【絵本の紹介】「サンタクロースのくるひ」【294冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はクリスマス絵本を紹介します。

サンタクロースのくるひ」です。

作・絵:西巻茅子

出版社:福音館書店

発行日:1990年10月30日

 

わたしのワンピース」のロングセラーで知られる西巻茅子さんが描く、心温まるクリスマスの物語。

心温まる……のは確かなんですが、なんとも不思議な読後感のお話でして、私のように絵本の深読みばっかりしている大人にとっては、あらぬ空想をさせられてしまう作品なんです。

 

≫絵本の紹介「わたしのワンピース」

 

え、これって何を意味してるの?」とか、「作者は意図的にこういう描き方してるの?」とか考え出すときりが無くなる絵本なのですね。

ま、それは後にするとして、内容を見てみましょう。

 

主人公のマリちゃんのもとに、両親からクリスマスカードが届きます。

マリちゃんの両親はそろって海外赴任で、マリちゃんはおばあちゃんと暮らしている、という珍しい設定。

 

カードの中身は手紙と「ペロペロキャンディー」が3本。

マリちゃんはキャンディーを持って歌いながら外へ行きます。

 

町はクリスマスムード一色。

広場に飾られている巨大ツリーを見て感心していると、ツリーに飾られた天使の人形と目が合います。

キャンディーを「ほしい?」と訊くと天使は「うん!

エンジェルちゃん」というその人形は、マリちゃんの手を取って空を飛びます。

喜ぶマリちゃん。

 

町はずれのモミの木林まで飛んでくると、そこで一休みしているおじいさんに出会います。

マリちゃんはクリスマスのプレゼント、と、最後のペロペロキャンディーをおじいさんにあげます。

おじいちゃん、わたしのところに、サンタクロースは くるかしら?

ああ、よいこのところには みんな、サンタクロースは くるんだよ

 

ペロペロキャンディーが無くなると、エンジェルちゃんはマリちゃんとまた飛び上がります。

残ったおじいさんが赤い上着と帽子をつけると、その正体はサンタクロース。

 

広場のクリスマスツリーでエンジェルちゃんと別れたマリちゃんは、走って家に帰ります。

その晩、サンタクロースはちゃんとマリちゃんのところにも来て、プレゼントを置いて行きます。

 

朝になって、マリちゃんがプレゼントを開けると、中から飛び出してきたのはなんとエンジェルちゃん。

二人は抱き合って踊って跳ねて、「メリークリスマス」。

 

★      ★      ★

 

お絵かき大好きな子どもが描いたようなクレヨン画。

わたしのワンピース」とはまた違った西巻さんの魅力が見えます。

 

とってもほのぼのとしたいいお話なんですが、なんとなく釈然としない大人は私だけではないはず。

というのも、私は読みながら、クリスマスにマリちゃんの両親が帰ってくるというベタなラストシーンを予想していたからです。

 

マリちゃんは最初から最後まで明るくて、両親と離れ離れの淋しさを欠片も感じさせませんが、それがかえって健気で切なくなってしまいます。

両親とのやり取りは結局手紙のみ。

マリちゃんが最後に書いた「おとうさん おかあさん マリはげんきです」の手紙も、つくづく見ていると何故か涙が出てきます。

 

で、例によって私の深読みが止まらなくなってしまうわけです。

もしかして、マリちゃんの両親って……。

すでに天国?

 

そう考えると色々と辻褄が合ってしまうんですよね。

冒頭の手紙は本当に空を飛んでくるし。

エンジェルは娘のことを思う両親からの使いかもしれないし。

だとすると、あのおばあちゃんもなかなか深みのあるキャラクターに思えてきます。

 

クリスマスに浮かれるキラキラした町の中で、ひとりぼっりのマリちゃんの姿は、「マッチ売りの少女」を思わせます。

ここでは「ペロペロキャンディー」がマッチの代わりであり、マリちゃんはキャンディーを舐めている間だけ、束の間の幸せな夢を見ていたのかもしれません。

 

……と考えると、これは思った以上に哀しい物語です。

しかしながら「マッチ売りの少女」と違うのはラストシーンにおいて、マリちゃんは天国に連れて行かれるのではなく、逆に天国から天使が現実に降りてきてくれる点です。

してみると、これは「マッチ売りの少女」のハッピーエンド版とも言えます。

 

……まあ、全部私の個人的な読みですけど。

そんなわけで、これは私の中では見た目と違って「取扱注意」な異色のクリスマス絵本という位置づけになってる作品なのでした。

 

推奨年齢:4歳〜

読読み聞かせ難易度:☆☆☆

変なこと考えずに素直に読め度:☆☆☆☆

 

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