2018.11.02 Friday
子どもの自己中心性を守る【「自由な子ども」を育てるということ・3】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
息子も5歳になり、遊びに行ける範囲も広がってきましたが、電車に乗る時にはまだまだ周りに気を使ってしまいます。
大声は出すし、じっとしないし、知らない人のスマホ画面をのぞき込むし(距離感おかしい)。
家であれば何をしたって注意しなくて済むんですが(妻は結構口うるさくなってきてますが)、やっぱり他人がいる場所ではそうはいきません。
「だめ」「やめて」「言うことを聞きなさい」という言葉を使わずして、罰や褒賞で釣ることもせずに、どうやって大人しくしてもらうか、いつも頭を悩ませています。
で、結局は「まだまだ電車に乗せるには未熟なんだな」という結論になってしまいます。
私自身は電車でよその子が走り回ろうが歌おうがもたれかかってこようが一切気にしないんですが、世間はなかなかそうは思ってくれないようです。
「子どものうちからマナーをしっかりしつけないと」という考えはまだまだ力を持っていますから、仕方のないことです。
しかし、就学以前の子どもに公共精神を説いたって理解できません。
子どもは自己中心的であるからです。
そして「自己中心的であること」は守られるべき子どもの特権だと思います。
大人はダメです。
もう子ども時代は過ぎましたから。
たとえそれが満たされない思い出であったとしても、それはもう戻ってはきません。
気の毒ではあるけれど、せめて未来の子どもたちには、そういう思いをさせないようにしましょう。
でも、世の中を見ていると、大人は割と本気で子どもを相手に「自己中心的である権利」を争っています。
「子どもを大人と同列に扱う」ことは、子どもに対する敬意とは違います。
もちろん、幼児的自己中心性はいずれは克服されねばなりません(できなかった大人はたくさんいますが)。
しかし、それは「早ければ早いほどいい」というものではないと思います。
そもそも「自己中心性」は絶対悪ではありません。
すべての個人的な行為や欲求を否定すれば、この世には愛も生まれません。
強い信念や断行力、創造性や表現力も、自己中心的な力から生み出されています。
自己中心性とは言い換えれば、自分がかけがえのない「個」であるという認識です。
人間はまず自分自身を愛さなければなりません。
そしてそこから他者への愛やすべてに対する感謝心が芽生えてくるのです。
だから、せめて7歳くらいまでは、思いっきり自己中心的であっていいと思うんですよ。
これからの長い人生には、その力が必要です。
無理に抑えつけて芽を摘まないでいて欲しい。
私はずっと「自由な精神」を持った子どもを育てたいと考えています。
「自由な精神」とは何ものにも強制されない想像力と思考力のことです。
「自由な精神」はいずれ「幼児的自己中心性」を克服します。
衝動的な本能や欲望のままに行動することは自由でしょうか。
自己中心的な犯罪行為に走る人間は真の意味で自由と言えるでしょうか。
自分を本当にかけがえのない存在だと感じているなら、成長するうちに自分の中に「もう一人」いることに気づきます。
例えば、自分の友人や恋人が大切にしている物が目の前にあったとします。
自分の本能的欲望に正直になってみれば、これを盗んでしまいたい気持ちがあることに気づきます。
しかし、一方で、そんなことをして悲しむ友人や恋人の姿を想像し、そのことで心を痛める自分も確かに存在するわけです。
この「もう一人」の声を大事にすることが「自由な精神」であり、身体的・直情的な欲望に従ってしまう人は自分の中に「もう一人」いることに気づいていないのです。
なぜ気づけないかと言うと、彼らは自分自身をちゃんと見つめていないからです。
自由な想像力がないからです。
「自己中心的」な大人というのは、実のところ言葉の全き意味では「自己中心的」ではないのです。
彼らには大切にすべき「自己」への配慮が欠けているのです。
社会的なマナーやモラルを教えるには、いずれ適切な時期が来ます(来てくれないと困る)。
それが小学校時代ではないでしょうか。
何事にも旬があるように、逆にその時期を逃して、思春期に入ってしまったらそうした教育は難しいでしょう。
焦らず、機を逃さず。
これは絵本の読み聞かせをしていても思うところです。
「何度でも読む絵本」がある一方で「今しか読まない絵本」もあり、「ずっと読まない絵本」があり、「まだ読まないけど、いずれ読む絵本」があるんです。
それを見極めるためには、常に子どもを観察し、近くで触れあっていなければなりません。
子育てとは、なんと手間暇のかかることでしょうか。
だからこそ、なんですけどね。
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