2016.11.15 Tuesday
絵本の紹介「のろまなローラー」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは「のろまなローラー」(作:小出正吾、絵:山本忠敬、福音館書店)です。
以前取り上げた「とらっく とらっく とらっく」と同じ、我が家の息子も大ファンの山本忠敬さんの乗り物絵本。
初期のころの山本さんは、文は他の作家さんに任せ、絵に専念している作品が多いです。
その絵柄も、こうして見るとずいぶん変化が見られます。
お話の内容に合わせるためかもしれませんが、このころの乗り物絵は、後期に比べると精緻さがなく、より擬人化されて描かれています(それでも、ちゃんと車には人が乗っていて、車のみで走ったりはしません)。
しかし、すべての作品を通じて、その乗り物愛だけは揺るぎないのはさすがです。
ローラーが、「おもい くるまを ころがして、ゆっくり ゆっくり」道を直しながら進んでいます。
それを、トラックや立派な自動車、小型自動車たちが、邪魔にしたり、馬鹿にしたりしながら追い越してゆきます。
それでもローラーはけっして急がず、丁寧に自分の仕事を続けます。
やがて山道に入ると、さっきローラーを馬鹿にした車たちが、でこぼこ道でパンクしています。
ローラーは彼らにやさしく労わりの声をかけ、道を直しながら進みます。
パンクを直した自動車らは、道を直してくれるローラーの仕事の大切さに気付き、さっきの無礼を詫びて行きます。
誰もが気づかないようなところで、誰かがやらなければならない仕事を黙々とやる。
褒賞を求めるわけでもなく、人から馬鹿にされても、軽く見られても、やるべきことを、手を抜かずにやる。
ローラーはそんな日本的美徳(現代ではどうか知りませんが)の体現者です。
自分に意地悪をした自動車たちが困っているのを見ても、「ざまあみさらせ」なんて思いもしません。
「それは ほんとに おきのどく。はやく なおして おいでなさい」
と、紳士的態度を崩さないのです。
なんともカッコイイやつ。
小出さんの文章は全文通して口ずさみやすいリズムに整えられていて、少々古めかしいセリフ回しも耳馴染みが良く、読み聞かせる側も楽しめます。
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