2018.11.16 Friday
【絵本の紹介】「サンタクロースってほんとにいるの?」【285冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
そろそろ今年もクリスマスが近づいてきました。
ぼちぼちクリスマス絵本を取り上げて行こうと思います。
「サンタクロースを信じているのは何歳までか」という問いが定番になっているほど、子どもとサンタを巡る問題は決着しません。
「子どもにサンタの存在を信じ込ませようとするのは親のエゴだ」と言われると、そうかもしれない気もします。
無邪気にサンタを信じ、プレゼントに感激する子どもの姿は確かに可愛いものです。
しかし、「いい子にしていないとサンタさんが来ないよ!」と取引の道具にするのはどうかと思います。
かの瀬田貞二先生が児童百科事典を編纂した際に、「かっぱ」の項目に「かっぱは今もいる」と断言された時の気持ちを考えると、子どもにとってサンタがいなくてどうするのだ、とも思います。
では、当の子どもたちはこの問題をどう考えているのでしょう。
大人よりも遥かに合理的で現実的な彼らは、「サンタクロースの矛盾」を無視はできないはずです。
今回はそんな子どもたちと両親の息詰まる攻防を描いた絵本「サンタクロースってほんとにいるの?」を紹介します。
作:てるおかいつこ
絵:杉浦繁茂
出版社:福音館書店
発行日:1982年10月(かがくのとも傑作集)
「ねえ サンタクロースって ほんとにいるの?」
いつかは浴びせられるであろう、子どもからの問い。
とある家庭の、浴室風景です。
お父さんは子どもたちとお風呂に入りながら、彼らの鋭い質問に答えて行きます。
「えんとつがなくても くるの?」
「ドアに かぎが かかっていても くるの?」
「どうして ぼくの ほしいものが わかるの?」
「どうして としとって しなないの?」
「どうやって ひとばんで せかいじゅうを まわれるの?」
「みなみのくにでは どうするの?」
「こないうちもあるのは なぜ?」
お父さんとお母さんは、次々に投げかけられるもっともな質問から逃げたりあしらったりせず、真摯に丁寧に、彼らが納得しやすいような回答を与えます。
最後に子どもたちはどこか不安な表情で、
「ねえ、ほんとうにいるの」
「いるよ」
「サンタクロースは ほんとにいるよ」
「せかいじゅう いつまでもね」
子どもたちは求めていた答えを得て、幸せな表情で眠りにつきます。
★ ★ ★
子どもに嘘を教えることは良くないことです。
しかし、子どもにはファンタジーが必要です。
彼らはこの世界が「善きところ」「美しきところ」であることを信じたいと思っています。
これからの長い人生にとって、世界が美しく善いところでなくてどうしましょう。
子どもがいつかサンタクロースの正体を知る日が来たところで、そんなことは些末なことです。
その時までに、彼らの心に色鮮やかなファンタジーが育っていれば、サンタクロースそのものは問題ではないのです。
大人がそのことを理解し、そして自分も心からこの世界が美しいことを信じていれば、この絵本のような子どもからの質問に、確信をもって即答することができるはずです。
大人たちが一瞬でもたじろいだり、「自分の言葉でない言葉」で語ったり、ごまかしたりすれば、子どもは即座に見抜きます。
その時、子どもは大人を出し抜いたという勝利感を手にするでしょうが、同時にかけがえのない世界を失っているのです。
子どもに、そんな悲しい勝利を与えたくはありません。
それにしても、我が家の息子はサンタクロースについてどう考えているのでしょう。
実のところ、どうにもそれが不明なんです。
年齢相応以上の読書経験のある子ですから、その中にはサンタの存在を否定するような内容のものもあったでしょう。
科学本もたくさん読んでいますし、意外と現実と幻想を分けているような素振りも見せます。
本当はサンタクロースなんていないと思ってるのかもしれません。
でも、今年のクリスマスには「本当に乗れる飛行機のラジコン」が欲しいなどと宣います。
「そんなもん……」と言いかけると、不思議そうな顔でこちらを見てきます。
「どうしてダメなの? サンタさんに頼むのに」と言わんばかりの表情で。
何もかもわかっててやってるのか。
無邪気なのか。
聞くわけにもいきませんしねえ。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
両親のアドリブ能力度:☆☆☆☆☆
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