絵本の紹介「しろいうさぎとくろいうさぎ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は結婚式にも贈られることの多いロングセラー絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」(文・絵:ガース・ウイリアムズ、訳:まつおかきょうこ、福音館書店)を紹介します。

なんといっても絵が美しいです。

うさぎの毛のふわふわした質感が、非常にリアルな存在感を放っています。

広い森に棲む、仲良しのしろいうさぎとくろいうさぎ。

二匹は毎日、楽しく一緒に遊んでいました。

 

けれども、くろいうさぎは時折かなしそうな顔で物思いにふける様子を見せます。

さっきから、なにを そんなに かんがえてるの?

しろいうさぎが尋ねると、

ぼく、ねがいごとを しているんだよ

いつも いつも、いつまでも、きみといっしょに いられますようにってさ

と、くろいうさぎは打ち明けます。

しろいうさぎは目を丸くしながら、

ねえ、そのこと、もっと いっしょうけんめい ねがってごらんなさいよ

と促します。

くろいうさぎは心を込めて言います。

これからさき、いつも きみといっしょに いられますように!

しろいうさぎは、このプロポーズを受け入れ、二匹は結婚します。

森のうさぎや動物たちが集まってきて、祝福のダンスを踊ります。

 

初めから終わりまで、愛で満たされた物語です。

 

「結婚」とは何かを、子どもにどう伝えるかは意外と難しいもの。

もちろん、行政的な話や動物学的な話を持ち出すのはセンスなさすぎです。

 

子どもにとって一番最初の「結婚」のモデルは両親です。

二匹のうさぎは子どもではありません。

ですからこの絵本を読む子どもは、二匹に自己ではなく、両親を投影します。

 

以前にも書きましたが、絵本の最大の存在価値とは、「この世界は楽しく、美しく、素晴らしいところである」というメッセージを子どもに伝えることです。

そしてそれは、親が子どもに伝えるべきメッセージでもあります。

 

たとえ現実がどうあれ、子どもには「結婚とは、愛し合う二人が『いつも いつも、いつまでも』一緒に、幸せに暮らすこと」なのだと伝えるべきでしょう。

子どもにとって、自分が両親に愛されているかどうかと同じくらい、両親が愛し合っているかどうかは重要な問題だからです。

両親の不仲は、子どもに自分の存在や将来への不安を植え付け、人格形成やその後の人生にまで影響を与えかねません。

極端な意見であることを承知で言えば、子どもの前で夫婦喧嘩をするというのは、虐待の一種だとさえ思います。

 

ちなみに。

この絵本が描かれたのは1965年のアメリカ。

時代背景を考えれば、ちょうど国際連合が人種差別撤廃を宣言したころです。

ですから、この絵本の隠されたテーマは、「白」いうさぎと「黒」いうさぎの、異人種間での結婚についてなのだという見方もできます(作者のウイリアムズさんは否定されていますが)。

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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