絵本の紹介「はじめてのおつかい」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは、「はじめてのおつかい」(作:筒井頼子、絵:林明子、福音館書店)です。

タイトルの通り、はじめて一人でおつかいを頼まれた5歳のみいちゃんが、牛乳を買いに行くお話。

転んでお金を落としてしまったり、緊張のあまりお釣りをもらい忘れたり……。

 

同じくらいの年の子どもには我がことのように、そして読み聞かせる大人は、自分の子を見守るような気持ちになったり、自分自身の子ども時代を思い出したりと、親子そろって引き込まれる名作です。

幼い子どもの心情をとても繊細に描き出しています。

けれども、この絵本ができたのが1976年。

今でも愛されるロングセラーではあるものの、やはり時代は変わったと感じざるをえません。

 

たとえ近所であろうと、現代では5歳の娘をひとりでおつかいにやったりしたら、母親の方が世間から非難されるかもしれません。

それだけ物騒な世の中になってしまったんですね。

でも、必ずしも「おつかい」である必要はありませんが、子どもにひとりで何事かを成し遂げる経験をさせることは大切です。

どんなに小さくても、子どもにもちゃんと自尊心はあります。

人前で叱られたら、受けなくてもいい傷を受けることになります。

反対に大人に感心されたら、嬉しくなってもっと自分にできることを探すようになります。

 

この絵本のみいちゃんは、おつかいに行く前と帰ってきた後とでは、まるで別人のように成長しているはずです。

それは文では説明されていませんし、絵を見てもわからないかもしれません。

しかし、子どもの目で見れば、たしかにみいちゃんは変化しているのです。

本当に注意深く観察していれば、読んでいる子どもの表情も、終わった後では微妙に変化しています。

 

また、この絵本には隠された楽しみがいくつもあります。

みいちゃんの家のポストの名前が「尾藤三」(おとうさん?)だったり、牛乳を買うお店の名前が「筒井商店」、絵の教室の先生の名前が「はやしあきこ」(作者二人の名前ですね)だったり。

また、掲示板に探し猫の貼り紙があるのですが、じつはよく探せば、絵本のどこかでこの猫を見つけることができるんです。

 

そんな林明子さんの遊び心がいっぱい詰まったこの作品、やっぱり時代は変わっても、これからも親子そろって楽しめる名作であり続けるでしょう。

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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