【絵本の紹介】「八郎」【319冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「八郎」です。

作:斎藤隆介

絵:滝平二郎

出版社:福音館書店

発行日:1967年11月1日

 

斎藤隆介さんと滝平二郎の名コンビによる作品は、以前に「モチモチの木」を取り上げました。

 

≫絵本の紹介「モチモチの木」

 

滝平さんの本領発揮といったド迫力の版画絵に、斎藤さんによる妥協する気一切なしの本気の方言語りテキスト。

むかしな、秋田のくにに、八郎って山男が住んでいたっけもの

八郎はな、山男だっけから、せぇがたあいして高かったけもの

見上げるほどの巨人。

それでも八郎は「まっとまっと」大きくなりたいと願い、毎日海に向かって叫んでいました。

その度に八郎は大きくなっていき、ついには鳥が頭に巣を作るほど巨大化します。

ある日のこと、八郎は浜で泣いている「おとこわらし」を見かけます。

わけを聞いてみると、毎年のように海が荒れるせいで、村の田が塩水をかぶって駄目になってしまうのが悲しくて泣いていると言います。

 

心の優しい八郎は、男の子に同情し、その怪力で山を持ち上げて海に放り込みます。

迫っていた波は山に押し返され、一時は村人たちは喜んだものの、沖の方からさらに巨大な津波が押し寄せてきます。

泣き出す男の子に「しんぺえすんな、見てれ!」と声をかけ、八郎は海に入って行きます。

そしてその巨大な両手を広げて海を押し返します。

 

荒れ狂う波に呑まれながら、八郎は叫びます。

わかったあ! おらが、なしていままで、おっきくおっきくなりたかったか!

おらは、こうしておっきくおっきくなって、こうして、みんなのためになりたかったなだ、んでねが、わらしこ!

 

八郎は海の中に消え、津波は収まります。

やがてそのあたりは「八郎潟」と呼ばれ、今でも八郎のおかげで穏やかな浜になっています。

八郎が沈めた山は「寒風山」と呼ばれています。

 

★      ★      ★

 

「八郎潟」も「寒風山」も秋田県に実在します。

「八郎太郎」という龍神の伝説が残っており、地名の由来となっていますが、伝説の内容はこの絵本とは違います。

この「八郎」はほぼ斎藤さんの創作ですが、本当にそんな民話がありそうに思わせるリアリティはさすがです。

 

同作者による「三コ」という「八郎」と酷似した絵本があって、そちらも巨人が他者のために自己を犠牲にする物語となっています。

その「三コ」のあとがきで、斎藤さんは「働く貧しい人々のために命をささげて死ぬ巨人」「はにかみを知る心やさしき巨人」である八郎と三コは、自分の理想の人間像であると語っています。

 

自己犠牲の精神とは、扱いの難しい物語です。

それは人を容易に感動させ、あらゆる言葉や理屈を超える力を持っています。

 

それゆえにこそ、権力者は「自己犠牲の物語」を利用したがります。

しかしそれはこの絵本に描かれているような美しい物語とはまったくかけ離れた偽物であることに注意しなくてはなりません。

 

犠牲心とは、外部からの強制や圧力から完全に自由な魂から芽吹いた精神でなければ、尊くも美しくもないのです。

贋物に欺かれることなく、己のうちにある「真・善・美」を見つめるためには、たくさんの物語に触れる必要があるのです。

これは何度言っても言い足りないくらい大切なことだと思います。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

主人公の好感度:☆☆☆☆☆

 

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