【絵本の紹介】「ロッタちゃんとじてんしゃ」【323冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

はじめて自転車に乗れた日のことを覚えていますか?

私は今でもはっきり覚えてます。

息子は6歳に近い5歳ですが、まだ自転車には乗れません。

というか、自転車そのものがない。

 

公園なんかでよその子が小さい自転車(ペダルのないやつ。正式名称不明)に乗ってたりすると、息子は近づいて行ってちょっかいを出します。

ちょっと借りて練習させてみますが、練習嫌いの息子はすぐにやめてしまいます。

ちなみに、三輪車はあったけどまったくと言っていいくらい乗りませんでした。

何回教えてもペダルをうまく漕げないんですね。

それもあってずっと買わなかったんですが、そろそろ買ってやろうかしら。

 

今回紹介するのはスウェーデンの世界的児童文学者・リンドグレーンさんの「ロッタちゃん」シリーズより、「ロッタちゃんとじてんしゃ」です。

作:アストリッド・リンドグレーン

絵:イロン・ヴィークランド

訳:山室静

出版社:偕成社

発行日:1976年4月

 

リンドグレーンさんは「長くつ下のピッピ」という人気シリーズの作者でもあります。

この前、「長くつ下のピッピ展」に行ってきました。

 

これは絵本ではなくて児童書なんですが、息子に読んでやると大ハマリして、今でもお気に入りの作品です。

「ピッピ」の魅力(世界一強くて、大金持ちで、一人暮らしで、学校にも行かない)を語り出したら長くなり過ぎるので、ここでは触れません。

一度読んでみて欲しいと思います。

 

「ロッタちゃん」はピッピのような超人ではなく、ごく普通の幼児なんですが、その言動の痛快さはピッピにも劣らないものがあります。

 

兄のヨナスと姉のマリヤが自転車に乗っているのを見て、三輪車しか持ってないロッタは内心腹立たしくてなりません。

自分も同じように自転車に乗りたい、乗れるはずだ、と考えます。

でも、周りからは「おまえは ちいさすぎるからな」と言われてしまうのです。

自尊心の強いロッタは、実に良からぬ計画を企てます。

お気に入りの「ぶたぐま」のぬいぐるみ「バムセ」にだけはその計画を打ち明けます。

 

あたい、一だい かっぱらうつもりよ

 

どこでかっぱらうつもりかというと、仲のいい「ベルイおばさん」の物置からです。

そこに古い自転車があることをロッタは知っていたのです。

 

5歳の誕生日の日、やっぱり自転車はもらえなかったロッタはベルイおばさんの家に行きます。

ベルイおばさんからは素敵な腕輪をプレゼントされます。

ロッタは喜びますが、それはそれとして計画は実行に移すのでした。

ベルイおばさんが昼寝してる隙に、ロッタは自転車を盗み出します。

大きすぎる自転車に四苦八苦しますが、どうにかサドルにまたがります。

 

しかし、坂道を走り出した自転車を止めることができず、ロッタはベルイおばさんの家の垣根に突っ込んで怪我をしてしまいます。

あたいの たんじょうびなのに ちが でたあー!

 

ベルイおばさんに手当してもらいながら、ロッタは、

でも あたい、ほんの ちょっとのあいだ ぬすんだだけよ

と言い訳。

 

そしてせっかくもらった腕輪まで失くしてしまったことに気づいて、泣きわめきながら帰ります。

兄さんと姉さんから説教されて、ロッタは「あんたたちには くちを きくのも いやよ」とふくれっ面。

 

やがて父親が帰ってきますが、彼はロッタにぴったりの小さな赤い自転車を持って帰ってきてくれたのです。

大喜びで自転車に乗るロッタ。

そしてベルイおばさんは腕輪を見つけてくれます。

 

ご機嫌で自転車を乗り回すロッタですが、兄の真似をして両手を放して転び、兄に対して怒ります。

でも内心では、自分だって同じように手を放して乗れるはずだ、とロッタは考えているのでした。

 

★      ★      ★

 

花びらが舞う絵が印象的です。

「ピッピ」も「ロッタ」もリンドグレーンさんの描く主人公は、子どもでありながら大人の世界に堂々と立ち向かい、自己主張をし、思うままに行動します。

 

もちろん子どもですから、彼女らの行動と主張は大いに自己中心的です。

理屈や道徳ではなく、子どもたちは自分の中にある何かを守ろうと抵抗します。

禁止し、矯正し、従わせ、コントロールしようとするすべての大人たちに対し、子どもたちは抵抗します。

 

リンドグレーンさんはそんな子どもたちを、一人の人間として認め、その幼い自尊心を傷つけないように心を配ります。

大人にとって都合のいい「いい子」しか出てこないような物語を、子どもたちはその鋭い感性ではねのけます。

 

ロッタの行動は、良識的な大人が見れば眉をひそめるようなところもあります。

それでも、今すぐにその行動の道徳的良否を教え込むことが必要なのではありません。

何故なら、子どもたちは平気でこれまでの自分を超えていけるからです。

 

これでも おまえは、きょうは いやな たんじょうびだって、おもうかい?

という兄の質問に、ロッタはあっさりと、

あら そんなこと、あたい おもったこと ないわよ

と言い返せるのです。

 

過去の行いに罪悪感を抱かせることで子どもたちを「教育」することは意味がありません。

彼らはいつでも「今、ここ」を生きているからです。

 

「ロッタちゃん」シリーズは映像化されています。

ロッタ役の女の子がめちゃくちゃに可愛いので、必見です。

特にふくれっ面が。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

庭のブランコ羨ましい度:☆☆☆☆☆

 

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