【絵本の紹介】「ハリス・バーディックの謎」【284冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

絵本は大人が読んでも面白いもの。

ただし漫然とテキストを読み飛ばすような仕方では絵本は楽しめません。

子どもの頃のように、目と耳を澄まし、想像力を鋭敏にして、そこにある絵と短い文から物語を読み取るのです。

 

今回は非常に変わった構成ながら、大人もワクワクさせられてしまう不思議な絵本を紹介します。

クリス・ヴァン・オールズバーグさんの「ハリス・バーディックの謎」。

文・絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ

訳:村上春樹

出版社:河出書房新社

発行日:1990年11月30日

 

オールズバーグさん作品はこれまで「魔術師ガザージ氏の庭で」「ジュマンジ」「急行『北極号』」を取り上げています。

 

≫絵本の紹介「魔術師ガザージ氏の庭で」

≫絵本の紹介「ジュマンジ」

≫絵本の紹介「急行『北極号』」

 

毎回幻想的で想像力を刺激されるオールズバーグさんの絵本。

今回は、絵本にしては少し長めの「はじめに」という文があって、これを読んでおかないと内容が意味不明になります。

実際、私は初めてこの絵本を読んだ時、「はじめに」を飛ばしたのでさっぱりわけがわかりませんでした。

 

出版社勤めのピーターという人物のもとへ、自分の書いた物語を売り込みに来たらしい「ハリス・バーディック」なる男が訪れます。

その14の物語にはそれぞれハリス・バーディックが自分で描いた絵があり、この時、見本として各物語に一枚ずつその絵を持ってきていました。

その絵にすっかり魅了されたピーター氏は、その物語を早く読みたいと催促します。

 

ところが、明日物語を持参すると約束したハリス・バーディックは、次の日になっても現れず、それどころかそのまま姿を消してしまいます。

残されたのは14の絵と、それぞれに付けられたタイトルと短い説明文のみ。

作者はその絵を「複製」し、この「ハリス・バーディックの謎」を作った……というのが「はじめに」の要約。

 

もちろんフィクションでしょうけど、物凄いリアリティのある設定です。

そしてこの絵本は、ハリス・バーディックが残した14の絵とそのタイトルと短い説明文を並べた構成になっています。

例えば、「ヴェニスに消えた」という絵。

説明文は「その強力なエンジンを逆進に入れたというのに、旅客船はどんどん運河の奥の方にひきずられていった

 

招かれなかった客」という絵には「彼の心臓はどきどきしていた。ドアの把手はたしかに回ったのだ

 

リンデン氏の書棚」という絵には「彼はその本について、女の子にちゃんと注意を与えたのだ。でももう遅い

七つの椅子

五つめは結局フランスでみつかった

 

オスカーとアルフォンス

それらを返さなくてはならない時が来たことは彼女にもわかっていた。毛虫たちは彼女の手の中でもぞもぞとうごめき、「さよなら」という字を描いた

メイプル・ストリートの家

それは文句のつけようのない離陸だった

 

★      ★      ★

 

まさに謎。

こんな調子で物語の断片だけが示され、各ページに関連性はありません。

後は読者の想像力のみに委ねられているのです。

 

イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」の展示作品を見ている時もこんな感じだった気がします。

絵を読む、という絵本の特性を抽出して濃縮したような作品です。

各カットは美しく、怪しく、どこかSFチックで、いくらでも自分の物語を想像させてくれます。

絵本作家のヨシタケシンスケさんも、この絵本に大いに刺激を受けたそうです。

 

小学生のころ、図書室で借りたい本を選ぶために適当にページをめくり、挿し絵のある部分だけを見て面白そうかどうかを判断していたことを思い出します。

結局借りられなかった本の中の、そのワンシーンの絵と文だけが何故か長く記憶に残るのです。

あれはいったい、どんなお話だったのだろう……と、何かの折に想像してみたりするのですが、もはやタイトルすら忘れてしまい、読むことは叶いません。

 

ちなみに、この絵本にインスピレーションを受けた作家さんたちがそれぞれの絵から物語を書いた「ハリス・バーディック年代記」という本があります。

この絵本の影響力がいかに大きいかがわかりますが、私は読んでいません。

「謎を謎のまま楽しむ」というのもいいものですから。

 

推奨年齢:小学校高学年〜

読み聞かせ難易度:☆☆(読み聞かせ向きとは言えませんが、読み聞かせるのは楽しそうです)

想像力触発度:☆☆☆☆☆

 

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