いて行きます。

これは校長先生に対するちょっとした意地でやったのですが、校長先生は朝礼にその首飾りをかけて出てきたり、喜んでしまいます。

 

さて、こうすけたちはやっと3つ回せるようになりますが、校長先生は今度は4つ同時に回して見せます。

がっかりした「たかひろ」は、仲間をさそって竹馬の練習を始めます。

こまは諦めて、竹馬の名人になって、校長先生を驚かせてやろうというわけです。

それでもこうすけだけは4つのこまを回そうと頑張ります。

 

そして何日もたって、ついにこうすけは4つのこまを回すのに成功します。

生徒たちに囲まれて、校長先生は「ちょっとだけだぞ」と、遊び場の鍵を開けてくれます。

 

それから校長先生は職員会議でこのことを議題にし、再び遊び場は開放されることになりました。

すっかり校長先生と仲良くなったこうすけたちは今度は逆に校長先生に宿題を出します。

それは「さやぶえ」を吹けるようになること。

さてさて……。

 

★      ★      ★

 

校長先生の魅力的なこと。

今ではもうこんな先生はいないでしょうし、いたとしても様々な圧力によって潰されてしまいそうです。

 

昔はひとくちに教師と言っても、様々な人間がいたのでしょう。

今ではまるでコンビニの店員のようにマニュアルをこなすだけの教師しか生き残れない環境になってしまった気がします。

 

もっとも、型破りな教師を認めると、その一方で生徒に対し強権を振るうような有害な教師も出てきてしまうものかもしれません。

そのような教師は教育現場からはじき出されて当然ですが、同時に教師の「個」というものも破壊されてしまいました。

 

教育というのは難しい、人類の最大のテーマと言っても過言でないほどに難しいものです。

そこに携わる人間がどのように振る舞うべきかについての合意は、時代と共に変遷し、そしていつの時代も結論が出ません。

 

ある年齢の子どもたちにとって、親以外の大人との接触は非常に重要です。

かといって別にそれらの大人が完璧な人間である必要はないと思います。

 

教師と生徒の間にどのようなコミュニケーションが発生するのか。

問題はほとんどそれだけです。

そしてそれゆえに難題なのです。

 

しかし、この絵本には確かにその答えの一端があるように思えます。

 

この作品の学校のモデルになっているのは、群馬県高崎市立滝川小学校、東京都武蔵村山市立千川小学校の二校のようです。

ちゃんと現在も残っています。

この絵本のような穏やかでわくわくするような時間もまた、そこに残っていれば素敵だなと思います。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

校長先生のヘアスタイル奇抜度:☆☆☆☆

 

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