絵本の紹介「ねないこだれだ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもの寝かしつけ、苦労されてる方も多いと思います。

子どもの性格は十人十色。

良く寝る子(ああ、うらやましい)、寝るのを嫌がる子、様々ですが、我が家の息子は完全なる後者です。

 

赤ちゃんの頃から、本当に寝ない子でした。

3歳になる今でも、たびたび徹夜して昼夜逆転生活になります。

恐るべき耐久力です。

こっちはもう横になりたくて仕方ないんですが、叩き起こされて絵本を読まされたり、工作をさせられたり。

 

というわけで、今回紹介するのは今や伝説となったトラウマ絵本、「ねないこだれだ」(作・絵:せな けいこ、福音館書店)です。

この絵本、私自身も子どものころ、ずいぶん怖かった思い出があるもので、息子に読み聞かせるかどうか迷いました。

 

何しろ、「夜更かししていた女の子が、おばけにされて、おばけに連れ去られる」という衝撃の内容。

九時って。

現代っ子にしてみれば、まだまだ宵の口ですよ……。

せなさんの絵本はちぎり絵で作られています。

ちなみに、女の子のパジャマは封筒の裏を使ったのだとか。

このインパクトを、「寝ない子はこうなるよ!」という脅しに使って、子どもを寝かしつける親御さんもいるでしょう。

でも、個人的には、その手法は取りたくありません。

眠りに入る前の時間は、暗示にかかりやすいと言われ、非常に大事です。

できるならば素敵なハッピーエンドや、勇ましい冒険譚とともに眠りにつかせてあげたいところです。

 

しかし、作者のせなけいこさんは、このお話を、しつけのためや、怖がらせようと思って描いたつもりはまったくなかったそうです。

せなさんは1931年に生まれ、有名な童画家・武井武雄さんのもとで絵を学び、1969年、「ねないこだれだ」を含む「いやだいやだの絵本」4冊シリーズでデビューします。

 

そのころ、せなさんにはすでに結婚して母親となっていました。

「息子を喜ばせようと思って」おばけの絵本を描いたのだとか。

 

正気ですか? と言いたくもなりますが、たしかに、子どもはおばけが好きです。

「怖いもの見たさ」は、本能に根ざした感情なのかもしれません。

せなさんの絵本には「おばけ」(あと、「うさぎ」)がよく登場しますが、シンプルなデザインのおばけは、可愛くも見えるのですが、ちゃんと怖さも持っています。

そのちょっと怖いところが、「いいところ」なのだと、せなさんは語ります。

 

私たちは子どもを危険、恐怖、悲しみから可能な限り遠ざけようとします。

それは当然のことですが、しかしその一方で、子どもはそうしたものに近づこうとする意志を、たしかに持っています。

人生においてそれらは避けられぬ風であり、そして自分にはそれらを乗り越える強さがあるのだということを、子どもは生まれながらに知っているのかもしれません。

 

せなさんは、当時の絵本に登場する子どもたちがいい子過ぎて「本当じゃない」と感じていたそうです。

現実の子どもたちは、嫌いなもの、やりたくないこと、思い通りにならないことに囲まれて生きています。

だから、「いやだいやだ」なんですね。

そういう子どもたちが、「これは自分だ」と思えるような絵本を作ろうとしたら、「いやだいやだの絵本」ができたのだそうです。

 

ですから、大人の目で見ればいろいろ批判的な意見も出るかもしれませんが、せなさんにしてみれば、そんなことは関係ないのかもしれません。

だって、これは子どもに向けて作った本なのですから。

 

……というわけで、私も意を決して息子に読み聞かせました。

反応ですか?

ええ、笑ってましたよ。

もちろん、その夜も全然寝ようとはしませんでしたとも(涙)。

 

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