2018.11.12 Monday
【絵本の紹介】「じんべえざめ」【283冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
鳥取県の河口にジンベエザメが迷い込んだという珍しいニュースが流れていました。
残念ながら死んでしまったようです。
ジンベエザメは基本的に温かい地域の海に生息、成長すると12メートル以上にもなるという最大の魚。
その巨大さから哺乳類と誤解しがちですが、魚類です。
私は海遊館で何度か見ましたが、他の小さな魚たちと同じ水槽に入れて大丈夫かなと心配になったものです。
しかし、ジンベエザメはとても大人しい性質のサメでして、エサも海中の微小なプランクトンなんですね(それであの巨体)。
飼育員のダイバーが近くを泳いでいても怖がりません。
今回はそんな人気者への賛歌的絵本「じんべえざめ」を紹介しましょう。
作・絵:新宮晋
出版社:扶桑社
発行日:1991年4月5日
作者は風や水などの自然の力で動く彫刻芸術家の新宮晋さん。
以前このブログで彼の絵本デビュー作「いちご」を取り上げました。
新宮さんの独自の絵本の作り方は「いちご」と同様で、日本語と英語の二か国語のテキストで読めます。
新宮さんならではの自然を内側から見つめるような深い眼差しと詩的な言葉。
それに武骨で迫力満点のイラストも健在です。
「光あふれる海」
「とつぜん巨大な影が」
「どーんと現れる」
「小さな耳 やさしい目」
「そして とてつもなく大きな口」
「白い気球のようなおなか」
「重い体重をささえる山脈のような背中」
ゆったりとしたテンポで読み進めていくと、雄大なじんべえざめと一緒に海を泳いでいるような気持ちに。
「水の惑星 私たちの地球」
★ ★ ★
全編通して青と黒のモノトーンですが、不思議と暗い印象は受けません。
むしろ海面からのまばゆい光を感じます。
魚とは不思議な存在です。
空気と光が無ければ生きていけない人間や動物にとって、深い海の底は死の世界です。
けれど、このじんべえざめが棲んでいる海よりももっともっと深い深海の底の底のような場所でさえ、生きている魚がいるのです。
人間は宇宙のこともまだまだわかっていませんが、実はそれ以上に地球のこともわかっていません。
悠々と泳ぐ巨大なジンベエザメを見ていると、彼らが人間よりも劣った生物であるどころか、実は神のごとき存在なのかもしれないとさえ思えることがあります。
どんなに文明が進んでも、人は自然への畏敬の感情を失くすべきではない。
新宮さんの絵本からは、そんなメッセージが感じられるのです。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
じんべえざめの頼もしさ度:☆☆☆☆☆
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